当て馬ポジションに転生してしまった件について

かんな

文字の大きさ
上 下
56 / 95
三章〜出会いと別れ〜

五十六話 『勉強』

しおりを挟む
期末テストがやってきた。ふふっ……!中間テストのときと違って期末テストは対策バッチリだ。


まず、お兄様に勉強を教えてもらった。中間テストのときはお兄様もテスト勉強してたし、教えてもらうことは少ししかできなかったけど、今回は違う。


期末テストのテスト勉強期間前にお兄様に勉強を教えてもらった。お兄様の迷惑をかけたくないしね。これも全て緑川にマウントを取る為――という訳じゃなく、ただ単に成績を上げたかったからだ。
 

そしてついでに緑川に負けない為に勉強した。今まで真剣にやったことはなかったから、今回こそは本気で頑張るぞ!! 私は意気込んで勉強をした。


夜中に起きてまで勉強をしていたし、眠気を抑えるためにほうじ茶やコーヒーを飲んでいたけど……それでも眠気は我慢することはできなかった。
そのせいで寝落ちしてしまったり、朝起きると頭が痛くて体が怠い日もあったりした。


でも、負けたくない一心で頑張っていた。美月さんや華鈴様や佐川に心配されたこともあったなぁ……緑川にはめっちゃくちゃ嫌味を言われたけど。


あれは正直腹が立ったが、今はそんなことはどうだっていい。私は今必死に勉強をしている。だから――、


「透華ーー。あーそーぼ」


……年下の相手なんてしている暇なんて一秒もないのだ。私は声の主の方を振り向かずに無視していると――。


「透華ー、あそぼうよぉ~」


しつこく私の名前を呼んでくる。しかも私の背中に乗っているのか重い……。仕方がない、少しだけ相手をするか。
そう思って振り返るとそこには予想通りの人物がいた。


「何?私はこの通り忙しいんですけど?」


矢沢智樹。従姉弟である。彼はいつも私に絡んでくる。幼稚園の頃はめっちゃくちゃ可愛げがあったのになぁ……小学生になってから可愛さのかけらもなくなってしまったんだよねぇ。


「えーー?透華が勉強~?悠真兄ちゃんなら分かるけど透華が勉強とかありえないんだけど!」


おいこいつ喧嘩売っているのか!?私が勉強したらおかしいっていうのか!?いや、確かに今まで真面目に勉強したことなかったけど……でも、それはこれから本気を出すだけだし! それにしてもこいつは本当に失礼すぎるだろ!


「ちょっと!智樹!透華に迷惑でしょ?」


するとそこに現れたのは、七海だった。今は二人の両親が旅行に行ってるんだよねぇ……二人も連れて行けばいいのにって思ったけど、まぁ、大人の事情があるんだろう。


「えー、でも、透華が真面目に勉強とかありねーだろ」


「いや、まぁ……」


え……?嘘でしょ?七海……そこは否定してくれないわけ……?というか、なんでそこで言葉詰まるのよ!!悲しくなってきたわ!!


そんなことを思っていると、


「智樹、七海ちゃん、紅茶入ったけど
飲むかい?」


そう言って入ってきたのは、お兄様だった。お兄様が入ってきた途端二人の見る目が変わったような気がした。


「悠真兄ちゃん、遊んでくれるの!?」


「遊んでやるから透華の勉強の邪魔をするんじゃないぞ?」


お、お兄様~~!やっぱり、私の味方はお兄様以外いないよね!


「え……でも、悠真お兄様も勉強中じゃ……」


七海が心配そうな顔をしていた。私の時はそんなこと言ってなかったのに!?これが……日頃の行いの差なの……?


「大丈夫だよ、もう終わったところだから」


あ、あの量を終わらせたの?高等部は中等部とは違い、大量の課題が出るのだ。それを全部終わらせるとは流石だし、しかも智樹と遊ぶ余裕もあるとか流石お兄様だ、と言わざるおえない。


「七海ちゃんもテスト勉強あるんでしょ?透華と一緒にやったら?僕は智樹とゲームしてくるから」 


「そ、そうですね……!」


そう言って七海は出て行った。智樹もお兄様が遊んでくれるということで嬉しかったらしく部屋から出ていった。
私一人になった瞬間、私はため息をつきながら机に向かって勉強を始めた。



△▼△▼


あの後、七海と勉強をしながらわからなかったところを教え合い、テスト対策をしていた。初めはお互いのわからないところを教え合い、その後自分の苦手なところを重点的に教え合っていた。


効率の良い勉強をした結果なのか、いつもより早く終わり、その後は息抜き――という形で智樹とも遊んだのだけど――


「透華……弱くね?」


智樹にボコられた。いや……だって、智樹強すぎなんだもん!!私はゲームとか普段あまりしないタイプだから、弱いに決まってるじゃん!憐れみの目で見てくるのはやめてくれませんかね……


「まぁまぁ。透華はゲームとかあまりしない子だから仕方がないさ」


お兄様――!なんて優しいんでしょうか! 私は思わず感動して涙が出そうになったし、七海はそんなお兄様を見て惚れ惚れした表情をしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...