当て馬ポジションに転生してしまった件について

かんな

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三章〜出会いと別れ〜

五十八話 『マウントの取り合い』

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地獄の期末テストが終わった。テストの結果は今回は私が勝った。私は十位、緑川は二十位だ。
緑川には負けたくない。それは私にとって大切なことだったのだけど――。


「あーら。負けてしまったわ!やはり独り身の女と彼氏のいる女では違うのかしらね。やはり、独り身はいいですわねぇ。勉強に集中出来て」


そう言って緑川が笑った。な、何で負けた癖にそんなこと言えるんだよ!?やっぱり男なのか!?男が出来ると人間、余裕が出来るもんなんだろうか!?


でも――!


「あら?お言葉ですが……お兄様は香織様という彼女がいらしゃいますが、成績は学年五位をキープしてますよ?」


負けたくない!勝負は勝ったけど、何か悔しい!だって勝ったのに男マウント取られたんだぞ?これこそ正に『試合に勝って勝負に負ける』ってやつじゃないか!!


冗談じゃない!絶対負けてたまるか!何で、勝ったのにマウントを取られて、更に敗北感まで味あわないといけないんだ!? 


「あら?そうなんですの?」


わざとらしく、驚いているリアクションをする緑川にめっちゃくちゃイラつくわー!ムカついたから、思いっきり嫌みを言うことにした。


「ええ。そうですわ。誰かさんと違って色ボケもせず、勉強に打ち込んでましたもの」


これは本当だし、嘘ではない。お兄様はこいつとは違って色ボケなんてしてないし。ちゃんと学年上位をキープしているし。


「…私が色ボケしてる……ですって?」


煽ったら、緑川の表情が変わった。あれれーー?可笑しいぞー?だって――。


「あらぁ?私、緑川さんが色ボケなんて一言も言ってませんけれどぉ?」


目には目を。歯には歯を。煽り返しである。
さっきまでの勝ち誇ったような笑顔は何処へ行ったんでしょうかねぇ?


「私のことを馬鹿にしてるの?いい度胸じゃありませんか……」


「馬鹿にだなんてとんでもない!ただ事実を申し上げただけですわ!お兄様は一途な上に完璧超人……だとお伝えしたかっただけですわー!」


お兄様が完璧超人なのは間違いないし。弱点なんて香織様以外にはない筈だし。


「ぐ……っ!」


あれれーー?何も言い返せなくなってないですかー?図星だったりしますぅー? あんなに煽って来たんだからお前も煽り返してこいよー!


「おい」


不意に後ろから声をかけられた。振り向いた先に居たのは――。


「い、伊集院様!?」


王子でした。…考えてみればここってテストの順位発表の場所だから会ってもおかしくないけど……!


「邪魔だ。こいつらがテストの順位表を見えねーだろ」


そう言われて気付いた。私たちの周りに人がいたことに。そりゃそうだよね……こんなところで喧嘩する人がいたら迷惑極まりないものね……


「た、大変、申し訳ございません。伊集院様」


「俺は困ってなどいない。俺より後ろに居る奴らのことを考えたらどうなんだ」


そう言って王子は去っていく。かーっ!今回に関しては私が悪いから反論できないし、反論しようにも王子の方が正しいし。


「はぁ、伊集院様素敵……。あのクールさが堪らないわ……」


そんな女子の声が各所から聞こえて、私達は気まずい空気になって来たので即座にその場を立ち去った。
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