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二章 〜アメリカ編〜
二十一話 『いじめと王子様』
しおりを挟む 結局、心咲は一日中男子たちの注目の的だった。もう放課後なのに、まだ話しかけられている。私は少しだけ羨ましいと思ってしまっていた。
「おまたせ、帰ろっか」
心咲は男子たちを振りきったようだ。後ろの方で、未練がましく睨みつけてくる視線が突き刺さる。
「......うん」
私はそう言うと、歩き始める。心咲が悪くない事は分かってはいるけれど、嫉妬していないといえば嘘になる。
「それで、卓也くんには告白するの?」
帰り道、心咲は突然そう聞いてきた。
私は慌てて周りを見る。うちの生徒がいたら大変だ。幸い、制服姿の学生は見当たらなかった。
「告白なんてしないよ........」
口許を押さえながらニヤニヤしている心咲を睨みつける。結構からかわれるんだよね。私。
「......心咲はどうなの? 好きな人とかいないの?」
私は、仕返とばかりに聞いてみた。
「私? 私は好きな人いるよ?」
心咲は当たり前のような顔をして、衝撃の真実を告げてきた。私は今まで、そんな人がいる事なんて全然知らなかった。ポカンと口を開け、心咲を凝視する。
「......希美、すごいバカっぽいよ」
私は慌てて開けていた口を閉じる。しかし、相手は誰なんだろう。気になる。
「誰? 誰なの?」
興味津々で聞いてみたけど、心咲は笑うだけで教えてはくれない。こうなった心咲は絶対口を割らないのだ。
私は、もしかしてと思い、恐る恐る聞いてみた。
「......卓也の事好きなの?」
私がそう言った瞬間、心咲が吹き出した。
「あははは! 違う違う! 卓也くんじゃないよ」
そう聞いた私はほっと胸を撫で下ろした。良かった......心咲相手じゃ絶対勝てない......
「そんなに好きなのに、何で告白しないの?」
急に心咲は真剣な表情で聞いてくる。
「......だって、卓也って私の事女の子として見てないもん」
自分で言ってて、悲しくなってくる。思わずうつ向いてしまった。
「でも、好きって言ったら変わるかもよ?」
心咲は優しく、諭すように覗き込んできた。
「......そうかなぁ...検討してみる」
私はそう言うと、ほんの少しだけ溜まっていた涙を袖で払った。
次の日の放課後、帰ろうとしていた私を卓也が呼び止めてきた。
「希美! 今日一緒に帰らね?」
周りにいた何人かの男子がヒューヒューと冷やかしてきた。卓也は、
「そんなんじゃねえよ!」
と追い払う。遠くから、心咲がニヤニヤとこちらを見ていた。私は一緒に帰る事を考えると、自然と顔が赤くなっていくのを感じる。
「もう行くぞ!」
卓也は突然私の手を掴み、引っ張るように下駄箱へ連れていかれた。
「しかし、希美と帰るのも久しぶりだな」
卓也は嬉しそうに笑ってくる。もしかして、私にもチャンスがあるんじゃないか。そう思えるほどの眩しい笑顔だった。
「うん。そうだね」
私は慌てて卓也から目をそらした。今顔を見られたら、死んでしまう。
「うん? どうしたんだ?」
そんな私の思いなど知らない卓也は、肩に手を置き覗き込もうとしてくる。
「何でもないから!」
私は顔を見られないように、走り始めた。これで万が一見られても、赤くなっているのは走ったからだと誤魔化せる。
「待ってって!」
女の私が卓也の足に勝てるはずもなく、敢えなく捕まってしまった。
「......ここで休んでいこうぜ」
卓也が指差した方向には、小さい頃よく一緒に遊んでいた公園があった。
私と卓也は公園のブランコに無言で座る。小さい頃は余裕のあったブランコも、今は結構キツキツだ。横を見ると、何を考えているのか、真剣な卓也の表情に見とれてしまう。
.....もし、今告白したら、どうなるのかな。私は、心咲の言っていた言葉を思い出す。
『でも、好きって言ったら変わるかもよ?』
......そうだ。駄目で元々、言ってみるだけ。駄目だったらドッキリとか、嘘とかで誤魔化せばいい。
私が決心し、告白ようとした一瞬前、卓也が思い詰めた顔で話しかけてきた。
「......あのさ、心咲って付き合ってる奴とかいるのかな」
卓也は真剣な表情で私を見つめてくる。
「......なんで?」
私は薄々分かっていながらも、聞き返した。違っていて欲しい。何かの間違いであって欲しい。そう期待した。
「俺さ、小学生の時からずっと好きなんだよね。高校生になって、心咲、ますます綺麗になったじゃん? 早く告白しときたくてさ。協力してくんね?」
卓也は私を拝むように手のひらを合わせている。
まさか卓也が心咲の事好きだったなんて、全然知らなかった。そっか......
