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二章 〜アメリカ編〜
二十四話 『アベル様との話』
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「みんな!席についてー」
先生にそう言われてみんな慌てて自分の席へと座った。そして授業が始まったのだが私は授業に集中することができなかった。考えていることはもちろん、シャーロットとアベル様のことである。
「(好きな人をあんな風に言われたら誰だって傷つくはずなのに……なんであの人は平気そうな顔をしているの?)」
それが不思議でしょうがなかったのだ。もし私が好きな人にあんなこと言われたら耐えれる自信はないし、諦めていると思う。それなのに、アベル様は諦めずにシャーロットの前に笑顔で接している。
「……」
それにしても……授業は本当に眠くなる……これは日本でもアメリカでも大して変わらないんだな……と思いながら何気なくグラウンド見ると、アベル様が楽しそうに体育をしているところを見つけた。
「(相変わらず顔がいいわね……シャーロットに拘らなくてもアベル様に寄ってくる
人だなんて沢山いるでしょうに)」
それともあれだろうか?少女漫画によくありがちな『…俺に惚れないなんておもしれー女』パターンだろうか?その可能性もあるのか……?少女漫画だとこういうタイプって俺様系に多いけどな!意外とアベル様って俺様系なのかも……?そう思っているとチャイムが鳴った。
「やっと終わったー!食堂行こう!シャーロットに透華ちゃん!」
「はい」
「うん」
今日はサンドイッチにした。ちなみにメニューはタマゴサンドである。サンドイッチを食べていると声がした。誰か来たらしい。今度はなんだろ~と思って振り返るとそこにはアベル様がいた。
『こんにちは皆さん』
ニッコリとした笑顔を向けられて一瞬にして女子達が黄色い悲鳴を上げた。
「げっ……」
しかし、シャーロットと玲奈様は眉を顰めている。まぁ、朝にあんなこと言われたわけだから警戒するよね……てゆうか先まで体育だったのに着替えるの早いな!?そんなくだらないことを思っていると、アベル様は私たちのテーブルに来た。
「一緒に食べてもよろしいでしょうか?」
キラキラ王子オーラ全開で聞かれる。私なら断れない。だけど玲奈様は……
「ダメでーす。シャーロットが好きなら察してくださいよ。断る理由」
バッサリと断った……さすが、玲奈様だ。しかし、アベル様はその答えにも動揺しないどころか微笑んでいる。
「そうですね。失礼致しました。じゃあ、
次は人気のないところで声をかけますね」
日本語でアベル様はそう言った。……確かにここは人目がある。ここで断られたのならば、次からは人目のつかないところに誘うつもりだろう。
「やめてくださーい」
「お断りします」
2人の返事はほぼ同時であった。2人とも怖いわ……目が笑ってないもの。玲奈様に関しては殺気が漏れてるし。
「……つれない。でも、そういうところが好きなんですよ」
「…気持ち悪い事言うのやめてくださいよ、アベルさん」
今まで聞いたことがないような低い声で玲奈様は言い放った。怖すぎる……これ絶対怒ってるじゃん……すると、アベル様の顔つきが変わった。先程までの優しい雰囲気はなく、真剣な眼差しになった。
あ、これまずいな、と思っているうちにアベル様は、シャーロットの腕を掴んだ。
突然腕を引っ張られ驚いたシャーロットだが、すぐに睨むようにしてアベル様を見た。
その間に割って入ったのは玲奈様だった。
今度こそ危ないと私の本能が訴えかけている。このままじゃ、取り返しのつかなくなる予感がしたからだ。
玲奈様はアベル様の手を振り払う。そしてシャーロットを守るかのように前に立った。
「それ以上、シャーロットに触れないでください」
いつもより冷たい目付きで言う玲奈様に対してアベル様は余裕のある笑みを浮かべた。
「……僕はただシャーロットと話をしたいだけなんですよ」
「嘘言わないで下さいよ」
「本当だよ」
そう言ってシャーロットを見るアベル様だったが、シャーロットは何も答えることはなかった。その対応にアベル様は諦めたのかため息を吐きながらこう言った。
