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一章 〜全ての始まり〜

十一話『思わぬ遭遇』

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今回は一人で、プレゼントを買いたいと言ったらお父様とお母様と使用人に大いに驚かれた。そんなに驚くこと……?と言いたくなるほど驚かれて正直言って心外だったけど、冷静に考えてみたら私自分で買いに行く気がない癖に使用人に買わせたプレゼントに丁寧に一つ一つダメ出ししてた嫌な奴だったからね……


そりゃあ、驚かれるか……と反省し今までのことを謝ったらやっぱり驚かれた。


だけど、すぐ許してくれたし(使用人の立場もあるからだと思うけど)気持ちを切り替えて……


「お兄様のプレゼント買いに行こう!」


そう言いながら私は車に乗り込んだ。本当は自転車が良かったんだけどお父様とお母様が許してくれなかった。……心配してくれてたのは嬉しいけど……自転車ぐらい乗れるのになぁ……。


そう思いながら心の中でため息を吐いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

車に乗り込んで10分も立たない内にショッピングモールへとやってきた。ここならお兄様が欲しいと言っていたものが必ずある筈!


まぁ、お兄様本人からは気持ちだけで充分だと言われたが……


「(お兄様にああ言われたけども、やっぱりこういうのは形にしないと……!だってお兄様には迷惑沢山かけたし……)」


前世の記憶が戻る前まではお兄様の名前使ってやりたい放題してたしね……そのせいでお兄様ちょっと風評被害にもちょっとだけあったらしいし……

まぁ、そんな被害もお兄様の普段の行い見ていたらすぐ消されたらしいけど。というわけでいざお買い物だ。目指すはお兄様の欲しいもの!


「(こういうのは無難に消えものにするべき?お菓子の詰め合わせとか……?)」


お兄様が招待する子はお兄様のクラスの子だけだと言っていた。後はお父様関連のおじ様達が来ると言っていたっけ。


「貴方ってもしかして…悠真くんの妹さん?」


不意にそんな声がした。見に覚えのある声に私は振り向く。そこにはーー


「か、香織様……?」


思わぬ遭遇に私は間抜けな声を出すことしかできなかったが、香織様は嬉しそうにこう言った。


「あら?私のこと知っていてくれてたのね?嬉しいわ」


香織様を知らない人なんて学園内じゃいませんよ!?と心の中でそう思いながら、笑顔でこう言った。


「か、香織様はこんなところで何を…しているのですか?」


「悠真くんのプレゼントを買いに来たの。でも、悠真くんって何が欲しいとかそんなこと全然言ってくれなくて…」


悠真くん……ってお兄様の名前!お兄様ってば!香織様とそういう関係なの~!?下の名前で呼ぶ関係なの~~?


「だから、教えて欲しいの。悠真くんが何が欲しいのか……とか。良かったら教えてくれないかなぁって」


そう言って香織様はにっこりと笑う。…笑顔素敵すぎだろ。こんな笑みを浮かべて言ってくる人の頼みを断ることなんて出来ない。


「……わかりました。私に任せてください!香織様!」


そう言って私は胸を叩いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あの後、店を歩き回った。お兄様に相応しいプレゼントを見つけるために。だけどどれもこれも何か違う、という結論に至ってしまった。


「ありきたりなものは嫌じゃない?」


という香織様の言葉によって。私もありきたりなものは嫌だと思うので同意見だけどね。


「……何かが違うのよねぇ」


そう言って真剣な表情で、香織様は休憩用のベンチに座る。…….近くから見ても本当に綺麗だなこの人……毛穴一つないとか本当に羨ましいし、世の中不公平だなぁってそう思いもした。


「…ねぇ、透華ちゃん」


「は、はい!」


不意に名前で呼ばれてしまった。……こんな美人な人に間近で見られるの何のご褒美?お金とか払ってないですけど……?!てゆうか、この状況王子に見られたら私刺されない!?そっちの方も心配なんだけど……!


「今日はありがとう。私の我儘に付き合ってくれて」


そんなくだらないことを思っていると、香織様はそう言った。私は慌てて胸の前でバタバタと手を振りながら


「いいえ!香織様は悪くありません。私も何かが違う!と思ってましたから!どこにも我儘要素なんてありませんよ!」


「そう?そう言ってくれると嬉しいわ」


そう言って香織様は笑う。笑う姿は正に女神の微笑みだ。美しすぎる。絵になりそうなぐらい美しい……とそう思った直後ーー


「おい。香織!」


そんな声が聞こえてきた。振り向くと香織様は苦笑いを零しているが私も盛大に顔を歪めそうになってしまった。だって……そこにいるのが王子だからだ。王子は不機嫌そうに仁王立ちしながらこう言った。


