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三章 〜それぞれの一日〜
十九話 『溢れ出す想い』
しおりを挟む今回の話はBL要素がたっぷりあります。苦手な方はご注意ください……!
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鈴木春人は全てを手に入れた男だった。文武両道、容姿端麗、そして金持ちで女からもモテた。
しかしそんな彼にも一つだけ、たった一つの悩みがあった。
それは春人の幼馴染みである、氷室和馬のことが好きということだ。きっかけなんて覚えてなどいない。ただ気づいたときにはもう好きになっていたのだ。
だがその気持ちは冬馬には届かない。何故なら和馬は春人の双子の姉である春香と付き合い始めたのだ。
辛かった。悲しかった。悔しかった。憎かった。羨ましかった。妬ましかった。
だが、それでも和馬のことが好きなのに変わりはなかったし、和馬を忘れようとたくさんの女を抱いた。
でも、忘れられなかった。むしろ想いが強くなった。故に――。
「ま、待って!待ってよ!春人!」
和馬が必死な顔で叫ぶこの状況が辛かった。放っておいてくれれば良かったのに。どうして和馬は――。
「……何で!何で俺を追いかけてくるんだよ!?放っておけよ!」
「放っておけるわけがないだろ!?親友なんだから!」
親友。そう、和馬にとって春人は親友でしかない。春人は和馬のことが好きで、愛していて、だからこそ辛いというのに。和馬は春人のことを親友としてしか見ていない。それが堪らなく悔しい。
「婚約破棄……本当にショックじゃなかったの?」
不意に問いかけられた言葉に春人は鼻で笑った。だって今辛いのも、苦しいのも、全部和馬が原因なのに。
「婚約破棄なんてショックでも何でもねぇ。石田カナは興味はあっても惚れたりはしてないし」
これは本音だった。石田カナという存在が興味のある存在ではあったものの、別に結婚したいとまでは思っていなかった。だから婚約破棄されたところで特に何も感じなかった。
「俺が好きなのも……俺が欲しいと思ってるのは――」
春人が恋したのは和馬だけだった。中学の頃から春人は氷室和馬が欲しかった。
「ほ、欲しいと思ってるのは?一体誰なの?」
和馬が恐る恐ると訊ねる。きっと自分が選ばれることは無いと思っているのだろう。
それが腹が立って、嫌になって、悔しくて、悲しくなって……もう嫌われるとか軽蔑されるとかそんな感情はもうどうでも良くなっていった。
「俺はさ、お前のことが好きだ」
「え……?俺も好きだけど」
サラリとそう言った和馬。しかし、和馬と春人ではその『好き』という意味が違うことは分かっている。
だから――、
グイッと腕を引っ張って強引に唇を奪った。今までしたどんなキスよりも甘くて、蕩けそうな感覚に襲われた。
「ちょっ!?何を――」
和馬が顔を真っ赤にして言う。そんな和馬が可愛いと思った。いろんな女を抱いてきた時でもこんな感情を抱くことはなかったのに。
だから何度も、何度も唇を重ね、舌を絡ませる。息継ぎをする暇すら与えない程に激しく絡ませた。
すると段々と和馬の身体から力が抜けていくのを感じた。
「(……やべっ……やり過ぎた……)」
やっと理性を取り戻したときには既に遅く、和馬は腰砕けになっていた。……春人は和馬を抱きかかえるようにして家に帰った。ベッドに寝かせた。
幸い、使用人もパーティの準備をして誰もいなかったし、誰にもバレることはなかった。
「……寝顔すらかわいい」
恋は盲目……ということわざがあるが、今の春人には正にそれだ。和馬を愛おしいと思う度に胸の奥底が熱くなっていく。
「時間が止まればいいのに……」
そう思いながら、春人は眠りについた。
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鈴木春人は全てを手に入れた男だった。文武両道、容姿端麗、そして金持ちで女からもモテた。
しかしそんな彼にも一つだけ、たった一つの悩みがあった。
それは春人の幼馴染みである、氷室和馬のことが好きということだ。きっかけなんて覚えてなどいない。ただ気づいたときにはもう好きになっていたのだ。
だがその気持ちは冬馬には届かない。何故なら和馬は春人の双子の姉である春香と付き合い始めたのだ。
辛かった。悲しかった。悔しかった。憎かった。羨ましかった。妬ましかった。
だが、それでも和馬のことが好きなのに変わりはなかったし、和馬を忘れようとたくさんの女を抱いた。
でも、忘れられなかった。むしろ想いが強くなった。故に――。
「ま、待って!待ってよ!春人!」
和馬が必死な顔で叫ぶこの状況が辛かった。放っておいてくれれば良かったのに。どうして和馬は――。
「……何で!何で俺を追いかけてくるんだよ!?放っておけよ!」
「放っておけるわけがないだろ!?親友なんだから!」
親友。そう、和馬にとって春人は親友でしかない。春人は和馬のことが好きで、愛していて、だからこそ辛いというのに。和馬は春人のことを親友としてしか見ていない。それが堪らなく悔しい。
「婚約破棄……本当にショックじゃなかったの?」
不意に問いかけられた言葉に春人は鼻で笑った。だって今辛いのも、苦しいのも、全部和馬が原因なのに。
「婚約破棄なんてショックでも何でもねぇ。石田カナは興味はあっても惚れたりはしてないし」
これは本音だった。石田カナという存在が興味のある存在ではあったものの、別に結婚したいとまでは思っていなかった。だから婚約破棄されたところで特に何も感じなかった。
「俺が好きなのも……俺が欲しいと思ってるのは――」
春人が恋したのは和馬だけだった。中学の頃から春人は氷室和馬が欲しかった。
「ほ、欲しいと思ってるのは?一体誰なの?」
和馬が恐る恐ると訊ねる。きっと自分が選ばれることは無いと思っているのだろう。
それが腹が立って、嫌になって、悔しくて、悲しくなって……もう嫌われるとか軽蔑されるとかそんな感情はもうどうでも良くなっていった。
「俺はさ、お前のことが好きだ」
「え……?俺も好きだけど」
サラリとそう言った和馬。しかし、和馬と春人ではその『好き』という意味が違うことは分かっている。
だから――、
グイッと腕を引っ張って強引に唇を奪った。今までしたどんなキスよりも甘くて、蕩けそうな感覚に襲われた。
「ちょっ!?何を――」
和馬が顔を真っ赤にして言う。そんな和馬が可愛いと思った。いろんな女を抱いてきた時でもこんな感情を抱くことはなかったのに。
だから何度も、何度も唇を重ね、舌を絡ませる。息継ぎをする暇すら与えない程に激しく絡ませた。
すると段々と和馬の身体から力が抜けていくのを感じた。
「(……やべっ……やり過ぎた……)」
やっと理性を取り戻したときには既に遅く、和馬は腰砕けになっていた。……春人は和馬を抱きかかえるようにして家に帰った。ベッドに寝かせた。
幸い、使用人もパーティの準備をして誰もいなかったし、誰にもバレることはなかった。
「……寝顔すらかわいい」
恋は盲目……ということわざがあるが、今の春人には正にそれだ。和馬を愛おしいと思う度に胸の奥底が熱くなっていく。
「時間が止まればいいのに……」
そう思いながら、春人は眠りについた。
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