「……今日はもう話を聞ける状態じゃない。今度は玲奈さんがいないときに話しましょう?シャーロット」
最後に甘い声で名前を呼んでからアベル様は食堂から去っていった。残された私たちはしばらく呆然としていた。
「大丈夫?シャーロット?」
心配そうな表情をして聞く玲奈様にシャーロットは首を振った。
「……ええ」
シャーロットはそう言って黙々とオムライスを食べている。その様子に私もサンドイッチを食べるのを再開した。……それにしても、一体何を考えているんだろうかアベル様は。そもそも何故……
「(……何でアベル様ってシャーロットのこと好きなんだろ?)」
私はそう思いながらサンドイッチを頬張った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
放課後。私は今図書室で勉強をしていると……
「あ、偶然だね?」
そんな声が聞こえてきた。頭を上げると、そこにはアベル様がいた。
私はどうすればいいかわからず、固まっているとアベル様が口を開く。
「あ、そうだ。僕、透華さんに聞きたいことがあったんだよ」
……はい?なんですか急に?私に聞きたいことって……でも……いい機会だ、私も聞いておこう。
「……私もアベル様に聞きたいことがあったんですよ。だから私の質問を聞いてくださるのなら私も答えますよ?」
「わかった。それで構わないよ」
「ありがとうございます。じゃあ、早速聞きますけど……シャーロットに告白したのはアベル様からだと聞きました。……どうしてシャーロットのことを好きになったのですか?」
私が問うとアベル様は少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと話し始めた。
「…自慢ではないけど僕ってなんでも出来るんだ。勉強も運動も恋愛も」
まぁ、日本語ペラペラな時点でそれは分かってたけど……て、私はそんな自慢話を聞くためにそんなこと聞いたわけじゃないんだけど!?思わず心の中でツッコミを入れてしまうほどにはイラついたが続きを促す。
「……そんな自分の境遇に浮かれちゃってさ。自分は何でも物にできるって勘違いしてた時期があったんだよね。そんな時にシャーロットに出会った。いつもの調子で話しかけるとシャーロットは塩対応だった。僕が何を話しても興味なさそうだった。こんなの初めてだったよ」
……なるほど。『ふっ、俺に靡かないなんておもしれー女』的な感じかな?少女漫画あるあるの奴だ。
「だから僕の方もムキになってね、絶対に彼女のことを振り向かせてやるって思ったんだ。まぁ結果はご覧の通りだけどね……」
ははっと乾いた笑いをするアベル様はどこか寂しげだった。
「……最初はどんな風にアプローチをしたんですか?」
「とにかく、彼女のことを誘ってみたよ。デートとかお茶会とか色々誘ったりしてみて。そしたら彼女は全部断ってきたし……正直泣きそうになったよ。それでもしつこく誘い続けると最終的には彼女が折れてくれた。それが嬉しくてね……そこからよく彼女を誘うようになったんだ。それから彼女と過ごす時間が増えていって気づいたら彼女に惚れてしまっていたという訳さ」
「そ、そうなんですか……」
王子が美穂ちゃんのことを気になった理由と一緒すぎでは?王子とアベル様会わせたいな……絶対に意気投合するわあの二人。そんなことを思っていると……
「じゃあ、今度はこっちが質問させてもらうね?」
そういや、そうだった。完全に忘れていたが、そういう交換条件だった。でも、私が答えることなんてあるのかしら……?と思いつつ口を開こうとすると先にアベル様の方が声を発した。
「聞きたいことというのは玲奈さん関連のことだよ」
まさかの人物の名前が出てきたことに驚く。玲奈様のことなんて私に答えられることなんてほとんどないぞ……。
「シャーロットと玲奈さんってどういう出会いをしたのかわからないかい?」
「え?玲奈様とシャーロットの出会い?」
……あれ?言われてみると確かに知らない。あれだけアベル様のことを目の敵にしているんだし大切な存在なのは確定だろうけど。シャーロットのことを面白い人だって言ってたし……そう思いながら私はアベル様にこう言った。