「まだ?そんなにあいつのプレゼントに困難しているのなら俺が選んでやるって言ってるのに……」


「もう!わかってないわね!こういうのはね自分で選んだからこそ意味があるの!折角招待して貰ったのに適当に選んだり他の人が選んだものを渡したくないの!」


プンプンと怒っている香織様の横で私はうんうんと頷く。香織様はやっぱりこうだよね!原作通りで安心したわ。香織様は頑固で変なところでプライド高くてそして変なところで潔くてユーモアもあるお方だからね。そんな彼女に振り回される王子も満更じゃなさそうだし。だけど今回は焦るよね……何せ、男の人のプレゼントだし。


「とゆうか冬馬は来なくていいって言ったじゃん!」


「お前のお父様から頼まれたから……」


「もう、お父様の命令なんて聞かなくて良いって言ってるのに!」


そういえば香織様のお父様の命令で香織様と常に一緒にいるって設定だったよね……まぁ、王子としてはそっちの方が好都合でいいんだろうけど。


「……それで?そいつは?」


不意に私を指を刺す王子。げっ、も、もしかしてこれで認識されます?嫌だ~!そんなの!折角、関わりを無くしてたのに!と思いながら、私はふっとあるものが目に入った。それはーー


「あ、この子は……「香織様!」


私の紹介をする香織様を遮り、私はとある方向を指で刺す。その方向に香織様と王子は目を向けてそしてーー


「これ!お兄様がほしいって言っていました!」


まさしくこれがお兄様が欲しいと昔言っていたものだ!シリーズもので唯一これだけ集まらなかったの気がかりだって言ってたものね!昔からぬいぐるみ集めるの好きだったって言ってたし。


「は?これが?」


不可解そうな顔で王子はまじまじとこれを見つめている。


「……本当にこれ?」


「はい!本当にこれです!それに可愛いでしょ?!」


「は……?」


呆れたように王子はため息を吐く。何よー、可愛いでしょ?丸いつぶらな瞳とか。心の中で王子に文句を言っている私に対し、王子は横でプルプルと震える香織様に向かってこう言った。


「こいつじゃ話にならねー。やっぱり俺が……」


「これ!悠真くんも集めてるの?私もよ!」


選んでやる、とでも言いたげだった王子は呆気に取られたようにこのぬいぐるみを2度見した。


「ただ、この表情だけはどうしても買えなかったのよねぇ。こんなところで巡り会うなんてラッキーだわ!ありがとう!透華ちゃん!」


「どういたしまして!じゃあ、二つ買いましょ!香織様!」


王子を尻目に私達は二人で盛り上がっていたが王子は呆然と、


「香織って本当わけわかんね……そういうところが好きなんだけど……ってちょっと待って!それってペア……!」


そんな王子の焦り声が聞こえたが、私は聞こえないフリをした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


結局、その後王子にぬいぐるみは却下された。強引な形で戻され、強制的に私も乗せられた車の中で王子はこう言った。


「こういうものは手作りものに限るだろ!」


「え……?て、手作り?」


手作りプレゼント。ばっと思いつくのは肩たたき券ぐらいしか思い浮かばない……そもそも私お父様のプレゼントもお母様のプレゼントも使用人に買わせてたし……


「そう、手作り。心がこもってて一番いいと思うぞ。ま、今回はしなくていい……「それ凄くいいわね!」


「えっ」


キラキラな目をして香織様は私の手を握りながらこう言った。


「手作りプレゼント、良かったら私と一緒に作らない?悠真くんの誕生日まで一週間ぐらい時間あるし」


突然のお誘いに私は一瞬戸惑った。だってそれってもれなく王子が付いてくるってことですよね……?!そんなことを頭の中で葛藤していると、香織様は悲しそうな顔で……

「あ……やっぱり嫌?そうよね……いくら一週間前とは言え、急にこんなこと言ったら……」


うっ……香織様を悲しませるだなんて……!それはいけない!


「わ、わかりました……!私と香織様で一緒に手作りプレゼント作りましょう!」


私がそう言うと、パッと嬉しそうな顔をする香織様とその光景を面白くなさそうに見ている王子。『何お前余計なこと言ってんの?』みたいな視線だ。しょうがないでしょ?!香織様にあんな悲しそうな表情させたくなかったんだもん!


「あ、なら冬馬もやりましょう?三人で、ね」


差し伸ばされた手。……香織様は王子が唯一心を開き、そして惚れた女。だから、王子の言葉大方想像がつく。


「……まぁ、香織がするなら……やる」


案の定の返事に私はため息をこぼすしかなかった。
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