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三章〜出会いと別れ〜
四十四話 『修羅場』
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追いかけ回されたその後は本当に大変だった。
授業が始まるギリギリまでずっと追い掛け回されたし、美月さんはともかく、佐川は本当に酷かった。何で私のこと嫌いな癖にそんなしつこく絡んでくるのよ!
鬱陶しいったらありゃしないし、また何か仕掛けてくるのかと身構えていたけど、結局何もしてこないまま昼休みになった。
そして現在、私は一人で屋上にいる。
いつもなら美月さんや玲奈様達と一緒にお弁当を食べている時間だけど、今日だけはどうしても一人になりたかったから教室を抜け出してきたのだ。
折角ならシャーロットとかと食べたかったけど……まぁ仕方ないわね……一緒に食べてたら玲奈様が拗ねるだろうししょうがないか。
にしても、屋上に来るのも久々だなー……前世は屋上なんて立ち入り禁止の場所だったから来る機会なかったし……と思っていると、
「……ったく、香織の奴何処に……」
「冬馬、ここにはいないって。香織や悠真先輩が屋上なんて逃げにくい所で昼飯を食べるわけがないと思うんだけど」
げぇ!?西園寺と王子の声だ!なんでこんな所に……!最悪のタイミング!今更隠れる場所もないからどうしようか悩んでいるうちに、
「あれー?城ヶ崎さん?どうしてここにいるんだろう?」
「あ……えっと……」
見つかってしまった……。
しかもよりによってこの二人に見つかるとは思わなかった……最悪すぎる……。
「えーと……城ヶ崎さんは知らない?香織と悠真先輩のこと」
「ううん……知らないわよ」
本当に知らないのでここは素直に答えよう。嘘もついてないし。
「ほら、やっぱり。ここは城ヶ崎さん一人しかいないじゃないかな?嘘を付いているようにも見えないし」
「……そうか。なら、しょうがない。見つけ次第ぶちのめせば……」
……王子も、失恋したとはいえ、いつまでやっているつもりなのだろうか……?いい加減諦めればいいのに……。
このままだと面倒臭いことになりそうだし、さっさと退散してくれませんかねぇ……。
「何だ、その憐れむような目は!」
ヒェッ!ば、バレた……!滅茶苦茶怒っていらっしゃるぅ~! これはまずいなぁ……!何とかしないと……。
でもどうやってここから逃げ出せばいいのかな……と考えていると、
「そんなに俺が馬鹿なことをしているように見えるのか!?お前なんかには分からないかもしれないけど、俺は本気であいつのことを愛しているんだよ!お前の兄貴よりもずっと香織を愛しているんだ!」
んー……まぁ、王子が香織様のことを愛してるのは否定しないけど……肝心の香織様がねぇ。好きは好きらしいけど、それはあくまで弟としてだから恋愛感情ではないし。
そろそろ、香織様もブチギレてくれないかしら……じゃないと私が大変なことになるんですけどぉー!
「大体あんな男の何処がいいんだよ、ちょっと頭が切れて、ちょっと運動神経が良くてちょっと顔が良いだけのただの男じゃねえかよ!」
それだけあれば充分だよ……というツッコミを入れたくなったけど我慢して黙っておく。だって、言ったところで睨まれるだけだもの。それに、今の王子に何を言っても無駄だし。
はぁ……早くどっかに行かないかしら……。
「……なんだかんだ言って冬馬も悠真先輩のこと認めてるよね?」
まぁ、西園寺的には香織様とお兄様がこのままくっつく方が都合がいいんだよね。華鈴様のこと好きなのに全然相手にされてないもんね。
「認めるわけあるか……認めるわけ……」
弱々しくなってきたよー、王子。もうすぐ折れそうな気がする……でも、流石お兄様だという感じ。まさかここまで王子を追い詰めるとは。
というか、私としてはここで諦めてくれた方がいいんだけど……巻き込まれるのはマジ勘弁。失恋して辛い気持ちは分かるけど……
「俺は……」
おっ!遂に諦めてくれる気になったみたい!やっと解放される……と思ったその時だった。
突然、屋上の入り口の扉が開かれた。そしてそこには――、
「あれ?透華ちゃんに……潤に冬馬!?」
「おー……珍しい三人だな……」
香織様とお兄様が立っていた。
タ、タイミング悪すぎ……! どうしてこんな時に……!っていうか、今の状況ヤバくね?王子完全に落ち込んでるし、今にも泣き出しそうになってるし……!これ絶対修羅場になるじゃん!嫌だわ、こんな展開!
「香織……」
「香織と悠真先輩が本当に屋上に来るとは……これは意外だな……」
まぁ、逃げる場所ないものね……そして私達は最高に空気の悪い中、お弁当を広げるのであった――。
授業が始まるギリギリまでずっと追い掛け回されたし、美月さんはともかく、佐川は本当に酷かった。何で私のこと嫌いな癖にそんなしつこく絡んでくるのよ!
鬱陶しいったらありゃしないし、また何か仕掛けてくるのかと身構えていたけど、結局何もしてこないまま昼休みになった。
そして現在、私は一人で屋上にいる。
いつもなら美月さんや玲奈様達と一緒にお弁当を食べている時間だけど、今日だけはどうしても一人になりたかったから教室を抜け出してきたのだ。
折角ならシャーロットとかと食べたかったけど……まぁ仕方ないわね……一緒に食べてたら玲奈様が拗ねるだろうししょうがないか。
にしても、屋上に来るのも久々だなー……前世は屋上なんて立ち入り禁止の場所だったから来る機会なかったし……と思っていると、
「……ったく、香織の奴何処に……」
「冬馬、ここにはいないって。香織や悠真先輩が屋上なんて逃げにくい所で昼飯を食べるわけがないと思うんだけど」
げぇ!?西園寺と王子の声だ!なんでこんな所に……!最悪のタイミング!今更隠れる場所もないからどうしようか悩んでいるうちに、
「あれー?城ヶ崎さん?どうしてここにいるんだろう?」
「あ……えっと……」
見つかってしまった……。
しかもよりによってこの二人に見つかるとは思わなかった……最悪すぎる……。
「えーと……城ヶ崎さんは知らない?香織と悠真先輩のこと」
「ううん……知らないわよ」
本当に知らないのでここは素直に答えよう。嘘もついてないし。
「ほら、やっぱり。ここは城ヶ崎さん一人しかいないじゃないかな?嘘を付いているようにも見えないし」
「……そうか。なら、しょうがない。見つけ次第ぶちのめせば……」
……王子も、失恋したとはいえ、いつまでやっているつもりなのだろうか……?いい加減諦めればいいのに……。
このままだと面倒臭いことになりそうだし、さっさと退散してくれませんかねぇ……。
「何だ、その憐れむような目は!」
ヒェッ!ば、バレた……!滅茶苦茶怒っていらっしゃるぅ~! これはまずいなぁ……!何とかしないと……。
でもどうやってここから逃げ出せばいいのかな……と考えていると、
「そんなに俺が馬鹿なことをしているように見えるのか!?お前なんかには分からないかもしれないけど、俺は本気であいつのことを愛しているんだよ!お前の兄貴よりもずっと香織を愛しているんだ!」
んー……まぁ、王子が香織様のことを愛してるのは否定しないけど……肝心の香織様がねぇ。好きは好きらしいけど、それはあくまで弟としてだから恋愛感情ではないし。
そろそろ、香織様もブチギレてくれないかしら……じゃないと私が大変なことになるんですけどぉー!
「大体あんな男の何処がいいんだよ、ちょっと頭が切れて、ちょっと運動神経が良くてちょっと顔が良いだけのただの男じゃねえかよ!」
それだけあれば充分だよ……というツッコミを入れたくなったけど我慢して黙っておく。だって、言ったところで睨まれるだけだもの。それに、今の王子に何を言っても無駄だし。
はぁ……早くどっかに行かないかしら……。
「……なんだかんだ言って冬馬も悠真先輩のこと認めてるよね?」
まぁ、西園寺的には香織様とお兄様がこのままくっつく方が都合がいいんだよね。華鈴様のこと好きなのに全然相手にされてないもんね。
「認めるわけあるか……認めるわけ……」
弱々しくなってきたよー、王子。もうすぐ折れそうな気がする……でも、流石お兄様だという感じ。まさかここまで王子を追い詰めるとは。
というか、私としてはここで諦めてくれた方がいいんだけど……巻き込まれるのはマジ勘弁。失恋して辛い気持ちは分かるけど……
「俺は……」
おっ!遂に諦めてくれる気になったみたい!やっと解放される……と思ったその時だった。
突然、屋上の入り口の扉が開かれた。そしてそこには――、
「あれ?透華ちゃんに……潤に冬馬!?」
「おー……珍しい三人だな……」
香織様とお兄様が立っていた。
タ、タイミング悪すぎ……! どうしてこんな時に……!っていうか、今の状況ヤバくね?王子完全に落ち込んでるし、今にも泣き出しそうになってるし……!これ絶対修羅場になるじゃん!嫌だわ、こんな展開!
「香織……」
「香織と悠真先輩が本当に屋上に来るとは……これは意外だな……」
まぁ、逃げる場所ないものね……そして私達は最高に空気の悪い中、お弁当を広げるのであった――。
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