当て馬ポジションに転生してしまった件について

かんな

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三章〜出会いと別れ〜

五十話 『恋心?』

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あれから――三ヶ月の月日が経ち、卒業式の日になった。といっても私は卒業しないけど。卒業するのはお兄様だ。


お兄様は沢山の人たちに囲まれている。当たり前だけどね。だってお兄様はイケメンだし、スポーツ万能で勉強もできるし、性格もいいんだもん。


それに唯一の欠点であった私とも血が繋がってないということが分かったし、もはやお兄様は完璧な存在になってしまった。


だって何処にも欠点がないですもの。欠点がないのって人間味がなくて嫌なんだけど、お兄様の場合はそれがいいというか…


「……お兄様も高等部かぁ」


高等部。私としては運命である時だ。だって『あなたに花束を』の原作が始まる……すなわち、ヒロインである月坂美穂ちゃんが入学してくるのだ。


この世界ではノビノビ……とは無理かなぁ。私――城ヶ崎透華は虐めないけど、美穂ちゃんを気に食わない人達が確実にいるし……原作の世界だと私がボスだけどここの世界では別の人がボスになると思うし。


まぁ……この世界線も王子が美穂ちゃんを救うでしょ。だって王子と美穂ちゃんって運命のカップルな訳だし。


「透華様ー!」


そんなことを思っていると、美月さんの声が聞こえてくる。声の方向を見るとそこには笑顔の美月さんがいた。


「あ、あの!今日卒業式が終わったら一緒に遊びに行きませんか?」


顔が赤い……やべーな、これ。これは勘違いとかじゃない。これもう私のこと好きじゃん。いや、私も美月さんのこと好きよ?好きだけど……何か私の"好き"と美月さんの"好き"は違う――と思う。



私は美月さんのこと"友情"として好きだけど、彼女は多分……"恋愛"として好きだよね。うん……これが勘違いだったら恥ずかしくて死ぬけど……勘違いじゃないよね……?


でも、ごめん……美月さん。私ノンケだから貴女の気持ちに応えることは出来ないわ……!一時的に、女の子でもええか……って思った時期はあったけど!今は違うし……


「あ、あの……透華様……?用事、ありましたか?もしそうなら……」


不安そうに美月さんの瞳が揺れる。ああ……もうこんな顔させたくないのに!


「大丈夫ですよ。行きましょう」


私が微笑むと安心したように顔を輝かせる美月さん。可愛いなぁ……こんな可愛い子私なんかを好きにならなくてもいいのに。


「やった!」


小さくガッツポーズをする美月さんを見て思わず笑ってしまう。可愛すぎるぞこいつぅ~!


「私、透華様と行きたいところ沢山あるんですよ!どこから回ります?」


そう言って美月さんは私の腕に抱きつく。ちょ、何だこの柔らかい感触は!!マシュマロみたいに柔らかくてすべすべしてる……うへぇ……これじゃまるで変態じゃないか!


「透華様?どうしました?」


不思議そうな目で見つめてくる美月さん。駄目だ!ここはクールに決めないと!


「いえ、何でもないです。まず何処に行きましょうか?」


そんなことを言いながら私は笑みを浮かべた。



△▼△▼


そのあとはいろんなことがあった。西園寺と華鈴様が二人で歩いているところを目撃したり、王子が男友達と一緒に歩いているところを見たりした。


正直、王子に男友達が西園寺以外にいるというのが一番驚いた。いや、だって王子って金持ち――伊集院家の御曹司だし。


基本いいやつだけど、香織様……とゆうか惚れた女のことになると豹変するんだよねぇ……だから男友達がいるっていうのは意外だった。


まあ、それは王子が香織様を諦めたから……というのが大きいのかも。あれ以来王子は少しだけ近寄りやすくなったしね。


まぁ、その後は美月さんとカフェでいろんなことを話して過ごしたんだけど……平和な展開だった。私のこともしかして恋愛的な意味で好きじゃないのでは?というぐらいには。


私の勘違いだったのか……?いや、勘違いなら私が恥ずかしいやつ……と言われて、それでお終いだ。


「うん……そう、よね?」


私はそう独り言を呟き、私は自分の家へと帰った。
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