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一章 〜全ての始まり〜
十七話 『新しい友達?』
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「お母様!」
赤い顔をして華鈴様はお母様を止めている。えっ、何この展開……?どうすればいいの?
「恥ずかしがることないじゃない!華鈴!」
華鈴様のお母様も先までのスパルタな雰囲気は一気に崩れ去っていているし。先の雰囲気は一体なんだったんだ……。
「それに、悠真さんまでいらっしゃるじゃないの!」
あ、お兄様のこと普通に忘れてた。だってお兄様ってばずっと黙ってたもの。
「はい。お邪魔しています」
お兄様がそう言って笑顔を見せると、華鈴様のお母様はほう……と息を吐く。…やっぱりお兄様はイケメンだ。誰だってあんな笑顔向けられたらため息吐くよね。分かる分かる。ってそんなことより!
「どうして私に感謝を?」
私は華鈴様のお母様にそう聞いた。だってそもそも私は華鈴様に酷いことを言った女だ。いくらあのシーンが見たくて言ったことでも最低なことを言ったことには変わらない。なのに私に感謝するなんて可笑しな話だ。そう思いながら華鈴様を見ると、
「それはねぇ」
ニヤニヤと笑いながら私の耳元で囁こうとする玲奈様を華鈴様が『待って。私に言わせて。……透華さん、空いてる?今から一緒に来てくれない?』と言った。私が思わず頷くと、華鈴様は私の手を取ってスタスタと歩いていく。
「ちょ、ちょっと華鈴様!?」
手を離さない華鈴様に戸惑いながらも声をかける。すると彼女は振り向いてこう答えた。
「私が貴方のおかげで前に向けたのは本当よ。辛かったのよ。前までの自分が。素を出すかともできずにただ愛想笑いしているのが本当に辛かった。だから吹っ切れたのよ。貴方のお陰で……」
「……っ」
あのときのことを言っていることはわかる。そんな感謝される程ではない。だって私は悪意の塊で言ったのだから。あの言葉を言えば吹っ切れて素の自分を出す……と私は知っていた。そして原作どおりのシーンを見るためだけに彼女を傷つけただけだというのに。
「だから感謝してるってこと」
そう言って笑う華鈴様の顔はとても輝いていた。その言葉や表情に偽りなどなかった。だから水を刺してはいけない。
「…………いえ、こちらこそ」
だから私はそう答えた。だってそう言うしかなかったから。つくづく私も卑怯者だ。原作に沿ってあのセリフを言ったのに今じゃ『嫌われたくない』という思いが先に出てしまう。だから華鈴様を傷つけたくなくってあの言葉を言うしかなかった。
「……後、今回の件は内緒にしていて欲しい。」
「へ?玲奈様のことですか?」
「そう。あの子不登校で引きこもりだから……知られると私も玲奈も困るのよ……」
「分かりました」
玲奈様って不登校だったのか……通りで見てなかった筈だ。そもそも双子なら話題になっていただろうし。
「ありがとう。それともう一つお願いがあるんだけど……」
「はい?」
「これから仲良くして欲しいの。友達として」
「…………え?」
突然の提案に私は目を丸くした。まさかこんな提案が来るとは思わなかったからだ。
だって私は悪役令嬢なのだ。だからそうならないようにあのセリフを言ったのに。ここで変わるの?だけど彼女の目を見たらもう後戻りは出来ない。だってここで酷いことを言うことなんて出来ない。言ったらそれは傷付けることになる。
「………いいの?私は華鈴様に酷いことを言った女なのに」
「ええ……」
「そう………ですか。私は構いません。だって私は……」
「……?何かしら?」
「………なんでもありません」
私は微笑んで首を横に振った。今自分で何を言おうとしたのか分からなかった
「そう?それならいいけど」
そう言って華鈴様は首を傾げるけど私は視線を逸らすことしかできなかった。
赤い顔をして華鈴様はお母様を止めている。えっ、何この展開……?どうすればいいの?
「恥ずかしがることないじゃない!華鈴!」
華鈴様のお母様も先までのスパルタな雰囲気は一気に崩れ去っていているし。先の雰囲気は一体なんだったんだ……。
「それに、悠真さんまでいらっしゃるじゃないの!」
あ、お兄様のこと普通に忘れてた。だってお兄様ってばずっと黙ってたもの。
「はい。お邪魔しています」
お兄様がそう言って笑顔を見せると、華鈴様のお母様はほう……と息を吐く。…やっぱりお兄様はイケメンだ。誰だってあんな笑顔向けられたらため息吐くよね。分かる分かる。ってそんなことより!
「どうして私に感謝を?」
私は華鈴様のお母様にそう聞いた。だってそもそも私は華鈴様に酷いことを言った女だ。いくらあのシーンが見たくて言ったことでも最低なことを言ったことには変わらない。なのに私に感謝するなんて可笑しな話だ。そう思いながら華鈴様を見ると、
「それはねぇ」
ニヤニヤと笑いながら私の耳元で囁こうとする玲奈様を華鈴様が『待って。私に言わせて。……透華さん、空いてる?今から一緒に来てくれない?』と言った。私が思わず頷くと、華鈴様は私の手を取ってスタスタと歩いていく。
「ちょ、ちょっと華鈴様!?」
手を離さない華鈴様に戸惑いながらも声をかける。すると彼女は振り向いてこう答えた。
「私が貴方のおかげで前に向けたのは本当よ。辛かったのよ。前までの自分が。素を出すかともできずにただ愛想笑いしているのが本当に辛かった。だから吹っ切れたのよ。貴方のお陰で……」
「……っ」
あのときのことを言っていることはわかる。そんな感謝される程ではない。だって私は悪意の塊で言ったのだから。あの言葉を言えば吹っ切れて素の自分を出す……と私は知っていた。そして原作どおりのシーンを見るためだけに彼女を傷つけただけだというのに。
「だから感謝してるってこと」
そう言って笑う華鈴様の顔はとても輝いていた。その言葉や表情に偽りなどなかった。だから水を刺してはいけない。
「…………いえ、こちらこそ」
だから私はそう答えた。だってそう言うしかなかったから。つくづく私も卑怯者だ。原作に沿ってあのセリフを言ったのに今じゃ『嫌われたくない』という思いが先に出てしまう。だから華鈴様を傷つけたくなくってあの言葉を言うしかなかった。
「……後、今回の件は内緒にしていて欲しい。」
「へ?玲奈様のことですか?」
「そう。あの子不登校で引きこもりだから……知られると私も玲奈も困るのよ……」
「分かりました」
玲奈様って不登校だったのか……通りで見てなかった筈だ。そもそも双子なら話題になっていただろうし。
「ありがとう。それともう一つお願いがあるんだけど……」
「はい?」
「これから仲良くして欲しいの。友達として」
「…………え?」
突然の提案に私は目を丸くした。まさかこんな提案が来るとは思わなかったからだ。
だって私は悪役令嬢なのだ。だからそうならないようにあのセリフを言ったのに。ここで変わるの?だけど彼女の目を見たらもう後戻りは出来ない。だってここで酷いことを言うことなんて出来ない。言ったらそれは傷付けることになる。
「………いいの?私は華鈴様に酷いことを言った女なのに」
「ええ……」
「そう………ですか。私は構いません。だって私は……」
「……?何かしら?」
「………なんでもありません」
私は微笑んで首を横に振った。今自分で何を言おうとしたのか分からなかった
「そう?それならいいけど」
そう言って華鈴様は首を傾げるけど私は視線を逸らすことしかできなかった。
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