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三章〜出会いと別れ〜
五十一話 『親戚の集まり』
しおりを挟むあれから数日が経ち、入学式も終わり、クラス替えもなく新鮮な気持ちなど全くないまま学校生活が始まった。
破滅フラグは折れていると思うんだよねえ。花音さんをどうしよう……と思ってたけど、何か諦めてたし……と言うより、何か花音さん、香織様にビビってたような……?
香織様と花音さんの間に何かあったのは明白だけど……何かあったわけじゃないしなー…それに、王子も何かがあって香織様のこと諦めたみたいだし。
事態がいい方向に向かっているというはまさにこのことだと思う。破滅フラグも折ったことだし。でも……
「………夢を見ないなぁ」
『貴方に花束を』を見る夢を見ない。見たいわけではないんだけど、見ないと何だか変な感じになる。だって原作を確認できないんだもん。
それに――。
「あの女の子達は………」
夢の中に出てくる女の子は誰なんだろうか。夢で見た顔がはっきりと思い出せない。あの2人の女の子も。何故か名前を聞かなかったあの女の子も分からない。
あの名前を聞けない女の子の正体は誰なんだろう。いや、あの2人の女の子の名前も知らないけど……あの2人の女の子とあの女の子じゃ何かが違う。そんな気がするのだ。
「………透華…?」
そんなことを思っていると、声が聞こえて来た。その声の主は矢澤七海。同い年の従姉妹だ。サバサバしてる性格で、私とは正反対のタイプだ。
「七海、どうしたの?」
「どうしたのはこっちの台詞よ?ボーッとしてさ……」
今は親戚の集まりだ。親戚の集まりは大人の酒やら料理やらがテーブルの上に並んでいて、おつまみを食べながらみんなワイワイ騒いでいる。
大人達が楽しげに酒を飲んでいる中、私たちはジュースを飲みつつ話をしている最中だった。
「……いえ、ちょっと考え事をしていましたわ。失礼いたしました」
「そう?なら良いけど……」
「そ、そんなことより……お兄様は何処にいますの!?」
私は話題を変えるように言う。すると華はチラリと私を見て言った。
「悠馬お兄様はあそこよ。ほら」
指差された方を見るとそこには大人と仲良さげにしているお兄様がいた。お兄様……酒に飲んでいる大人達に囲まれてる……。大丈夫かな……?
「悠馬お兄様に彼女出来たんだよね?あれ最初聞いた時ショック受けたわ~」
七海はそう言ってため息を吐く。まぁ、七海はお兄様に憧れを抱いているからね~。それにお兄様は憧れそのものだし?妹としては鼻が高いわけですよ!……血は繋がってないけど。
「もっと反発の声が大きくなりそうだったのに相手が九条家のお嬢様じゃん?だからみんな何も言わなかったんだよねぇ」
まぁ、そりゃそうだよね。誰がどう見たって美男美女カップルなんだもん。絵になるって感じだし、ここで文句なんて言ったらそいつが批判されるだけだ。
「本当に悠真お兄様は初恋キラーですわね。一体何人惚れさせれば気が済むんですかしら?」
……まぁ、初恋キラーなのは何も間違っていないんだけどね。だってお兄様は昔からモテてたし。今だってモテてる。今も昔も変わらずモテているし。その癖女性トラブルがあった……なんて話も聞かないし。
「本当、分けてほしいわよねぇ。悠馬お兄様のスペック」
七海の言葉に私は苦笑いするしかなかった。
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