54 / 94
三章〜出会いと別れ〜
五十四話 『中間テスト』
しおりを挟む
中間テストまであと一週間となった。今まで真面目にやって来なかったテスト勉強だが、今回ばかりは頑張ろうと思う。今まで赤点は取らない程度には取ってたんだけどね。今回は本気で行こうと思っている。
理由は――、
「透華!何があっても緑川さんの娘に負けるんじゃないわよ!」
親同士のいざこざに巻き込まれたからだ。最初は嫌だったし、面倒くさいと思っていた。だけど、
「城ヶ崎さん……親同士のいざこざに巻き込んでごめんなさい。そんなの関係なく、気軽にやりましょう……?」
娘である緑川すみれにはめっちゃくちゃ申し訳なさそうに言われた。緑川すみれ。緑川家の令嬢であり、城ヶ崎家とは常に争っている所だ。
と、言っても、別に仲が悪いわけじゃない――とゆうか、あんまり話したことないし、顔を合わせたら挨拶するぐらいの間柄でしかないのだが。
でも、この前偶然聞いてしまったのだ。その時はトイレで用を足していたとき――。
「城ヶ崎さんのお兄様は素敵なお方ですけど、九条様とお付き合いしたときから腑抜けたってお母様も言ってたし、城ヶ崎透華は腑抜けだし、この勝負は結果を見なくても分かるわ。私の圧勝よ!」
「確かにそうですわね!すみれ様なら城ヶ崎透華なんて敵なしですわ!」
おっほほほほほほっ!という漫画しか聞こえてないような笑い声が聞こえる中、私は静かにブチ切れていた。私の悪口はまだいい。私だって自分がダメ人間なのは自覚している。それは事実だから何も言い返せない。
しかし、お兄様と香織様の悪口だけは許さないぞ……!――相手は到底敵わない。緑川は学年トップ10に入るくらい頭のいい奴だしなぁ……対して私は50以内を行ったり来たりするようなレベルだ。正直無理ゲーすぎるし、舐めた口を聞くのも仕方がないかもしれない。
親同士のいざこざに巻き込まれ、面倒くさいことになったなとは思っていたものの、あんなに喧嘩を売られ、あまつさえ侮辱されたら黙ってはいられない。
そんなこんなで――、
「透華?もう寝た方が……」
夜中まで勉強をしていると心配したのかお兄様が部屋に入って来た。そして机の上に広げられている教科書を見てギョッとした表情を浮かべる。
「透華……中間テストの勉強?」
「はい……テストに備えて復習をしておりましたの」
単語をめっちゃくちゃ暗記して、対策テストも何十回もやって完璧にした。でも!それでも不安なのでこうして徹夜で頑張ってるのだ!!
あの憎き女――緑川すみれを叩き潰すために!
「透華……倒れないでよ?親同士の
揉め事なんだから俺達が気にすることはないんだからね?」
そう言ってお兄様は頭を撫でてくれた。ふへぇ~、優しい……こんな優しいお兄様が腑抜けてるわけねーだろ!
「ええ。それについては私もどうでもいいことです。親同士のいざこざについては。なので、これは私自身のプライド。絶対に負けたくないのですわ!」
私がキッパリと言い放つとお兄様は目をパチクリさせた後に微笑んでくれた。
「そっか……。じゃあ俺は応援することしかできないけど頑張れ」
そう言って頭を撫でてくれる。中学生で子供扱いされるのは嫌だったけれど、今は心地が良い。私は嬉しくて頬を緩ませながら返事をした。
△▼△▼
長く、苦しい戦いだった。お兄様にも勉強を教えてもらったし、いつもよりは手応えはあったし?
多分大丈夫だと思うんだけど……やっぱり気になるものは気になってしまうもので、睡眠時間を削ってまで試験に臨んだのだが……結果は惨敗であった。
緑川は七位で私は十八位。五十位をウロチョロしていた頃よりは全然いい結果なものの、やはり悔しさが残る結果となった。それに――、
「あら。城ヶ崎さん、いつもより順位が上じゃないですか」
この女に負けたという現実が余計に腹立たしい。しかも、すげぇ余裕綽々!ムカつくぅ!!順位がいつもより上って言っても負けてるんだよぉ!!
そんなことを思っていると、
「伊集院様と西園寺様ですわ!!」
女子生徒の声が聞こえてきた。その声を聞いてみると、廊下の向こう側から二人の男子生徒が歩いてくる姿が見えた。
……相変わらず、あの二人の人気は凄まじいなぁ……テストの順位も相変わらず一位と二位だったみたいだし……。
二人とも頭が良くて顔も良いとか神はあの二人に色々与えすぎやろ。
「いつも通りだな」
「……いつも通りだねー」
うわーーー!王子と西園寺の余裕な発言が腹立ちますねぇ!?こちとら必死に勉強して十八位がやっとですよーーー!クソがーーー!心の中で悪態をつくも、口に出す勇気はない。
でも、
「伊集院様と西園寺様……素敵ですわ……」
緑川がそう言ってトキメキの眼差しを向けているのを見ると、何だかイラッとしてしまう。……ま、緑川と王子や西園寺様と付き合う未来なんてないと思うけどね!
