当て馬ポジションに転生してしまった件について

かんな

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三章〜出会いと別れ〜

六十三話 『バイトの許可』

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ドンっ!と胸を張ってそう言った花屋のバイトの件。正直、お母様が許してくれるとは思わなかったし、私もそんなに簡単にいくわけがないと思っていたのだけれど……


「駄目に決まってるでしょ」


……案の定、即答だった。城ヶ崎家の娘がバイトなんてしたら、家の恥になるからって……!パーティのときに他の奥様方に言われてネタにされるやつだもんね……


しかし、私は諦めない!何故なら今ここには――、


「母さん、透華のバイト認めてやったら?俺からもお願いするよ」


お兄様がいるからね!お兄様は私の味方になってくれるの!!本当に素敵~~!それにお母様もお兄様には弱いし~~。お父様は私のしたいことはやらせる方針だし~~!


つまり、この勝負は勝ち確。私が勝ったようなものなのだ!!! ふふんっと鼻を鳴らしながらドヤ顔をしていると、


「バイトをそんなに甘く見ない方がいいわよ。透華に出来るの?バイトとはいえ、責任は伴うものなのよ?」


そんなもん、分かってるよ。バイトする以上、仕事に対する責任感くらいあるつもりだ。


「責任感、なんてものだけじゃ駄目よ。
失敗したら誰も庇ってもらえない。悠真を盾にして私にお願いをしている時点で駄目よ。悠真抜きで私のことを納得させなさい」

 
……これはあれだ。自分で考えろっていうことか……。確かにそれはそうだよね。バイトをするのを認めて貰うのならそれぐらいの考えはあるはずだ……と、そう言った意味も含まれているんだろうけど……!


「……確かに私はお兄様に甘えていました。それは認めます。ですが、バイトしたいと思いは本当です。社会勉強にもなりますし……」


これは全部本音である。一日体験してみて思ったけど、接客業って大変だと思う。でも、だからこそやりがいがあるとも思うし。


実際、お客さんの笑顔を見たときは嬉しかったし、バイト仲間もみんないい人だったし。


だから、ここで引き下がる訳にはいかない!それに、美穂ちゃんにも約束しているし!


「だからお願いします。お母様!」


「……塾は?バイトと両立するつもり?無理でしょう。要領のいい悠真ならともかく、あなたでは出来ないと思うわ」


……確かに私はお兄様より要領悪いかもしれない。だけど――、


「母さん!それは言い過ぎだよ!!」


「あらごめんなさい。つい本当の事を言ってしまったわ。だって事実なんだもの」


お兄様が怒ってくれる。普段なら嬉しい。だが今は違うぞ!むしろ、めちゃくちゃ惨めになるから止めてくれー!!! まあ、とりあえずお母様を言い負かさないと話は進まないだろう。


「あんたは要領が悪いの。塾とバイト、両方やるなんて絶対無理よ」


見下すようにそう言ったお母様が、原作の透華にそっくりだった。でも――


「要領が悪い?それが何ですか!その程度で諦めるような覚悟ではありません!私は絶対にどちらも成功させてみせます!」


「……」


私の勢いに押されてか黙り込むお母様とお兄様。そしてお母様は――


「………そんなに言うのならいいわ。ただし、成績が落ちたらすぐに辞めてもらうわよ」


意外とあっさり折れてくれたせいで何を言っているのか一瞬理解出来なかった。えっと……つまり……、 いやったああぁぁぁ!!!許可してくれた!!ありがとうございます!神様仏様お母様~~!これで私もバイトが出来るようになったぜ!


「良かったな。透華」


そう言ってお兄様は優しく微笑んでくれた。 



△▼△▼


「それで私バイトすることになったんです!」


「へぇー。そうなんだ。頑張ってるね~」


山田さんはフワフワとした笑みを浮かべながら私の話を聞いていた。くぅー!山田さんの笑み癒される~~!やっぱり可愛い女の子は最高だな。


「城ヶ崎さん、凄いなぁ、塾とバイトを頑張るだなんて……私はそんなに沢山のこと出来なさそう……」


はわわっとした感じで呟いた山田さんを見て、胸がキュンとなるのを感じた。やばいやばいやばすぎる……可愛すぎませんかね!?


「それに、彼氏も心配するし~~」


……この無自覚な惚気が入ってなければ完璧だったのに――!なんて私は心の中で叫んだ。
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