私は、卓也が心咲の事を『好き』とか『綺麗』とか言う度に、心が壊れそうに痛む。そうだよね。私じゃ、やっぱり駄目だよね......
「......卓也はさ、私が協力したら嬉しい?」
泣かないように必死にこらえ、聞いてみる。少し声が震えたかもしれない。
「うん! お願い!」
卓也は、本当に心咲の事が好きなんだろう。今まで見たこともないぐらいに必死にお願いしてくる。
「......分かった。いいよ」
私は笑顔を作り、卓也を見つめる。その顔は、今まで見た事も無いぐらいに輝いていた。でも、その笑顔を引き出したのは私じゃなくて、心咲なんだ......
「ありがとう! 俺頑張るから!」
卓也はそう言うと、ブランコから飛び降り、こちらを向いた。
「あっ! 今日バイトの面接だった! ごめん、俺行くね」
卓也は慌てて時計を見ると走り始める。しかし突然、、ピタッと止まり顔だけこちらを向いた。
「希美が彼氏作るときは手伝ってやるからな!」
そう言うと、走って公園を出ていった。
「私は卓也と恋人になりたかったんだけどな......」
誰もいない公園で一人で呟いてみた。我慢していた涙がこらえきれず、あふれでてきた。
「おまたせ、帰ろっか」
心咲は男子たちを振りきったようだ。後ろの方で、未練がましく睨みつけてくる視線が突き刺さる。
「......うん」
私はそう言うと、歩き始める。心咲が悪くない事は分かってはいるけれど、嫉妬していないといえば嘘になる。
「それで、卓也くんには告白するの?」
帰り道、心咲は突然そう聞いてきた。
私は慌てて周りを見る。うちの生徒がいたら大変だ。幸い、制服姿の学生は見当たらなかった。
「告白なんてしないよ........」
口許を押さえながらニヤニヤしている心咲を睨みつける。結構からかわれるんだよね。私。
「......心咲はどうなの? 好きな人とかいないの?」
私は、仕返とばかりに聞いてみた。
「私? 私は好きな人いるよ?」
心咲は当たり前のような顔をして、衝撃の真実を告げてきた。私は今まで、そんな人がいる事なんて全然知らなかった。ポカンと口を開け、心咲を凝視する。
「......希美、すごいバカっぽいよ」
私は慌てて開けていた口を閉じる。しかし、相手は誰なんだろう。気になる。
「誰? 誰なの?」
興味津々で聞いてみたけど、心咲は笑うだけで教えてはくれない。こうなった心咲は絶対口を割らないのだ。
私は、もしかしてと思い、恐る恐る聞いてみた。
「......卓也の事好きなの?」
私がそう言った瞬間、心咲が吹き出した。
「あははは! 違う違う! 卓也くんじゃないよ」
そう聞いた私はほっと胸を撫で下ろした。良かった......心咲相手じゃ絶対勝てない......
