50 / 94
三章〜出会いと別れ〜
五十話 『恋心?』
しおりを挟むあれから――三ヶ月の月日が経ち、卒業式の日になった。といっても私は卒業しないけど。卒業するのはお兄様だ。
お兄様は沢山の人たちに囲まれている。当たり前だけどね。だってお兄様はイケメンだし、スポーツ万能で勉強もできるし、性格もいいんだもん。
それに唯一の欠点であった私とも血が繋がってないということが分かったし、もはやお兄様は完璧な存在になってしまった。
だって何処にも欠点がないですもの。欠点がないのって人間味がなくて嫌なんだけど、お兄様の場合はそれがいいというか…
「……お兄様も高等部かぁ」
高等部。私としては運命である時だ。だって『あなたに花束を』の原作が始まる……すなわち、ヒロインである月坂美穂ちゃんが入学してくるのだ。
この世界ではノビノビ……とは無理かなぁ。私――城ヶ崎透華は虐めないけど、美穂ちゃんを気に食わない人達が確実にいるし……原作の世界だと私がボスだけどここの世界では別の人がボスになると思うし。
まぁ……この世界線も王子が美穂ちゃんを救うでしょ。だって王子と美穂ちゃんって運命のカップルな訳だし。
「透華様ー!」
そんなことを思っていると、美月さんの声が聞こえてくる。声の方向を見るとそこには笑顔の美月さんがいた。
「あ、あの!今日卒業式が終わったら一緒に遊びに行きませんか?」
顔が赤い……やべーな、これ。これは勘違いとかじゃない。これもう私のこと好きじゃん。いや、私も美月さんのこと好きよ?好きだけど……何か私の"好き"と美月さんの"好き"は違う――と思う。
私は美月さんのこと"友情"として好きだけど、彼女は多分……"恋愛"として好きだよね。うん……これが勘違いだったら恥ずかしくて死ぬけど……勘違いじゃないよね……?
でも、ごめん……美月さん。私ノンケだから貴女の気持ちに応えることは出来ないわ……!一時的に、女の子でもええか……って思った時期はあったけど!今は違うし……
「あ、あの……透華様……?用事、ありましたか?もしそうなら……」
不安そうに美月さんの瞳が揺れる。ああ……もうこんな顔させたくないのに!
「大丈夫ですよ。行きましょう」
私が微笑むと安心したように顔を輝かせる美月さん。可愛いなぁ……こんな可愛い子私なんかを好きにならなくてもいいのに。
「やった!」
小さくガッツポーズをする美月さんを見て思わず笑ってしまう。可愛すぎるぞこいつぅ~!
「私、透華様と行きたいところ沢山あるんですよ!どこから回ります?」
そう言って美月さんは私の腕に抱きつく。ちょ、何だこの柔らかい感触は!!マシュマロみたいに柔らかくてすべすべしてる……うへぇ……これじゃまるで変態じゃないか!
「透華様?どうしました?」
不思議そうな目で見つめてくる美月さん。駄目だ!ここはクールに決めないと!
「いえ、何でもないです。まず何処に行きましょうか?」
そんなことを言いながら私は笑みを浮かべた。
△▼△▼
そのあとはいろんなことがあった。西園寺と華鈴様が二人で歩いているところを目撃したり、王子が男友達と一緒に歩いているところを見たりした。
正直、王子に男友達が西園寺以外にいるというのが一番驚いた。いや、だって王子って金持ち――伊集院家の御曹司だし。
基本いいやつだけど、香織様……とゆうか惚れた女のことになると豹変するんだよねぇ……だから男友達がいるっていうのは意外だった。
まあ、それは王子が香織様を諦めたから……というのが大きいのかも。あれ以来王子は少しだけ近寄りやすくなったしね。
まぁ、その後は美月さんとカフェでいろんなことを話して過ごしたんだけど……平和な展開だった。私のこともしかして恋愛的な意味で好きじゃないのでは?というぐらいには。
私の勘違いだったのか……?いや、勘違いなら私が恥ずかしいやつ……と言われて、それでお終いだ。
「うん……そう、よね?」
私はそう独り言を呟き、私は自分の家へと帰った。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R18】寝取られ願望がある旦那様のご要望で、年下の美しい国王陛下に抱かれることになった夜。
yori
恋愛
「お願いだよ、ミア。私のために、他の男に抱かれてきておくれ」
侯爵夫人であるミア・ウィルソンが、旦那様にお願いされて、年下の美しい国王陛下と閨を過ごすことに。
そうしたら、国王陛下に指示されて、色んな事に目覚めてしまうそんなお話。
※完結済み作品「転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件」の数年後、ルーク王国が舞台。ですが、登場人物とか出てこないので、読まなくても全然大丈夫です。
※終始えっちしています。何でも許せる方のみ読んでください……!
転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした
黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん!
しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。
ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない!
清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!!
*R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる