【完結】お嬢様は納得できない!

かんな

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最終章 〜その後〜

最終回 『これからの未来』

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あれから2年が経った。婚約破棄の件も複雑な三角関係の件も遠い昔の出来事のように思えてくる。


だが、この二年間で変わったことなんてそんなにない。相変わらず、透とは愛し合っているし、毎晩のようにお互いが求め合い、朝まで激しく交わっている。


茜はクラスの担任が変わったきり話してなどいないから変わったのかはよく分からないが。


そんなことをカナが考えていると。


「お久しぶりでー。お前俺のこと覚えてる?」


馴れ馴れしい口調で話しかけてきた男がいた。口調で誰か分かる。


「…覚えてるわよ。私の婚約者だった鈴木春人でしょ?てゆうか、あんたから連絡して来たんだから忘れるわけ無いじゃない」


「ノリが悪いなあ。まあいいや……」


そう言いながら、春人はニッコリ微笑み、そしてこう言った。


「あの男とは順調?」


「……すごく順調だけど。あんたの言う男が透さんだった場合のみだけど」


カナの言葉を聞いて春人はニヤリと笑う。
その笑顔を見て、カナは意味がわからず、少し戸惑う。


「そうか。にしても、お前凄いよなぁ。茜先生の男略奪したんだろ?滅茶苦茶学校でも話題になってたし」


「……何年前の話をしているの?それに略奪だなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。茜先生が透さんの元に来なくなったの。それに茜先生も私の存在を許してたんだし、略奪でもなんでもなくない?」


「ふーん。そっか。まぁ、茜先生も新しい男出来たみたいだし、もう過去の話かぁ」


「そうよ。過去の話よ、それより……あんたの方はどうなの?まだ春香ちゃんと仲良く氷室くんのこと取り合ってるの?」


カナの関係性も大概だが、春人の関係性の方も複雑で、ややこしかったりするのだ。


「……取り合ってる……とゆうか……ここまで来ると……和馬のことを独り占めしたい……という思いが俺と春香の間にあってさー……今じゃシフト制みたいな感じかな」


「……シフト制って……あんたはそれでいいの?独占する時間減るじゃん」


カナだったら絶対に嫌だ。シフト制とかバイトじゃないんだし……とカナはそう思いながら春人を見るが春人はケロッとした様子でこう言った。


「良いんだよ。俺はあいつを愛してるし。愛があれば何でもいいやって思えて来たんだよねー。俺はあいつのこと逃さないし、離さないって決めたから」


「……」


「子供も。春香と和馬の間からは生まれても俺と和馬の間の子供はないじゃん?男同士だし。でも、調べてみたらあるんだよ。男同士でも子供を授かる方法が」


「へぇ、そうなんだ。男同士だと妊娠出来ないと思ってた」


「そうなんだよ。結構面白いぜ?今度和馬に話してみようと思う……あ、そういや、お前の方は子供はまだなのか?」


「子供が出来たら二人っきりになれないじゃん。だからもう少し先になるかもね。透さんとの子供は欲しいけどさ」


毒にも薬にもならないような会話を繰り広げる二人。それが面白いかはわからないが、二人の表情には笑みがあった。


どんな会話をしたとしても、相手は引くことなく、自分と話してくれる。そんな関係に二人は満足していた。


どんなものなのか、と聞かれたら分からない。しかし、きっとこの関係はこれからも続いていくだろう。そう思えるくらい、心地よい空気感を醸し出しているのだ。


「……と、まぁ、頑張りなさいよ。私あんたのこと応援してるから」


「おう!ありがとな!」


それから二人は暫く雑談をした。透の話や和馬の話や春香の話や奈緒の話などを延々と。そして……


「あ……もうこんな時間。帰らないと……」


気付けば時刻は六時であり、辺りは暗くなり始めていた。カナは立ち上がると、鞄を手に取った。
その姿を見て、春人も立ち上がった。


「そうだなー、俺たちには待ってる人がいるもんな」


「ええ。そうね」


婚約者だった昔とは違い、二人には待っている人がいる。それがどのぐらい幸福で素晴らしいことなのか、今の二人ならよく分かる。


だから、二人はそのまま会計を済ませ、
店を出た。
外は既に夜と言っても良いほど暗かった。空を見上げると満天の星空が広がっている。


「冬だし暗くなって来たわね。透さんが心配するから早く帰りましょ」


「そうだな。和馬も心配するし。和馬ってさー、俺と春香の帰りが遅いとすげぇ泣くんだよ。それがかわいい、と思っちゃってさー……たまにわざと遅く帰るようにしてるんだけど」


「それわかる。透さんもすごい寂しそうにするのよ。それもかわいいんだよね」


他人が聞いたらドン引きするような惚気話をしながらも、二人は電車に乗ってそれぞれ家に帰った。



この先、何があるかは分からないが一つ言えることは――。


「透さんは絶対に逃さない」


「和馬だけは絶対に逃さない」


そんなことを思いながら、カナと春人はそれぞれの大切な人の元へ帰ったのであった。
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