「そんなに好きなのに、何で告白しないの?」
急に心咲は真剣な表情で聞いてくる。
「......だって、卓也って私の事女の子として見てないもん」
自分で言ってて、悲しくなってくる。思わずうつ向いてしまった。
「でも、好きって言ったら変わるかもよ?」
心咲は優しく、諭すように覗き込んできた。
「......そうかなぁ...検討してみる」
私はそう言うと、ほんの少しだけ溜まっていた涙を袖で払った。
次の日の放課後、帰ろうとしていた私を卓也が呼び止めてきた。
「希美! 今日一緒に帰らね?」
周りにいた何人かの男子がヒューヒューと冷やかしてきた。卓也は、
「そんなんじゃねえよ!」
と追い払う。遠くから、心咲がニヤニヤとこちらを見ていた。私は一緒に帰る事を考えると、自然と顔が赤くなっていくのを感じる。
「もう行くぞ!」
卓也は突然私の手を掴み、引っ張るように下駄箱へ連れていかれた。
「しかし、希美と帰るのも久しぶりだな」
卓也は嬉しそうに笑ってくる。もしかして、私にもチャンスがあるんじゃないか。そう思えるほどの眩しい笑顔だった。
「うん。そうだね」
私は慌てて卓也から目をそらした。今顔を見られたら、死んでしまう。
「うん? どうしたんだ?」
そんな私の思いなど知らない卓也は、肩に手を置き覗き込もうとしてくる。
「何でもないから!」
私は顔を見られないように、走り始めた。これで万が一見られても、赤くなっているのは走ったからだと誤魔化せる。
「待ってって!」
女の私が卓也の足に勝てるはずもなく、敢えなく捕まってしまった。
「......ここで休んでいこうぜ」
卓也が指差した方向には、小さい頃よく一緒に遊んでいた公園があった。
私と卓也は公園のブランコに無言で座る。小さい頃は余裕のあったブランコも、今は結構キツキツだ。横を見ると、何を考えているのか、真剣な卓也の表情に見とれてしまう。
.....もし、今告白したら、どうなるのかな。私は、心咲の言っていた言葉を思い出す。
『でも、好きって言ったら変わるかもよ?』
......そうだ。駄目で元々、言ってみるだけ。駄目だったらドッキリとか、嘘とかで誤魔化せばいい。
私が決心し、告白ようとした一瞬前、卓也が思い詰めた顔で話しかけてきた。
「......あのさ、心咲って付き合ってる奴とかいるのかな」
卓也は真剣な表情で私を見つめてくる。
「......なんで?」
私は薄々分かっていながらも、聞き返した。違っていて欲しい。何かの間違いであって欲しい。そう期待した。
「俺さ、小学生の時からずっと好きなんだよね。高校生になって、心咲、ますます綺麗になったじゃん? 早く告白しときたくてさ。協力してくんね?」
卓也は私を拝むように手のひらを合わせている。
まさか卓也が心咲の事好きだったなんて、全然知らなかった。そっか......
私は、卓也が心咲の事を『好き』とか『綺麗』とか言う度に、心が壊れそうに痛む。そうだよね。私じゃ、やっぱり駄目だよね......
「......卓也はさ、私が協力したら嬉しい?」
泣かないように必死にこらえ、聞いてみる。少し声が震えたかもしれない。
「うん! お願い!」
卓也は、本当に心咲の事が好きなんだろう。今まで見たこともないぐらいに必死にお願いしてくる。
「......分かった。いいよ」
私は笑顔を作り、卓也を見つめる。その顔は、今まで見た事も無いぐらいに輝いていた。でも、その笑顔を引き出したのは私じゃなくて、心咲なんだ......
「ありがとう! 俺頑張るから!」
卓也はそう言うと、ブランコから飛び降り、こちらを向いた。
「あっ! 今日バイトの面接だった! ごめん、俺行くね」
卓也は慌てて時計を見ると走り始める。しかし突然、、ピタッと止まり顔だけこちらを向いた。
「希美が彼氏作るときは手伝ってやるからな!」
そう言うと、走って公園を出ていった。
「私は卓也と恋人になりたかったんだけどな......」
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