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三章〜出会いと別れ〜

四十五話 『修羅場と仲直り』

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空気重い。帰りたい。美月さん達と食べればよかった……って今最高に後悔してる。あぁ、どうしようこの状況……。


「えっと……冬馬?怒ってる?よね?」


香織様はそう言って王子の顔を覗く。…香織様怖いもの知らずか……!?いや、王子が香織様に弱いのは知ってるし、その効果を計算した上での行動なのかもしれないけどさ……

……にしても王子の顔怖っ!何あれ?鬼神かな?鬼神だね。


「……別に」


「本当?怒っていないなら良かった……」


上目遣いで微笑む香織様マジ天使だわ。お兄様まで顔赤くなってるもん。西園寺は苦笑いだけど。……って今はそんなことしている場合ではない!


「あ、あの……私これで失礼します。食べ終わったので」 


後は四人にお任せします!私は逃げます!!例え、ここでお兄様や香織様に引き止められても絶対に行かせて貰いますからね! 


「おー……そうか。お疲れー」


お疲れって……いや、お兄様が言いたいことは分かるけどね?!……って今はそんなことどうでもいいや!


「では!」


それだけ言って私は席を離れたが、その後美月さんやシャーロットや佐川や玲奈様に捕まって大変だった。でも、先の修羅場に比べればマシだったと思うことにした。



△▼△▼



あれから三日が経った。あれ以来、王子とも西園寺とも話してない。まぁ、同じクラスなので顔ぐらいは見るが向こうも私のことに興味なんかないし、私もない。寧ろ近寄ってくる方が嫌なので丁度いい距離感だと思う。


「ねえ、トウカ。私……レイナが何に怒っているのか正直よく分からないの。私が何に怒ってるの?って聞いても教えてくれないし……」


シャーロットがぼやくように言った。因みに今日の放課後である。美月さんと華鈴様と佐川は生徒会の仕事があるとかで今日はいないし、玲奈様はささっと帰ってしまったのでシャーロットは思いっきり玲奈様の愚痴を言っていた。


「あー……それは……多分……というか間違いなく、拗ねているだけだと思いますよ?」


主にアベル様の件で。まぁ、玲奈様が素直になればこの問題は解決するんだろうけど……。玲奈様の性格的に無理だろうなぁ……。だって好きな人の前だとツンデレになるもんね。うん、これはもう仕方がない。諦めよう。


「拗ねてる……?レイナが私に……?」


意味がわからない、とでも言うようにシャーロットは首を傾げるので私は詳しく説明をすることにした。


「えーと、まず、シャーロットはアベル様にいまぞっこんでしょ?だから玲奈様はアベル様に嫉妬してるのよ」


まぁ、こんな説明でいいか。大体は合ってるし。シャーロットは納得していないような表情を浮かべていたが、私は気にせず続けることにする。


いや、だってそうなんだもん。あれで嫉妬してなかったら怖いよ、逆に。それに今はまだ大丈夫だが、このまま放っておいたら本当に喧嘩になりかねないのだ。早めに手を打っておかねばなるまいし。
そういや……


「そういえばアベル様は元気?」


シャーロットとアベル様は順調らしいからねぇ。少女漫画では王道の『ふっ……俺に靡かないなんておもしれー女』展開になっていたしなぁ。私がアメリカにいた頃は。あの時は本当に面白かった。


まぁ、全部演技だったわけだけどさぁ。いや~、シャーロットの演技力凄まじかったわ。あの時、内心ドキドキしてたのに、全く靡いているように見えなかったもの。流石です!シャーロット先生!!と思っていると、


「うーん……どうなんでしょう……。最近会えてないので分かりません……」


少し寂しげにシャーロットは呟いた。おぉ……恋する乙女の顔だ。まぁ、会えていないのはともかく……


「電話とかは……?時差とかはあるとはいえ……アベル様ならシャーロットの為に頑張って起きていてくれるんじゃない?」


時差があるとはいえ、アベル様がシャーロットの時間を作らないとは思えない。シャーロットの為なら絶対起きると思うんだけど。それくらいにはシャーロットのことを想っているはずだし。


「……それは提案されましたけど断ったわ。だって私のせいでアベルさんの時間を奪うのはどうかと思うし。何よりアベルさんも忙しいみたいだし……」


……まぁ、アベル様は学園の人気者だし、生徒会にも入ったらしいし……そりゃあ忙しいよね。うん、仕方がないよね……。


「それに今はレイナと仲直りしたいから」


「そっか…なら、対処は簡単よ。拗ねてるだけだから。ちゃんと話し合えばすぐに解決するわ」


「そういうものなの?でも、拗ねてるって…レイナも案外可愛いところあるのね」


フフッと笑いながら、シャーロットはそう言った。いや、あそこまで意地を張ってるとささっと素直になれって思うけどね。


「じゃあ早速レイナの家に行ってくるわ。また明日ね。トウカ」


そう言ってシャーロットは私の前から去っていった。私も今はシャーロット以外に話し相手いないし、今日は一人で帰ろうか……と思いながら私は帰る準備をした。
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