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一章 〜全ての始まり〜

三話『悪役になってしまった』

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私にとってのパーティーは食事が食べれるだけのお祭りだ。交流なんぞ興味もない。これで若い女の子が一人でもいたらその子に声をかけていたと思うが、残念ながらここにはそう言った女の子はいない。


故に私は食べる専門になるしかない。みんなお喋りに夢中で料理が減らないのは本当に勿体ない。こんなに美味しいのに。


「いい食べっぷり。これも食べる?」


「え?あ、ありがとうございま……」


す、と言いかけた時頭の中が真っ白になった。な、な、何でお前がいるんだ!?西園寺潤。『貴方に花束を』では冬馬の親友だ。西園寺も人気キャラで王子と美穂ちゃんを差し置いて人気投票で一位を獲得したキャラだ。まぁ、魅力的なキャラだし、好きなキャラだけどさ!今の立場だと関わりたくねぇ!そう思いながら私は西園寺に頭を下げる。


「……お見苦しいところを見せてしまい大変申し訳ございません。西園寺様」


「堅苦しいなぁ」


そういって西園寺は笑う。相変わらずの美形ですね!でも、私に笑いかけないで!何か誤解したおじさま達が何かニヤニヤしながらこっち見てるから!こんなところで関わるなんて私は嫌だからな!?


「……あ、そうだ。今日は冬馬と一緒に来てるんだ。良かったら城ヶ崎さんも来る?」


西園寺が突然の爆弾を仕込んできた。え、何?嫌がらせなの?嫌な顔する王子が目に見えて嫌なんだけど!?と、私は行かない言い訳を探そうとしていたそのとき……

 
「透華」


ナイスタイミングでお父様が来た。愛してるぜ!お父様!本当にナイスタイミング!私は西園寺に向かって礼をし、申し訳なさそうなふりをしつつこう言った。


「呼ばれていますので……折角お誘いいただいたのに大変申し訳ございません」


「んー、何か嬉しそうだね」


さらっと西園寺にそう言われた。……顔に出てたのか!?私は引きつった笑みを扇子で隠しながら……


「おほほ。何をおしゃっているのかよく分かりませんわ。では、私はこれで」


そう言って私はそくさくと西園寺の前から去っていく。途中訝しげな目でこちらを見ていた気がするがやがて興味をなくしたようにその視線がなくなる。疲れた。ささっとこんなところとんずらしたい。


「お父様どうしたのですか?」


「いや、何か……透華が困ってるように見えたから声を掛けたのだが……迷惑だったか?」


迷惑だなんてとんでもない!寧ろナイスタイミングだったよ!普段は頼りのがいのないお父様だが、今回ばかりは頼れるお父様に見えてきた。


「お父様、ありがとう……私疲れてたからもう部屋に戻っていい?」


私がそう言うと、お父様は頷く。うーん、これで腹のポッコリをなんとかしてくれたらみんなに自慢できたのにな……とそう思いながら私は早足でパーティー会場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


白鷺学園に入学して一ヶ月が経った。特に何も変わらない。王子とも接点は持ってないし西園寺とはパーティーのとき話したがあれ以降話してないし。出来ればそのままでいてほしい。


クラスでも一緒にならない限り、多分大丈夫だろう。……原作だと高校では王子と西園寺と一緒のクラスになるけど。


だけど、中学はそういう設定はないし、特にそう言うことも言ってないはず。せめて中学は平和なスクールライフを過ごしたい。


「ね、ねぇ……あれ西園寺様では?」


「ど、どうして西園寺様が……?」


そう思っていると、騒つく声が聞こえてくる。とゆうか、西園寺って言わなかった!?え?ま、マジで?誰にだ!?ガラッと扉が開き、西園寺は笑いながらこっちを見た。え、何。怖っ。用事ってまさか私に?今更あのパーティーのことを聞いてくるのか……!?