「……残念ながら私にはわかりません。玲奈様かシャーロットに直接聞くしか……でも、そんなこと聞いてどうするんですか?」
「知ってどうこうする気じゃないよ、ただ単に知りたいだけ」
アベル様がそういった瞬間、図書室の扉が開いた。そこに立っていたのは玲奈様である。私たちの姿を見た途端、玲奈様は目を見開いて驚いたような顔をしていたがすぐに玲奈様はアベル様を睨んだ。
「アベルさん。透華ちゃんに何したのー?」
「何もしていないですよ。ちょっと話を聞いていただけです」
「……透華ちゃん、アベルさんと何の話をしてたの?」
アベル様と話していても無駄だと察したのか今度はこっちに来た。いかにも怪しんでますよって顔をしながら近づいてくる玲奈様に焦りを感じた。だから私はこんなことを言ってしまったのだろう。
「し、シャーロットと玲奈様の話をしてました!」
「へぇ~!どんな話なのかな~」
……しまったと思った時にはもう遅かった。玲奈様は笑顔でアベル様に詰め寄っていたからだ。しかし、アベル様はそれに動揺することなく笑顔でこう言った。
「……シャーロットと玲奈さんがどうやって出会ったのかという話。透華さんに聞いたら知らないって言うんだ。だから玲奈さん教えて?」
そんなアベル様の言葉を聞いて、玲奈様は表情が固まる。そして数秒の後、玲奈様はため息をつきこう言った。
「それを知ってどうするつもりなの?」
「別にどうもしませんよ。純粋に二人がどのように出会ってどのような関係を築いてきたのかを知りたいだけなのですが……」
アベル様がそう言い終わった直後、玲奈様は俯き気味になり呟くように口を開いた。
「……そう。なら、私からは言えない。シャーロットに聞きなさい」
玲奈様はそう言って本を返却している。そういえばここ図書室だったな……私達以外誰もいないけど。そう思っていると、玲奈様はこう言った。
「透華ちゃん……この後時間ある?」
「え……?あ、はい」
突然すぎるその言葉に驚きつつも私は返事をする。すると、玲奈様は笑顔でこう言った。
「そう。良かった」
と言って笑った後、こちらを振り返りついてこいと言うかのように歩き出したので私は慌ててアベル様に礼をしてこの場から立ち去った。
先生にそう言われてみんな慌てて自分の席へと座った。そして授業が始まったのだが私は授業に集中することができなかった。考えていることはもちろん、シャーロットとアベル様のことである。
「(好きな人をあんな風に言われたら誰だって傷つくはずなのに……なんであの人は平気そうな顔をしているの?)」
それが不思議でしょうがなかったのだ。もし私が好きな人にあんなこと言われたら耐えれる自信はないし、諦めていると思う。それなのに、アベル様は諦めずにシャーロットの前に笑顔で接している。
「……」
それにしても……授業は本当に眠くなる……これは日本でもアメリカでも大して変わらないんだな……と思いながら何気なくグラウンド見ると、アベル様が楽しそうに体育をしているところを見つけた。
「(相変わらず顔がいいわね……シャーロットに拘らなくてもアベル様に寄ってくる
人だなんて沢山いるでしょうに)」
それともあれだろうか?少女漫画によくありがちな『…俺に惚れないなんておもしれー女』パターンだろうか?その可能性もあるのか……?少女漫画だとこういうタイプって俺様系に多いけどな!意外とアベル様って俺様系なのかも……?そう思っているとチャイムが鳴った。
「やっと終わったー!食堂行こう!シャーロットに透華ちゃん!」
「はい」
「うん」
今日はサンドイッチにした。ちなみにメニューはタマゴサンドである。サンドイッチを食べていると声がした。誰か来たらしい。今度はなんだろ~と思って振り返るとそこにはアベル様がいた。
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「げっ……」
しかし、シャーロットと玲奈様は眉を顰めている。まぁ、朝にあんなこと言われたわけだから警戒するよね……てゆうか先まで体育だったのに着替えるの早いな!?そんなくだらないことを思っていると、アベル様は私たちのテーブルに来た。
「一緒に食べてもよろしいでしょうか?」
