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三章 〜それぞれの一日〜
十八話 『成宮茜は分からない』
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成宮茜は困惑していた。ただ、パーティ会場で立ち尽くすことしか出来ず、頭の中では先程の出来事がぐるぐると回っていた。
本来ならカナは春人と婚約者となり、今頃は拍手喝采の祝福を受けていた筈なのだ。だが、実際は春人とカナは婚約破棄をしてそのままカナは透と婚約した。
「……どうして」
成宮茜には分からない。何故カナが婚約を破棄して透を選んだのか。そして、春人の真意が分からなかった。
カナと春人は自分の教え子であり、大切な生徒だと思っていた。だからこそ、カナが婚約を破棄すると聞いてショックを受けたし、何とか説得して考え直して欲しいとも思った。
しかし、春人すらその婚約破棄を受け入れ、カナも透との婚約を発表した。その事実が茜の胸を張り巡らせていた。
その時、会場に居た一人の男が近付いて来た。
「茜様……」
「こ、光輝くん……」
そこには光輝の姿があった。
光輝は茜の元までやって来ると深々と頭を下げた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「たいへん申し訳ございません!お嬢様のこと、止められませんでした……!」
「そ!そんな、謝らなくても……!」
今回のことは光輝は無関係だと茜は思っているし、何よりあの状況でカナを止めるのも至難の業だろうと思った。
それでも、光輝は顔を上げようとしなかった。
「謝りますよ!だって茜様……透様のこと好きなんでしょう?」
「えっ!?な、なんでそれを……」
光輝の言葉に思わず動揺してしまう。確かに透への気持ちがある。
それは自分でも気付いていた。
でも、今まではそれを表に出さぬようにしてきたつもりだ。
「何でって……そんなの、茜様を見てたら分かりますよ。茜様がいつも透様を見てることぐらい……」
光輝からそう言われてしまうともう何も言えなかった。
自分の態度は傍から見たらバレバレだったらしい。
そう思うと恥ずかしくなってきた。
「でも、そんな透様も今じゃお嬢様の婚約者になってしまわれました……周りが肯定するかはともかく……茜様はどうなさるつもりなんですか。このままずっと黙ったままなんですか?それとも……行動に移すんですか?」
「わ、私は……」
分からない。これは失恋と言っていいのか自分が何をすべきなのか、何をしたいのか。全く分からなくなっていた。
「……茜様はどうしたいんですか?透様と恋仲になりたく無いんですか!?」
「へ!?」
突然の言葉に思わず素っ頓狂な声を出してしまったが、光輝は構わずこう言った。
「お嬢様も幸せになってほしいですが貴方にも幸せになってほしい。だから……お願いします」
深く頭を下げられてしまった。光輝としては本当に本心で言っているんだろうと思う。故に――。
「わ、分かったわ……!私二人のところに……!」
「よろしくお願いします。茜様。二人はお嬢様の家に行かれました」
そんな光輝の言葉を聞きながら茜は駆け出した。
本来ならカナは春人と婚約者となり、今頃は拍手喝采の祝福を受けていた筈なのだ。だが、実際は春人とカナは婚約破棄をしてそのままカナは透と婚約した。
「……どうして」
成宮茜には分からない。何故カナが婚約を破棄して透を選んだのか。そして、春人の真意が分からなかった。
カナと春人は自分の教え子であり、大切な生徒だと思っていた。だからこそ、カナが婚約を破棄すると聞いてショックを受けたし、何とか説得して考え直して欲しいとも思った。
しかし、春人すらその婚約破棄を受け入れ、カナも透との婚約を発表した。その事実が茜の胸を張り巡らせていた。
その時、会場に居た一人の男が近付いて来た。
「茜様……」
「こ、光輝くん……」
そこには光輝の姿があった。
光輝は茜の元までやって来ると深々と頭を下げた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「たいへん申し訳ございません!お嬢様のこと、止められませんでした……!」
「そ!そんな、謝らなくても……!」
今回のことは光輝は無関係だと茜は思っているし、何よりあの状況でカナを止めるのも至難の業だろうと思った。
それでも、光輝は顔を上げようとしなかった。
「謝りますよ!だって茜様……透様のこと好きなんでしょう?」
「えっ!?な、なんでそれを……」
光輝の言葉に思わず動揺してしまう。確かに透への気持ちがある。
それは自分でも気付いていた。
でも、今まではそれを表に出さぬようにしてきたつもりだ。
「何でって……そんなの、茜様を見てたら分かりますよ。茜様がいつも透様を見てることぐらい……」
光輝からそう言われてしまうともう何も言えなかった。
自分の態度は傍から見たらバレバレだったらしい。
そう思うと恥ずかしくなってきた。
「でも、そんな透様も今じゃお嬢様の婚約者になってしまわれました……周りが肯定するかはともかく……茜様はどうなさるつもりなんですか。このままずっと黙ったままなんですか?それとも……行動に移すんですか?」
「わ、私は……」
分からない。これは失恋と言っていいのか自分が何をすべきなのか、何をしたいのか。全く分からなくなっていた。
「……茜様はどうしたいんですか?透様と恋仲になりたく無いんですか!?」
「へ!?」
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「お嬢様も幸せになってほしいですが貴方にも幸せになってほしい。だから……お願いします」
深く頭を下げられてしまった。光輝としては本当に本心で言っているんだろうと思う。故に――。
「わ、分かったわ……!私二人のところに……!」
「よろしくお願いします。茜様。二人はお嬢様の家に行かれました」
そんな光輝の言葉を聞きながら茜は駆け出した。
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