「白鷺さんいる?」


そう思っていると、西園寺はそう言った。その言葉に華鈴様は目を見開かせるが、すぐ営業スマイルに戻し、西園寺と一緒に出ていった。……よかった。全然違った。それもそっか。一ヶ月の前のことを今更聞かないよね……私がそう思っていると、クラスメートのお嬢様達が騒ぎ出す。


「西園寺様が華鈴様に用?何の用事なのかしら?」


ザワザワしている。ああ、空気がやばい。今にも不満が爆発しそうだし、何だか、巻き込まれそうな気がする。そっとその場から退場しようとしたそのとき…… 


「白鷺様って少し調子乗りすぎだと思いますの!」


「ええ、私もそう思いますわ。ーー透華様もそう思いませんか?華鈴様が調子に乗りすぎだって」


ええ……!?は、話してるだけじゃん!しかも声かけてきたの西園寺だし!華鈴様何も悪くねーだろ!とそう言いかけた瞬間思い出した。これ華鈴様の回想で出てきたシーンじゃね?と。確か、これがきっかけで人と関係性を持つのが馬鹿馬鹿しくなって一匹狼になった……とかそんな感じだった気がする。そしてそんな過去があったから美穂ちゃんとの会話が輝く訳で……


つまり、あのシーンを見るためには……私は華鈴様の悪口を言わないといけない。……戸惑った。だってそれは本当に悪役みたいなことになってしまうから。……しばらく悩んだ後私は扇子を持ち、笑みを浮かべてこう言った。


「ええ……私も華鈴様は調子に乗っていると思いますわ」


ああ、ごめんよ!華鈴様!私は貴方のことを悪く言うつもりはなかったんだ!!でも、そう言わないとあのシーンが見れないんだ!本当にごめんな!


「ですよね!伊集院様とも西園寺様とも話すなんて!いくら理事長の孫だからって調子乗りすぎですよ!」


「本当に!」


教室の外で聞いている華鈴様を発見して胸が痛んだ。とゆうか、これ原作通りじゃん!確か透華の言葉がきっかけで馬鹿馬鹿しくなるシーンな訳だし。


美穂ちゃんが友達一号なら私は友達二号になろうと思ったのにこれでは絶対に無理だ。こんなこと言った奴が本当の友達になるなんて馬鹿にしているにも程がある。


「(……ああ、本当の悪役になってしまったぜ……)」



悪役にならないって宣言してからまだ一年も経ってないのに……私は全てを諦めた目をしながら窓を眺めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


悪役になってしまったあの日から華鈴様は変わっていった。優しかった彼女は今や一匹狼になってしまった。
つまり、原作通りだ。原作通りなのに今凄く胸が痛い。


後、華鈴様の件があって以降私の周りには取り巻き達が私の周りに集まってくるようになった。そのせいか知りたくもないのに王子と西園寺の情報ばっか聞かされるようになる。王子と目が合っただの、西園寺様がこっちを見ていたわ!とか


言われても困るようなことを毎日沢山言われて愛想笑いするのも疲れてきた。これ華鈴様毎日あんな笑顔で受け答えしてたの?凄すぎない?と、改めて華鈴様の偉大さが分かったし。……それに……やっぱりこっちの方が安心感はある。私ーー読者が見てきた華鈴様ってこんな感じだし。


「白鷺さん。何かいつもと違うよね?どうしたの?」


そう思っていると、西園寺は華鈴様に気さくに話しかけけている。…そういえば西園寺って原作通りだと華鈴様に恋する筈なんだよね。今の段階で恋しているのかは知らないけど。


確か原作だと高校二年の文化祭の打ち上げで……『白鷺さんって本当に面白いよね。……これからもずっと俺のそばにいてよ』とかそんな恥ずかしげな台詞をサラッと言うんだよ!?反則すぎるんだよな……!


「私に話しかけないで。西園寺くん」


そう思っていると、華鈴様は西園寺を睨みつけながらそう言った。教室の空気がどんよりと暗くなっていくのを感じたが、華鈴様はため息を吐き、教室から出ていく。そんな態度に女子達は怒りを露わにし……


「華鈴様のあの態度なんなのかしら?!」


「折角、西園寺様が話しかけているのに!」


女子達は怒りに露わにしているのに対し、西園寺はというと…呆然としていたが……やがてゆっくりと女子達の方へと振り向く。


「僕が悪かったからさ、あまり白鷺さんを責めないであげて?」 


西園寺が笑うと女子達はもはや何も言えない。ただ、西園寺の言葉を受け止めるだけだ。西園寺って怒らせると怖い、というのは小学校からの噂だ。小学校が違う私でさえ知っていたし。


作中で一回だけ怒ったんだよね。華鈴様の為に。あの迫力は怖かった。あんな態度で怒られたら絶対に怒らせないようにしなくちゃってなるよな。


「西園寺様って普段はお優しいのだけど、怒らせると本当に怖いのであまり怒らせたくありませんわ……」


誰かの独り言に私は一人うんうんと頷いたのであった。
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