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三章〜出会いと別れ〜

四十八話 『白咲花音の話』

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あれから三週間が経った。あれ以来特に事件もなく平和だった。


ただ、それは――


「……ね?透華ちゃん?話聞いてる?」
 

………花音さんが隣にいるせいで何も頭に入ってこなかった。


ちなみにここは私の部屋である。私の部屋にズカズカと入って来て我が物顔で寛いでいるのだ。いやマジで勘弁して欲しいんだけど……!


てゆうか、本当に突然入って来たから頭真っ白になったから話なんて聞いてないよ……!


私はそう思いながら花音さんを見る。……白咲花音という人は私の血のつながった姉……らしい。


お兄様とは血の繋がりはないが、この人は血が繋がっているらしい。そして花音さんの行動次第で城ヶ崎家が破滅するかもしれない。


だって香織様を殺すということは間違いなく、王子と対立するし、そうなったら王子に絶対に負ける。城ヶ崎家なんて伊集院家に比べたら無力だし。


「ごめんなさい…!聞いてませんでした!」


「素直ねぇ。素直な子は嫌いじゃないわ。じゃ、もう一度言うけど……私はもう九条香織を殺す気は無くなったのよ」


え!?諦めたの!?でも花音さんの表情からは諦めたように見えないし……!一体どういうことなんだろう……?罠だったりする……?


「罠だったりする……?って顔してるわよー。透華ちゃんって分かりやすいわよね。まぁそういうところも可愛いんだけど」


「はぁ……」


……まさか、用件これだけ?それだけの為にわざわざ呼び出したの?いや、それならそれでいいけど……安心したし……


「だからさ、私、悠真のこと寝取ろうかと思って……」


……ん?何か話変わった気がする……ん?あれ?殺さない……だよね?あれれ?


「ちょっ……!ちょっと待ってください!今花音さんは……殺さないって」


「略奪は殺してないでしょ?それに、あの子が泣いても慰めてくれる子は沢山いるわ。それにあの子……伊集院くんもそっちの方が都合が良いと思うし、反対はしないと思うのよ」


確かに……そうだけど……!王子は反対しないと思うし、寧ろ賛成するし、でも……それは香織様が泣くのでは?あぁどうしよう……


「花音さん、本当にやるんですか……?」


「勿論よ!私を誰だと思っているのかしら?私はいろんな男や女を葬って来た女よ?そんな私が簡単に諦めると思わない事ね」


悪役みたいなセリフ言ってる……流石透華の姉だ。破滅する予感がプンプンする……!城ヶ崎家破滅するじゃん!


「り、略奪なんて辞めましょうよ……!そんなの誰も幸せにならないですし……」


「幸せにならない?当然じゃない。あの女を地獄に落とすんだから。あの女の苦しむ姿を想像するとゾクゾクしてくるわ……ふふっ」


怖いよぉ~!!悪魔だよこの人!流石城ヶ崎透華の姉!やることが悪魔だ!


「まぁ、これが嫌ならもう一つあるわね……華鈴ちゃんだっけ?その子を利用すればあいつらいい感じに別れると思うのよねぇ」


え!?何その恐ろしい作戦!どっちに転んでもダメなやつじゃん!しかも華鈴様を利用するとか絶対良くない事になる!西園寺様が敵になる!
これはマズイ!何とかしないと……!


「と、とりあえず落ち着いてください!花音さんは冷静になってください!」


「あら、私いつも通りよ?いつも通りじゃないのは透華ちゃんの方でしょう?何をそんなに怯えているの?簡単な話じゃない。それとも、透華ちゃんは怖いの?破滅するのが」


そりゃあそうだ。私はただの高校生なのだ。そんなことをしたら大変なことになる。だって破滅なんかしたら生きていけないし社会からも抹殺されるようなものだし


「…破滅するのは怖いです……」


「ふーん。そう。破滅するのが怖い……ね」


そう言うと花音さんは私の顎を掴みながらこう言った。


「破滅するのが怖いなんて甘ったれた妹……」


呆れたように呟く花音さんの目は冷たく光っていた。まるで蛇のように絡みつくような視線だったが、


「……あんな女の味方をするならもういいわ」



興味を失ったかのように手を離すと、金を机に置いて部屋から出て行った。そして私はと言うと……


「………これは回避、した、のか……?」


そんな不安を抱きつつ、私は一人頭を抱えた。
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