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「ダメでーす。シャーロットが好きなら察してくださいよ。断る理由」
バッサリと断った……さすが、玲奈様だ。しかし、アベル様はその答えにも動揺しないどころか微笑んでいる。
「そうですね。失礼致しました。じゃあ、
次は人気のないところで声をかけますね」
日本語でアベル様はそう言った。……確かにここは人目がある。ここで断られたのならば、次からは人目のつかないところに誘うつもりだろう。
「やめてくださーい」
「お断りします」
2人の返事はほぼ同時であった。2人とも怖いわ……目が笑ってないもの。玲奈様に関しては殺気が漏れてるし。
「……つれない。でも、そういうところが好きなんですよ」
「…気持ち悪い事言うのやめてくださいよ、アベルさん」
今まで聞いたことがないような低い声で玲奈様は言い放った。怖すぎる……これ絶対怒ってるじゃん……すると、アベル様の顔つきが変わった。先程までの優しい雰囲気はなく、真剣な眼差しになった。
あ、これまずいな、と思っているうちにアベル様は、シャーロットの腕を掴んだ。
突然腕を引っ張られ驚いたシャーロットだが、すぐに睨むようにしてアベル様を見た。
その間に割って入ったのは玲奈様だった。
今度こそ危ないと私の本能が訴えかけている。このままじゃ、取り返しのつかなくなる予感がしたからだ。
玲奈様はアベル様の手を振り払う。そしてシャーロットを守るかのように前に立った。
「それ以上、シャーロットに触れないでください」
いつもより冷たい目付きで言う玲奈様に対してアベル様は余裕のある笑みを浮かべた。
「……僕はただシャーロットと話をしたいだけなんですよ」
「嘘言わないで下さいよ」
「本当だよ」
そう言ってシャーロットを見るアベル様だったが、シャーロットは何も答えることはなかった。その対応にアベル様は諦めたのかため息を吐きながらこう言った。
「……今日はもう話を聞ける状態じゃない。今度は玲奈さんがいないときに話しましょう?シャーロット」
最後に甘い声で名前を呼んでからアベル様は食堂から去っていった。残された私たちはしばらく呆然としていた。
「大丈夫?シャーロット?」
心配そうな表情をして聞く玲奈様にシャーロットは首を振った。
「……ええ」
シャーロットはそう言って黙々とオムライスを食べている。その様子に私もサンドイッチを食べるのを再開した。……それにしても、一体何を考えているんだろうかアベル様は。そもそも何故……
「(……何でアベル様ってシャーロットのこと好きなんだろ?)」
私はそう思いながらサンドイッチを頬張った。
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「あ、偶然だね?」
そんな声が聞こえてきた。頭を上げると、そこにはアベル様がいた。
私はどうすればいいかわからず、固まっているとアベル様が口を開く。
「あ、そうだ。僕、透華さんに聞きたいことがあったんだよ」
……はい?なんですか急に?私に聞きたいことって……でも……いい機会だ、私も聞いておこう。
「……私もアベル様に聞きたいことがあったんですよ。だから私の質問を聞いてくださるのなら私も答えますよ?」
「わかった。それで構わないよ」
「ありがとうございます。じゃあ、早速聞きますけど……シャーロットに告白したのはアベル様からだと聞きました。……どうしてシャーロットのことを好きになったのですか?」
私が問うとアベル様は少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと話し始めた。
「…自慢ではないけど僕ってなんでも出来るんだ。勉強も運動も恋愛も」
まぁ、日本語ペラペラな時点でそれは分かってたけど……て、私はそんな自慢話を聞くためにそんなこと聞いたわけじゃないんだけど!?思わず心の中でツッコミを入れてしまうほどにはイラついたが続きを促す。
「……そんな自分の境遇に浮かれちゃってさ。自分は何でも物にできるって勘違いしてた時期があったんだよね。そんな時にシャーロットに出会った。いつもの調子で話しかけるとシャーロットは塩対応だった。僕が何を話しても興味なさそうだった。こんなの初めてだったよ」
