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二章 〜アメリカ編〜

二十二話 『勝負』

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「はぁ……」


放課後になり私はシャーロットとの嫌がらせの件について考えていた。結局何もできずに終わった今日一日。朝の時点では何も出来ずに終わる気がしていたがまさかここまでだとは思わなかった。


「どうすればいいんだろ……」


頭を抱えて考えるが解決策が全く浮かんでこない。考えれば考える程焦りが出てくる。


「トウカ、そろそろ寮に行かないと」


いつの間にか隣に来ていたシャーロットが言う。そうだ、帰らないと……ここで考えているだけでは解決しないし、とりあえず寮に行かないと……と言っても場所は知らないけどね。


「シャーロット、案内よろしくね」


「ええ……」


そう言ってシャーロットは歩き出す。それに付いていくように歩くのだが、どうしても足が重い。今朝のこともありまだ気持ちが落ち着かなかった。
しばらく歩いていると大きな建物が見えてきた。これが寮だろう……とは思うのだが……


「(デカっ!?)」


思わず声が出そうになった。それほどまでに大きい。一体どれだけお金をかけているのだろうか?と考えてしまうほどの大きさの建物だ。


「ほら、早く行くわよ。私と同じ部屋だから」


「あっうん!」


そうして建物の中に入る。ロビーには数人の生徒がおり皆んなそれぞれ会話をしていたがシャーロットと私を見た途端周りの人はヒソヒソ話をし始めた。その視線はとても嫌なものを感じるものだった。


「……シャーロットってアベル様を誑かしたそうよ」


そんな言葉が聞こえてくる。やはりここでもそういう風に言われているのか……しかし、シャーロットは気にした素振りすら見せずに堂々としている。その姿がかっこよくてクラクラしてしまった。


「ここが私とトウカの部屋よ」


そう言いながら扉を開けるシャーロット。部屋の中に入るとそこにはベッド二つと机一つがあるだけのシンプルな部屋だった。


「……なんだかシンプルだね……」


「そうかしら?」


あんな大きい寮だから部屋も期待していたのだけど、こんなものなのかと思い少しガッカリする。まあいいや、もうすぐ夕食の時間だし食堂行ってみようかな。


「じゃあ早速行こうか!夕食食べない
と!」


「ええ、行きましょう」


そうして私たちは部屋を出て一階の大広間へと向かった。



△▼△▼



この学園では生徒が食事を自分で注文するのではなく、ビュッフェスタイルなのである。そのため各々好きな食べ物を取り席に着くのだ。ちなみにメニューはたくさんあるため飽きることはない。
さすがお金持ち学校……料理の種類も多いし量もある……。
 

「あ、透華ちゃんにシャーロット。一緒に食べましょう?」


そう思っていると玲奈様に声をかけられた。断る理由もないからもちろんOKしたのと同時にキャーー!!という声が聞こえ、後ろの方から騒めきが起こる。何事かと思って振り返るとそこに居たのは、


「キャーー!!アベル様ー!」


そんな黄色い声が聞こえてくる。それを見た玲奈様は顔を顰めながらため息を吐く。


「毎回来るたびにこれだから本当嫌になる……うるさいからやめて欲しいわ」


「……でも、イケメンだし騒ぐ気持ちは分かるかも……」


どこに行ってもイケメンは騒がれる存在だ。そこは日本と変わらない点だと思う。


「本当、ここってシャーロット以外に面白い人いないわよね。これならまだ日本の方が面白い人沢山いたわね」


「……例えば?」


「そうねぇ、まずは姉さんでしょ、伊集院君に西園寺君と……後は…透華ちゃん……かなぁ」


「えっ?!私!?」


まさか私が選ばれるなんて思ってなかった。驚きすぎて変な声出ちゃったじゃん。


「だって透華ちゃんって事前の噂と全く違うんだもーん。事前の噂と同じだったら興味失ってたけど」


「そうなんですね……」


というか噂とかあったんだ……全然知らなかった。そういえば美月さんも似たようなこといってたな……。


「後、同級生に絞らなかったら悠真お兄ちゃんも面白いわよね~。本当、厄介な人好きになっちゃったわよね。姉さんって」


そんなことをサラッと言う玲奈様……今サラッと聞き捨てならないことを聞いたような気がするんですが……?


「え……?華鈴様ってお兄様のこと好きなんですか……?」


「うん。知らなかった?」


サラッと言われたことに頭が追いつかない。…モテモテすぎるだろ!お兄様……!そのモテモテ具合羨ましい……!


「お、お兄様……西園寺様に恨まれないかしら……?」


「先から話が分からないけど……」


「あ、ごめんなさい。シャーロット」


つい口走ってしまった言葉を誤魔化すように急いで食事を取る。その後、雑談しながらご飯を食べ終え食器を片付けに行った時、ピコンとスマホが鳴った。


「あれ?お兄様?」


「え!?悠真お兄ちゃん!?見せて!」


「ちょっと待ってくださいね」


そう言ってトーク画面を開く。そこには『野球対決することになった……』と書いてあった。これはただ事では無いと感じ取りすぐに返信をする。するとまた直ぐに既読がついた。そして次の瞬間電話が鳴る。


「はいもしもし!」


「透華……」


お兄様の声色が暗かったのでどうしたの?と聞いたらお兄様はため息を吐きながら話し始めた。どうやらお兄様は今大変な状況らしい。何でも、香織様のことで勝負を挑まれたそうだ。しかも相手は王子だ。


「どうして私に電話を?」


「……自分でもよくわからないけど……目に入ったのが透華なんだ…」


「なるほど……」


……つまり私はお兄様にとって頼れる存在だってことですね!?凄く嬉しい!


「ねぇー、ビデオ通話にしてよ~。透華ちゃん…!」


「あっはい。わかりました」


私はそう言ってビデオ通話にする。二日ぶりのお兄様だ。相変わらずカッコいい。


「悠真お兄ちゃん~~!お久しぶりです~!大変なことに巻き込まれたんですね!」


「本当に大変だよ……」


お兄様は疲れた表情でそう言った。…ただごとじゃないぞ……これは……


「そ、それで伊集院様と何で野球対決するんですか?」


「それは……」


それから聞いた話はこうだった。香織様のことで王子とお兄様は野球で対決することになったらしい。お兄様は野球好きだし王子も野球好きだからなぁ……


「……まぁ、その頑張ってください」


「私も応援してるわよー悠真お兄ちゃん!じゃあ、バイバーイ」


「私も心の中で応援していますわ」


そう言って私は電話を切ると同時に玲奈様は上機嫌になった。


「やっぱり悠真お兄ちゃんって面白い人よねー!ますます好きになったわ!先のつまんない気持ちが嘘みたい!」


「……」


玲奈様の言葉を聞いて黙り込む。確かにあの時の玲奈様の機嫌は悪かったと思う。でも今は元気になっているようだし……やはりお兄様は偉大だ。まぁ、それらを抜きにしても……


「(お兄様のことが好きな人が多すぎませんかね……?)」


こんなにもお兄様のことを好きでいる女子がいるとは思わなかった。いや、お兄様はイケメンだし、優しいしスポーツ万能だからもてるのは当然といえば当然だけどさ……。


「(それでも主要キャラに好かれすぎじゃないですかね!?)」


漫画だとお兄様本編に出てこないようなモブよ?なのになんでここまで人気あるのか不思議でしょうがないんだけど……!


「はぁ~~……本当理不尽だわ……」


私はそう言ってため息をこぼした。
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