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三章〜出会いと別れ〜
四十話 『状況整理』
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美穂ちゃんが白鷺学園に入学することは確定した。つまり、原作が始まるということだ。
そして、それと同時に原作崩壊が近づいているということを意味していた。
だって美穂ちゃんと友達一号になる予定だった華鈴様はもう私と友達だし、他にも友達がいるのでここでは私が目指していた名シーンを見れないのが辛い。
でも、それは仕方ないことだ、と割り切った。華鈴様の顔を曇らせたくないし。後、恋愛関係にも問題がある。それは香織様とお兄様が原作開始前にくっついてしまったことだ。
あの二人がくっついてたということは王子の立ち直りも遅くなるということだ。漫画だと香織様は高校生で彼氏を作ってたし、その時にはもう美穂ちゃんが側にいたしね。
香織様に失恋して美穂ちゃんに八つ当たりする王子に、美穂ちゃんが王子を抱きしめ、優しく頭を撫でながら慰めるシーンは漫画で見て何度もドキドキしてしまった。
まぁ、このシーンは見られる可能性はあるけどね。でも、…今の時期は春で、入学式まで時間があるし、美穂ちゃんが入学するまでの時間で王子立ち直ってるかもしれないからなぁ………。
まさか高校生になるまで引きずるなんてことはないよね?……いや、あり得るかも……だって王子だもん。原作でもかなり引きずってたし。
美穂ちゃんという支えがなく、ずっと落ち込んでたら……最悪、自殺とかもする……かもしれない。
いや、それは流石に……とは言い切れないのが伊集院冬馬という男だ。香織様のことを小学校低学年の頃から思い続けてたらしいし。
そんな失恋、受け入れられないというのも分からなくはない。……王子、後一年の辛抱だ!後一年で君には春がやってくる!桜と共にな!
まぁ、王子の件は美穂ちゃんに賭けるとして……後の問題は…と考えたときふっと私はこう思った。
「ん?あれ?私は?」
もう一つ、大きな問題が残っていることに今私は気づいた。他人の恋愛ばかりに気を取られ、自分のことを全く考えていなかった。そう、私に恋の相手がいないのだ。
王子のことなんか気にしている暇なんてなかった。どうしよう……このままじゃ、いつになっても恋ができないまま学生生活を終えてしまう。それどころか、恋人がいないまま死を迎えるかもしれない。それだけは嫌だ。
「お兄様に紹介してもらうか……?いや、お兄様の相手はきっと野球好きだ。辞めよう……」
野球がいけないわけではないが、野球マニアはお兄様で間に合っているんだ。うーん、どんな人だろ。やっぱり優しい人とか面白い人かな。
てゆうかさ!私!一度も男子に告白されたことないんですけども!?何で!?あの原作の透華ですら告白される描写あったのに!私にはないのは何でだよー! 私は心の中で叫んだ。
いや、だってさ?美月さんはあるって言ってたし、玲奈様もあるって言ってたし。華鈴様は……ないって言ってたけどその理由は西園寺の圧だろうからノーカンね。
でも、私はそんなこと一切言われたことないんだよなぁ……!
私、そんなに近寄りがたい?何故原作の透華にすら負けてるの?! 私は頭を抱えながら悶えた。
「…恋、したいなぁ」
そう思いながら私はベットで眠りについた。
△▼△▼
『貴花、とうとう終盤ねー』
『透華のifルート、美穂ちゃんと王子がくっついて安心したよ』
……え!?あの二人くっついたの!?良かった……!なら、私の願いは叶ったわけだ。これで私の心の平穏は保たれた……
『……透華も破滅されることない平和なエンドだったねー。透華の相手いなかったけど』
『ねー!今は仕事が恋人って書かれてたよねー』
……は?透華ってばふざけてるの?破滅しないのだったら恋愛しろや!何が仕事が恋人だよ!お前そんなキャラじゃねーだろ!?
透華ならこの美貌でキャバクラとかそんな感じのことしてると思ったんだけどなぁ……流石に少女漫画でそんな生々しいこと出来なかったか……なら、しょうがないか……
『にしても、悠真様って素敵よねー、どうして作者は悠真様を本編に出さなかったのかしら?香織様と付き合ってるのって彼なんでしょう?』
『そうだよねー。普通に考えてあり得ない設定だし……てゆうか、本編だと白鷺家が複雑な設定なのに、城ヶ崎家の方が複雑家庭になってるのは笑えるわ!』
うん、それは私も思う。やっぱり、城ヶ崎家はおかしいと思う。だって、原作だと城ヶ崎家の家族構成はこんなんじゃなかったし。
まぁ、だからと言って何かあるわけではないのだが。
それにしても、お兄様はこのスピンオフから出たのか……やっぱり原作には出てなかったのか。良かった。私の記憶力は正常だった。
そして、次の瞬間私の視界は暗くなっていった。
△▼△▼
目が覚めると、そこは見慣れた天井が広がっていた。
あぁ、また夢か……と思いながら体を起こす。
時計を見るとまだ6時半を指していた。起きるにはまだ早いが、二度寝をする気分でもなかったので私は頭の中で状況を整理し始めた。
まず、もう原作通りには二度と出来ないということだ。恋愛部分はともかく、友情部分はどう頑張っても無理だ。
あの名シーンは見られないのが残念ではあるが、仕方ないことだ。
それと…私が逮捕される道は折れている……と信じたい。
まぁ、これについては私が美穂ちゃんと王子を狙わなかったらいいだけの話だし。これは簡単なことだろう。問題は……。
「花音さん……なんだよなぁ…」
白咲花音。私……城ヶ崎透華の姉だと名乗った人物についてである。香織様の殺意は間違いなく本物だし、私に向けられたものでもないが、それでも怖いものは怖かった。
お兄様のことが好きなのか……?とか疑問はあったが花音さんがどんな人物なのかいまいちよく分からないし、あの時は好きだと言っていたが、本当にそう思っているのかどうかも分からない。
お兄様はからかっているだけだ、と言っていたが果たして本当だろうか?と思っている。
……まぁ、花音さんも暫くは行動を起こさないとは思う。冷めたって言ってたし。
「うーん……とりあえず、保留にしとくか!」
考えるだけ無駄だと思い、私は次……王子と香織様とお兄様の今後の関係について考えた。
この三人の関係が良好になるキーは美穂ちゃんだ。
美穂ちゃんがどう動くかにかかってくる。最も、美穂ちゃんがいじめに遭い、王子が助けるシーンさえ作れればほとんど原作沿いでいけるはずだから……そこは大丈夫だろう……。
「……って、そろそろ七時じゃん……!」
状況を整理していたらいつの間にかそんな時間になっていたので私は慌ててリビングに入って行った。
そして、それと同時に原作崩壊が近づいているということを意味していた。
だって美穂ちゃんと友達一号になる予定だった華鈴様はもう私と友達だし、他にも友達がいるのでここでは私が目指していた名シーンを見れないのが辛い。
でも、それは仕方ないことだ、と割り切った。華鈴様の顔を曇らせたくないし。後、恋愛関係にも問題がある。それは香織様とお兄様が原作開始前にくっついてしまったことだ。
あの二人がくっついてたということは王子の立ち直りも遅くなるということだ。漫画だと香織様は高校生で彼氏を作ってたし、その時にはもう美穂ちゃんが側にいたしね。
香織様に失恋して美穂ちゃんに八つ当たりする王子に、美穂ちゃんが王子を抱きしめ、優しく頭を撫でながら慰めるシーンは漫画で見て何度もドキドキしてしまった。
まぁ、このシーンは見られる可能性はあるけどね。でも、…今の時期は春で、入学式まで時間があるし、美穂ちゃんが入学するまでの時間で王子立ち直ってるかもしれないからなぁ………。
まさか高校生になるまで引きずるなんてことはないよね?……いや、あり得るかも……だって王子だもん。原作でもかなり引きずってたし。
美穂ちゃんという支えがなく、ずっと落ち込んでたら……最悪、自殺とかもする……かもしれない。
いや、それは流石に……とは言い切れないのが伊集院冬馬という男だ。香織様のことを小学校低学年の頃から思い続けてたらしいし。
そんな失恋、受け入れられないというのも分からなくはない。……王子、後一年の辛抱だ!後一年で君には春がやってくる!桜と共にな!
