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二章 〜アメリカ編〜

二十一話 『いじめと王子様』

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「説明してください!どうして玲奈様がここにいるんですか?」


昼休みになり私はすぐさま彼女の所に行って問い詰めた。私がそう言うと、玲奈様は不機嫌そうにこう言った。


「飽きたのよ」


「え?」


「だから学校に通うの飽きちゃったの。だからここに来た。ここなら普通じゃないことを体験できるっておじいちゃんが言ってたから」


確かにここはアメリカの学園だ。日本じゃ味わえない体験だって出来るだろうけども。


「それにおじいちゃんの許可は取ってあるし」


「そ、そうですか……」


「あともう一つ理由があるんだけど……」


そう言いながら玲奈様は切なそうな目をしながら俯き、呟くように言った。


「それは……『あら~、ごめんなさい。シャーロット!』


そんな声が聞こえてきた。ごめんなさいと言っているのにそんなに悪いとは思ってなさそうなのだが……?と思いながら後ろを振り返ると、グレイが腕を掴み痛そうに顔を歪ませていた。


「大丈夫?」


慌てて駆け寄ると、シャーロットは笑顔で、


「大したことありません」


と言った。絶対嘘じゃん……と思ながら先生を呼ぼうとすると、シャーロットに止められる。


「本当大丈夫ですから!」


「でも、無理しない方が……」


と言いかけたとき、玲奈様はぶつかってきた女の子達の方を睨み英語で言い争っている。……何か言い争っているのかは分かるが早口で言うから全く聞き取れない……あ、女の子達が逃げていった。


「…レイナ、ありがとう」


「いいわよ、別に。またあの男の件で絡まれたの?」


「はい。すみません」


「謝ることではないわよ」


そうは言いつつも玲奈様の表情は不愉快と言わんばかりに眉間にシワを寄せている。


「あの……男の件って……」


「ああ、良くある話よ。イケメンがシャーロットに告白してシャーロットが断って逆ギレされて次の日から嫌がらせが始まったのよ」


「……」


絶句するしかなかった。いくらなんでも酷すぎる。女同士とはいえやって良いことと悪いことがあるはずだ。許せないと思ってしまうのは仕方ないことだと思う。


「…あのイケメンも面倒くさいし、取り巻きも面倒くさい。その上、あのイケメンの取り巻きからのいじめもあるんだから更に面倒くさい。私はこれを止めるために、ここにいると言っても過言じゃないわ」


そう言った玲奈様の瞳は怒りに燃えていた。確かにいじめや嫌がらせは良くない。だけど玲奈様からはそれ以上の何かを感じる。だけど、今はとりあえず目の前の問題の方が先決だ。


「シャーロット保健室に行きましょう」


「いえ、結構よ」


即答である。だけど……このまま放っておくわけにはいかない。するとその時、廊下の方からキャー!と黄色い声が上がっていた。声がする方に振り返るとそこには一人の男の子がいた。その人を見た瞬間心臓が大きく跳ね上がる。


まるで物語に出てくる王子様のような容姿をした少年だった。サラリとした金髪に碧眼。背は高くすらっとしていて、立ち振る舞いからも育ちの良さが感じられる。年の頃は同じくらいだが、私よりも大人びていてカッコイイと思った。


「彼は確か……」


玲奈様が小声で何事かを言っている中、シャーロットはその人をじっと見つめて固まっているようだった。


「シャーロット?玲奈様?」


不思議に思い二人に声をかけるが反応はない。だが、二人の反応でもしかして……と思い私はシャーロットにこう聞いた。 


「……もしかして今の人がシャーロットに告白してきた人?」


コクリとうなずく彼女を見て驚いた。あんな素敵な人に告白されたらどんな女性だって落ちるに違いない。それなのに彼女は断ったというのだ。信じられなかった。


「ど、どうして断ったの?」


思わず聞いてしまった。正直気になるところでもあったからだ。 


「………興味がなかった」


「それだけ!?」


あまりにも淡白すぎて驚くことしか出来なかった。見た目だけで判断するのはどうかとも思うが、それでもあれだけのスペックがあれば誰だってOKを出すはず。
 

「彼の名前はアベル・エイヴァリー。金持ちのボンボンね。顔良し家柄よし性格は……面倒くさいけど」


私の疑問を感じ取ったかのように玲奈様が教えてくれた。そしてさらに続ける。


「だからみんな最初は嫉妬でシャーロットに嫌がらせしていた。だけど今はただのストレスの発散の為にシャーロットに嫌がらせしているの」


……酷い話もあったものだ。こんなにも美しい少女を相手に……嫌がらせだなんて……


「だから私はそれを止めにここの学園に今はいる」


「なるほど……」 


そんな話をしていると、予鈴が鳴った。


「もうすぐ授業が始まりますね……」


「そうね……じゃあ、話は後よ、透華ちゃん」


「はい、分かりました」


私たち三人は急いで教室に戻った。ちなみにこの日の授業は全く集中できなかった。
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