……なるほど。『ふっ、俺に靡かないなんておもしれー女』的な感じかな?少女漫画あるあるの奴だ。
「だから僕の方もムキになってね、絶対に彼女のことを振り向かせてやるって思ったんだ。まぁ結果はご覧の通りだけどね……」
ははっと乾いた笑いをするアベル様はどこか寂しげだった。
「……最初はどんな風にアプローチをしたんですか?」
「とにかく、彼女のことを誘ってみたよ。デートとかお茶会とか色々誘ったりしてみて。そしたら彼女は全部断ってきたし……正直泣きそうになったよ。それでもしつこく誘い続けると最終的には彼女が折れてくれた。それが嬉しくてね……そこからよく彼女を誘うようになったんだ。それから彼女と過ごす時間が増えていって気づいたら彼女に惚れてしまっていたという訳さ」
「そ、そうなんですか……」
王子が美穂ちゃんのことを気になった理由と一緒すぎでは?王子とアベル様会わせたいな……絶対に意気投合するわあの二人。そんなことを思っていると……
「じゃあ、今度はこっちが質問させてもらうね?」
そういや、そうだった。完全に忘れていたが、そういう交換条件だった。でも、私が答えることなんてあるのかしら……?と思いつつ口を開こうとすると先にアベル様の方が声を発した。
「聞きたいことというのは玲奈さん関連のことだよ」
まさかの人物の名前が出てきたことに驚く。玲奈様のことなんて私に答えられることなんてほとんどないぞ……。
「シャーロットと玲奈さんってどういう出会いをしたのかわからないかい?」
「え?玲奈様とシャーロットの出会い?」
……あれ?言われてみると確かに知らない。あれだけアベル様のことを目の敵にしているんだし大切な存在なのは確定だろうけど。シャーロットのことを面白い人だって言ってたし……そう思いながら私はアベル様にこう言った。
「……残念ながら私にはわかりません。玲奈様かシャーロットに直接聞くしか……でも、そんなこと聞いてどうするんですか?」
「知ってどうこうする気じゃないよ、ただ単に知りたいだけ」
アベル様がそういった瞬間、図書室の扉が開いた。そこに立っていたのは玲奈様である。私たちの姿を見た途端、玲奈様は目を見開いて驚いたような顔をしていたがすぐに玲奈様はアベル様を睨んだ。
「アベルさん。透華ちゃんに何したのー?」
「何もしていないですよ。ちょっと話を聞いていただけです」
「……透華ちゃん、アベルさんと何の話をしてたの?」
アベル様と話していても無駄だと察したのか今度はこっちに来た。いかにも怪しんでますよって顔をしながら近づいてくる玲奈様に焦りを感じた。だから私はこんなことを言ってしまったのだろう。
「し、シャーロットと玲奈様の話をしてました!」
「へぇ~!どんな話なのかな~」
……しまったと思った時にはもう遅かった。玲奈様は笑顔でアベル様に詰め寄っていたからだ。しかし、アベル様はそれに動揺することなく笑顔でこう言った。
「……シャーロットと玲奈さんがどうやって出会ったのかという話。透華さんに聞いたら知らないって言うんだ。だから玲奈さん教えて?」
そんなアベル様の言葉を聞いて、玲奈様は表情が固まる。そして数秒の後、玲奈様はため息をつきこう言った。
「それを知ってどうするつもりなの?」
「別にどうもしませんよ。純粋に二人がどのように出会ってどのような関係を築いてきたのかを知りたいだけなのですが……」
アベル様がそう言い終わった直後、玲奈様は俯き気味になり呟くように口を開いた。
「……そう。なら、私からは言えない。シャーロットに聞きなさい」
玲奈様はそう言って本を返却している。そういえばここ図書室だったな……私達以外誰もいないけど。そう思っていると、玲奈様はこう言った。
「透華ちゃん……この後時間ある?」
「え……?あ、はい」
突然すぎるその言葉に驚きつつも私は返事をする。すると、玲奈様は笑顔でこう言った。
「そう。良かった」
と言って笑った後、こちらを振り返りついてこいと言うかのように歩き出したので私は慌ててアベル様に礼をしてこの場から立ち去った。
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