まぁ、王子の件は美穂ちゃんに賭けるとして……後の問題は…と考えたときふっと私はこう思った。
「ん?あれ?私は?」
もう一つ、大きな問題が残っていることに今私は気づいた。他人の恋愛ばかりに気を取られ、自分のことを全く考えていなかった。そう、私に恋の相手がいないのだ。
王子のことなんか気にしている暇なんてなかった。どうしよう……このままじゃ、いつになっても恋ができないまま学生生活を終えてしまう。それどころか、恋人がいないまま死を迎えるかもしれない。それだけは嫌だ。
「お兄様に紹介してもらうか……?いや、お兄様の相手はきっと野球好きだ。辞めよう……」
野球がいけないわけではないが、野球マニアはお兄様で間に合っているんだ。うーん、どんな人だろ。やっぱり優しい人とか面白い人かな。
てゆうかさ!私!一度も男子に告白されたことないんですけども!?何で!?あの原作の透華ですら告白される描写あったのに!私にはないのは何でだよー! 私は心の中で叫んだ。
いや、だってさ?美月さんはあるって言ってたし、玲奈様もあるって言ってたし。華鈴様は……ないって言ってたけどその理由は西園寺の圧だろうからノーカンね。
でも、私はそんなこと一切言われたことないんだよなぁ……!
私、そんなに近寄りがたい?何故原作の透華にすら負けてるの?! 私は頭を抱えながら悶えた。
「…恋、したいなぁ」
そう思いながら私はベットで眠りについた。
△▼△▼
『貴花、とうとう終盤ねー』
『透華のifルート、美穂ちゃんと王子がくっついて安心したよ』
……え!?あの二人くっついたの!?良かった……!なら、私の願いは叶ったわけだ。これで私の心の平穏は保たれた……
『……透華も破滅されることない平和なエンドだったねー。透華の相手いなかったけど』
『ねー!今は仕事が恋人って書かれてたよねー』
……は?透華ってばふざけてるの?破滅しないのだったら恋愛しろや!何が仕事が恋人だよ!お前そんなキャラじゃねーだろ!?
透華ならこの美貌でキャバクラとかそんな感じのことしてると思ったんだけどなぁ……流石に少女漫画でそんな生々しいこと出来なかったか……なら、しょうがないか……
『にしても、悠真様って素敵よねー、どうして作者は悠真様を本編に出さなかったのかしら?香織様と付き合ってるのって彼なんでしょう?』
『そうだよねー。普通に考えてあり得ない設定だし……てゆうか、本編だと白鷺家が複雑な設定なのに、城ヶ崎家の方が複雑家庭になってるのは笑えるわ!』
うん、それは私も思う。やっぱり、城ヶ崎家はおかしいと思う。だって、原作だと城ヶ崎家の家族構成はこんなんじゃなかったし。
まぁ、だからと言って何かあるわけではないのだが。
それにしても、お兄様はこのスピンオフから出たのか……やっぱり原作には出てなかったのか。良かった。私の記憶力は正常だった。
そして、次の瞬間私の視界は暗くなっていった。
△▼△▼
目が覚めると、そこは見慣れた天井が広がっていた。
あぁ、また夢か……と思いながら体を起こす。
時計を見るとまだ6時半を指していた。起きるにはまだ早いが、二度寝をする気分でもなかったので私は頭の中で状況を整理し始めた。
まず、もう原作通りには二度と出来ないということだ。恋愛部分はともかく、友情部分はどう頑張っても無理だ。
あの名シーンは見られないのが残念ではあるが、仕方ないことだ。
それと…私が逮捕される道は折れている……と信じたい。
まぁ、これについては私が美穂ちゃんと王子を狙わなかったらいいだけの話だし。これは簡単なことだろう。問題は……。
「花音さん……なんだよなぁ…」
白咲花音。私……城ヶ崎透華の姉だと名乗った人物についてである。香織様の殺意は間違いなく本物だし、私に向けられたものでもないが、それでも怖いものは怖かった。
お兄様のことが好きなのか……?とか疑問はあったが花音さんがどんな人物なのかいまいちよく分からないし、あの時は好きだと言っていたが、本当にそう思っているのかどうかも分からない。
お兄様はからかっているだけだ、と言っていたが果たして本当だろうか?と思っている。
……まぁ、花音さんも暫くは行動を起こさないとは思う。冷めたって言ってたし。
「うーん……とりあえず、保留にしとくか!」
考えるだけ無駄だと思い、私は次……王子と香織様とお兄様の今後の関係について考えた。
この三人の関係が良好になるキーは美穂ちゃんだ。
美穂ちゃんがどう動くかにかかってくる。最も、美穂ちゃんがいじめに遭い、王子が助けるシーンさえ作れればほとんど原作沿いでいけるはずだから……そこは大丈夫だろう……。
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