ふふ……!美穂ちゃんが来てから絶望すればいいんやで~~!と思いながらも心の中で私は微笑むのだった。
理由は――、
「透華!何があっても緑川さんの娘に負けるんじゃないわよ!」
親同士のいざこざに巻き込まれたからだ。最初は嫌だったし、面倒くさいと思っていた。だけど、
「城ヶ崎さん……親同士のいざこざに巻き込んでごめんなさい。そんなの関係なく、気軽にやりましょう……?」
娘である緑川すみれにはめっちゃくちゃ申し訳なさそうに言われた。緑川すみれ。緑川家の令嬢であり、城ヶ崎家とは常に争っている所だ。
と、言っても、別に仲が悪いわけじゃない――とゆうか、あんまり話したことないし、顔を合わせたら挨拶するぐらいの間柄でしかないのだが。
でも、この前偶然聞いてしまったのだ。その時はトイレで用を足していたとき――。
「城ヶ崎さんのお兄様は素敵なお方ですけど、九条様とお付き合いしたときから腑抜けたってお母様も言ってたし、城ヶ崎透華は腑抜けだし、この勝負は結果を見なくても分かるわ。私の圧勝よ!」
「確かにそうですわね!すみれ様なら城ヶ崎透華なんて敵なしですわ!」
おっほほほほほほっ!という漫画しか聞こえてないような笑い声が聞こえる中、私は静かにブチ切れていた。私の悪口はまだいい。私だって自分がダメ人間なのは自覚している。それは事実だから何も言い返せない。
しかし、お兄様と香織様の悪口だけは許さないぞ……!――相手は到底敵わない。緑川は学年トップ10に入るくらい頭のいい奴だしなぁ……対して私は50以内を行ったり来たりするようなレベルだ。正直無理ゲーすぎるし、舐めた口を聞くのも仕方がないかもしれない。
親同士のいざこざに巻き込まれ、面倒くさいことになったなとは思っていたものの、あんなに喧嘩を売られ、あまつさえ侮辱されたら黙ってはいられない。
そんなこんなで――、
「透華?もう寝た方が……」
夜中まで勉強をしていると心配したのかお兄様が部屋に入って来た。そして机の上に広げられている教科書を見てギョッとした表情を浮かべる。
「透華……中間テストの勉強?」
「はい……テストに備えて復習をしておりましたの」
単語をめっちゃくちゃ暗記して、対策テストも何十回もやって完璧にした。でも!それでも不安なのでこうして徹夜で頑張ってるのだ!!
あの憎き女――緑川すみれを叩き潰すために!
「透華……倒れないでよ?親同士の
揉め事なんだから俺達が気にすることはないんだからね?」
そう言ってお兄様は頭を撫でてくれた。ふへぇ~、優しい……こんな優しいお兄様が腑抜けてるわけねーだろ!
「ええ。それについては私もどうでもいいことです。親同士のいざこざについては。なので、これは私自身のプライド。絶対に負けたくないのですわ!」
私がキッパリと言い放つとお兄様は目をパチクリさせた後に微笑んでくれた。
「そっか……。じゃあ俺は応援することしかできないけど頑張れ」
そう言って頭を撫でてくれる。中学生で子供扱いされるのは嫌だったけれど、今は心地が良い。私は嬉しくて頬を緩ませながら返事をした。
△▼△▼
長く、苦しい戦いだった。お兄様にも勉強を教えてもらったし、いつもよりは手応えはあったし?
多分大丈夫だと思うんだけど……やっぱり気になるものは気になってしまうもので、睡眠時間を削ってまで試験に臨んだのだが……結果は惨敗であった。
緑川は七位で私は十八位。五十位をウロチョロしていた頃よりは全然いい結果なものの、やはり悔しさが残る結果となった。それに――、
「あら。城ヶ崎さん、いつもより順位が上じゃないですか」
この女に負けたという現実が余計に腹立たしい。しかも、すげぇ余裕綽々!ムカつくぅ!!順位がいつもより上って言っても負けてるんだよぉ!!
そんなことを思っていると、
「伊集院様と西園寺様ですわ!!」
女子生徒の声が聞こえてきた。その声を聞いてみると、廊下の向こう側から二人の男子生徒が歩いてくる姿が見えた。
……相変わらず、あの二人の人気は凄まじいなぁ……テストの順位も相変わらず一位と二位だったみたいだし……。
二人とも頭が良くて顔も良いとか神はあの二人に色々与えすぎやろ。
「いつも通りだな」
「……いつも通りだねー」
うわーーー!王子と西園寺の余裕な発言が腹立ちますねぇ!?こちとら必死に勉強して十八位がやっとですよーーー!クソがーーー!心の中で悪態をつくも、口に出す勇気はない。
でも、
「伊集院様と西園寺様……素敵ですわ……」
緑川がそう言ってトキメキの眼差しを向けているのを見ると、何だかイラッとしてしまう。……ま、緑川と王子や西園寺様と付き合う未来なんてないと思うけどね!
ふふ……!美穂ちゃんが来てから絶望すればいいんやで~~!と思いながらも心の中で私は微笑むのだった。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説



【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
モブに転生したはずですが?
佐倉穂波
恋愛
乙女ゲームっぽい世界のモブに転生したラズベルトは、悪役令嬢レティシアの断罪イベントを「可哀想だけど、自分には関係がないこと」と傍観していた。
しかし、断罪イベントから数日後、ラズベルトがレティシアの婚約者になることが決まり──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる