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三章〜出会いと別れ〜

四十七話 『協力要請』

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連れていかれた先は空き教室だった。何これ……?え?夢ですよね?こんな展開あるわけがない。
そんな現実逃避をしていると、


「なぁ、城ヶ崎透華」


「は、はいぃっ!」


いきなりフルネームで呼ばれるもんなんだからびっくりするよね。思わず背筋を伸ばしてしまったよ。


「お前の兄は城ヶ崎悠真だな?」


「そ、そうですけど……」


なぜ今その話を……?え?ま、まさかねー。うん、きっとそうだよね。そんなはずないじゃん。


「俺とお前で協力しないか?」


「……はい?何をですか……?」


……嫌な予感しかしない。だってこの人めっちゃ笑顔だから。


「お前の兄貴と香織を別れさせるんだよ!!」


……やっぱり。まぁ、分かるよ?王子の気持ち。でもさ……それに協力するとか絶対無理だよ!!


「……お前は香織と城ヶ崎悠真のことどう思ってる?正直に答えてくれないか?」


真剣な顔して言われても困る……!てゆうか、私別に香織様とお兄様を別れさせたくないんだけど。香織様がお兄様に相応しくない女だったら協力しますよ。でも、香織様は素敵な女性だと思うし。


美男美女カップルだし、お互い信頼しているし……そんな2人の仲を引き裂くなんて私にはできない。
それにお兄様には幸せになって欲しいし、そんな申し出を受け入れることが出来ない……と思っていると、


「あれ?伊集院くんに透華さん……?珍しい組み合わせね?」


「か、華鈴様……!?」


ここに華鈴様が来るのは色々まずいのでは!?だって華鈴様、お兄様のこと好きだもん!お兄様と香織様のこと祝福はしてたけども……本音は違うと思うし……


「白鷺華鈴……白鷺と協力するのもありだが……それだと潤が……」


ボソッと呟いた王子の言葉に、私はああ……となる。そうだよねぇ。西園寺様が黙ってないよねぇ……あの人華鈴様のこと好きだもん。


怖いもの知らずの王子でも流石に親友の圧は怖いのかなぁ。まぁ、そりゃそうか。あんなに仲が良いんだし。


まぁ、とりあえず……


「…あの、私……香織様とお兄様が恋人になることは賛成派なのでそういうのはちょっと……」


王子には悪いと思ってるよ?いや、本当に。でもさー……王子も後一年経ったら春が来るのだと思うとねぇ……。


主人公である美穂ちゃんと結ばれて欲しいしからな。


「恋人……協力…なるほど……まだ諦めてなかったのね。伊集院くん」


華鈴様は呆れたようにため息をつく。あ、これはヤバいな……と思った瞬間、


「お前だって!城ヶ崎悠真のこと好きなんだろ?!」


「ええ、好きだったわよ。でも、私は失恋したし、もう受け入れた。伊集院くんもささっと新しい恋を見つけなさい」


華鈴様!カッコイイ!そしてイケメン!惚れてしまいそう…!華鈴様も私の知らないところで泣いてたりしてたのかなぁ……そう思うと胸が痛むなぁ……
 

「新しい恋……香織以外で新しい恋……?」


「あ、あのー……私そろそろ教室に帰りますねー……失礼しまーす」


これ以上ここにいると、王子がとんでもない発言をしそうな気がしたので私は教室に戻ることにした。


最も、王子は私の声なんて聞こえてなかったみたいだから意味はなかったけど。



△▼△▼



あの後、みんなに質問攻めをされた。だけどみんな『香織様関連のことです』と言ったらみんな納得してくれた。


みんな王子が香織様のことを諦めてないのは知っているしな……私とラブロマンスなんてしている暇なんてないよ?と言ったらみんな黙ってしまったし。


香織様ってやっぱり凄いと思う。だってお兄様と付き合っていても男子の人気は高いままだし、まだ狙っている男子もいるだろうし。


そしてそれはお兄様も同じ。女子人気は高いし、女子の中でも狙ってる子結構いると思う。


ただそれは王子の効果を期待してるからなんだよねぇ。王子が二人のことを別れさせたらみんなもワンチャンあるかも……と思ってんのかもしれない。


要するに王子が諦めたらみんな『敵わないなぁ……』と思って身を引く……と思う。多分……。


「早く、高校生にならないかな……」


そしたら見える景色も違うのに……と私はそう思った。
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