【完結】お嬢様は納得できない!

かんな

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最終章 〜その後〜

二十九話 『想いと決意』

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鈴木春香は人気者だった。常に誰かに囲まれ、愛されていた。愛想だけが取り柄だと、自分ではそう思っている。


愛想ぐらいは持たないといけない。自分は何にも出来ない人間だから。自分はそれ以外価値がない。笑わなくてはいけない。


双子の弟の出来損ない……と言われても。双子なのに全然違う……と言われても。


自分が出来損ないのは事実だ。自分には価値など無い。自分の人生に意味などない。


そんな春香だが、父親だけは春香のことを溺愛してくれたから。最初の頃は縋り付いてた。
でも父親の愛は異常で歪だ、と気付いたとき、もう父親は信用出来なかった。



自分より優れた弟を産み落とした母親も憎かった。最も、母親は春香と春人を産んですぐ亡くなってしまったのだが。


何もかもに絶望し、笑顔を辞めてしまおうかと思った時もあった。だけど――。


「なら、俺がお前の助けになる」


淡々とそう言った幼馴染和馬の言葉。その言葉があったから、まだ笑っていられたのだ。


「私も春香のこと助けるよ。親友だし」 


当たり前かのようにそう言ってくれた親友奈緒。彼女の存在もまた大きかった。


二人がそう言ってくれたとき、泣きたくなった。そして同時に嬉しかった。
二人はこんな自分を好きだと言ってくれているんだと。そしていつの間にか幼馴染に好意を抱いた。


親友も応援してくれた。奈緒には感謝してもしきれないほど恩がある。だって応援してくれたし、隣にいてくれたから。


そして告白にも成功し、付き合うことになった。幸せだった。ずっとこの時間が続けばいいと思っていた。
しかし――。


「俺に近づくなよ。春香」


ギロリと弟はそう言って春香を避けた。何故、避けたのか。理由なんてわからない。ただ一つ言えることは、彼は自分のことが嫌いだということだ。


分からない。何故何故……何がいけなかったのか、分からない。彼の行動の意味が全く理解できなかった。
それでも、彼と話したくて。どうにかして近づこうとした。


けど、避けられて、話しかけようとしても無視されて……。
段々嫌になってきて、春香からも離れた。お互いの為に、そうした方がいいだろうと思って。


そんな春人にも婚約者がいる。
相手は石田家の長女――石田カナだった。初めて聞いた時は驚いた。まさかあの石田家の令嬢とは思ってもなかったから。


しかも彼女とは友達であり、仲が良い。彼女はとても優しい子だ。
だから春人とも上手くやっていけると思ったし、二人とも愛し合っているんだろうな……と、そう思っていた。


『私、松崎透さんと結婚します!』


そんな言葉を聞くまでは。初めは何かの冗談だと思った。パーティで正式に婚約発表をする筈だったのに、本来なら怒るはずの春人もノリノリで婚約破棄に賛成し出したから。


意味が分からなかった。思わず春人を追いかけて問い詰めたら、


『そもそも俺と石田さんは愛し合ってなどないし、婚約破棄については石田さんから申し出てきたことだし。俺は別に全然構わん。多分、石田さんが言わなかったら俺が言ってたかもしれないし』


……意味が分からなかった。二人は愛し合ってなどいなかった。勝手にそう思っていただけだったのだ。


そこからはあまり記憶にない。フラフラと家に帰って春人と話をしよう――!と思いながら、春人の部屋に行こうとしたら――。


「好きだ。和馬」


そう言って和馬にキスしようとしている最中だった。頭が真っ白になった。目の前で起こっていることが信じられなくて……そして、


「春人!私の和馬に手を出さないで!」


そう言ったのだけ覚えている。その後は父親が乱入して来たり、春人が和馬のことが好きだと伝えられたり、二人で鈴木家から家出して氷室家の居候になったり。


いろんな展開が目まぐるしく起こって、今どうなっているのかというと――。


「ね、ねぇ?もう三回目じゃん……!もう辞めよう……?」


「嫌だ。まだ足りない」



襲っていた。それはもう三人とも汗びっしょりになるくらいまで。春人と春香で和馬のことを溺愛しながら襲った。


側から正にレ◯プであるが、和馬だって途中からはこの行為に快楽を覚えていた。しかし、流石にこれ以上は体が持たない。死ぬ。


「まぁまぁ。春人。流石に三回目だしさ……」


「………そうか。なら、しょうがない」


そう言いながら春人はため息を吐く。春人も随分と素直になった。『好き』という感情を隠し、それを表に出さなかった彼は、もういない。


それがいい変化とも言えないし、この関係はどう見たって可笑しい。きっと他人が見たら、気持ち悪いと思われるかもしれない。


でも、それで良かった。不仲だった弟ともちゃんと話し合えたし、今では仲良く出来ているから。


「本当、カナちゃんには感謝だなぁ……」


今度、カナには何か奢ろう……と春香はそう思った。
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