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三章〜出会いと別れ〜

六十話 『庶民と私達』

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季節は夏。夏休みになった。夏休みの楽しみといえば、海とか山とかいってバーベキューしたり花火をしたりすることだろうけど…… 


私はインドア派だ! 家にこもっているほうが好きだし、アウトドアなんてする気にもならない。白鷺学園はエスカレーター式だから、受験なんてする必要性もないのに勉強する意味なんてないのに今正に勉強している。


今日は美月さんとも佐川とも予定が合わなかったし、一人で家で勉強してたんだけど……そう思いながら、一つ思う。


「(……私って友達少ない……?)」


塾でよく話す子はいるけど、"友達"と呼べるほど仲の良い子はいないし、遊びに行くほどの親しい子もいないし……悲しくなってきた。


もしかしてなくとも美月さんと佐川以外と遊んだことほぼ無いんじゃないか?私。悲しくなって机の上に突っ伏す。
するとスマホから通知音が聞こえてきた。誰かと思い確認すれば――、


「美穂ちゃん!?」


驚きすぎな気がするが仕方がないと思う。だって美穂ちゃんだよ!?美穂ちゃん、今年受験生なのに――!


………いやいや、遊びの誘いとは限らない。そうだよ、きっと何か用事があるんだよ……。うん、落ち着こうか自分。深呼吸を数回繰り返してから見てみると、


『明日、暇?暇なら私の家に来ない?』


というメッセージだった。家に……?美穂ちゃんの……家にっ!?え!?嘘!行きたい!!即答で行くと答えればすぐに既読がついた。


『良かった。じゃ、10時くらいに来てね』


それだけ送られてきたけど……何か持ってきたほうがいいかしら?お菓子持っていった方がいいかな?金持ちなのは見せつけたくないけど、でもお邪魔するのに何も持って行かないっていうのは失礼よね……。
とりあえずお母様に相談しようと思って部屋を出ると、


「あら?透華、どうかしたの?そんな顔して……」


お母様が不思議そうな顔をしていて、リビングで本を読んでいたが、私が慌てた様子で出てきたことに驚いていたらしい。
事情を話すとお母様は、


「…お友達と遊ぶの。それはいいと思うけど、遊ぶ相手は選びなさいよ。庶民の子なんでしょう?」


……お母様とお父様は庶民を見下す傾向がたまにある。別に悪いとは思わないけれど、こういう考え方が原作では破滅フラグに繋がるのに。


まぁ、城ヶ崎透華も性格悪いし、血は争えないのかもなぁ……そう考えるとこんな一家にいて考えが邪悪な方に染まらなかったお兄様凄くない?普通に良い人だし。


「透華?聞いてるの?」


お母様のことは好きだけど、ちょっとうるさいところがある。前世の母親はあまり思い出せないけどあんな感じではなかったような気がするなあ……


「透華と母さん?どうしたの?」


そんなことを思っていると、お兄様がリビングに入ってきた。そして私たちを見て首を傾げている。


「悠真。裕翔くんと一緒じゃなかったの?珍しいわね」


「ああ。二人で野球の練習したんだよ。それで汗かいたから風呂入ってた」


相変わらず、あの二人は仲がいいなーと思っていると、


「裕翔くんの家は金持ちだし、仲を進展させたのもいい事ね。透華も美月ちゃんと遊びなさいよ」


なんて言われてしまった。美月さんは確かに可愛いし好きだけど。美月さんは本当に天使だと思う。


美月さんの笑顔を見ると癒されるし、美月さんと一緒にいるだけで楽しいし、一緒にいるだけで幸せになれるし。でも、それは――


「母さん……俺裕翔とは気が合うから一緒に居るだけだし、透華もそうだろ?」


ため息を吐きながら、お兄様はそう言った。確かにそう。私は計算なんてしてないし出来ない。だから私は家のことなんて一ミリも考えてないし。


「お母様!私も!美月さんとは気が合うから一緒にいるだけです!だから美穂ちゃんのところに行きます!行ってもいいですよね!?」


私は必死にアピールをした。するとお母様は少し考えた後――、


「………勝手にしなさい」


ため息をつきながらも許可してくれた。やった!これで美穂ちゃんと遊べる!私はそう思いながら心の中でガッツポーズをした。
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