16 / 34
三章 〜それぞれの一日〜
十六話 『パーティ』
しおりを挟む
パーティ当日になった。この日のパーティの目的は婚約者の正式発表の日だった。本来なら日にちは早くなる予定だったのだがトラブルが発生してしまい今日になったという訳だ。
「カナ」
「お兄ちゃん!」
愛おしい声が聞こえてくる。あの日以来一度も会えず、電話すらできなかった相手だ。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「うん!もちろん!お兄ちゃんこそ大丈夫?」
「ああ。問題はないよ」
久しぶりに会った透の姿は少し痩せていたように見えた。何かあったのか心配だが聞かない方がいいだろうか?
「ねぇ、お兄ちゃん、私……ね……」
そう言いかけた時だった。
「やぁ、透君。来てくれたんだね」
「あ、はい。本日はお招きいただきありがとうございます」
カナの父親が乱入してきたのだ。思わぬ邪魔者だ。表情は崩れなかったものの、内心はかなりイラついていたし、早くどっかにいけ、と念じていた。
だがその願いも虚しく、カナの父親はまだ話を続ける。
今すぐここから出て行きたい衝動に駆られる。だがそれはできない。
何故なら隣に透があるし、好きな人と少しでも近くに居たいという気持ちがあったからだ。
そんな事を考えながら話を聞いていた時だ。
「カナちゃん!」
「カナちゃん!お招きありがとー!」
「あ、うん。来てもらって嬉しいわ」
現れたのはカナの友達である春香と奈緒だった。2人はいつも通り仲が良く、楽しげな雰囲気だ。思わず透と離れ、二人のそばへと行ってしまった。
でも、しょうがない。カナにとって透と同じく春香と奈緒も大切な人だから。後、父親とも離れたかったという気持ちも少しはある。
「にしてもカナちゃんがあの春人と婚約するだなんて……びっくりしたよ~」
「本当に。カナちゃん、あいつがなんかしたら私に言って!私が懲らしめに行くからさ!」
奈緒と春香が同時に言う。その言葉にカナは若干、複雑な気持ちと懐かしさが混ざったような感情を覚えた。そしてふっと思ったことは――。
「あれ……茜先生いる……」
「あ、本当だー!相変わらず綺麗だよねー!流石大人って感じ」
どうして、ここにいる……と、カナの気持ちは穏やかではなくなった。透を取られたくないという気持ちが強く湧き上がってくる。
カナにとって茜とはただの教師ではない。ライバル的な存在だ。
恐らく……とゆうか間違いなく、茜はカナのことをライバルとは認識していないだろうが……とにかくカナにとって彼女は恋敵なのだ。
例え、本人がそう認識していなくとも。
カナにとってはこのパーティは透との再会の場であると同時に茜と透の接触の場でもある。
「あ、石田さん」
「あ、ひ、氷室くんにす……は、春人くん」
やってきたのは和馬と春人だった。2人っきりの時間が終わったからか春人は不満そうな顔をしているように見える。
「この前はごめんね。俺が驚かせちゃって……」
「い、いえ。私が動揺しすぎたのがいけないんです。こちらこそすみません」
「いや、俺の方が……」
「何々~?何の話??」
2人が会話をしているところに春香が不満そうに和馬の腕に抱きつくようにして割り込んで来た。しかも今回のドレスは胸元が大きく開いていて谷間が見える。
和馬の表情が少しだけ変わったことにカナは気づいた。
「(……うわ……絶対氷室くん春香ちゃんのこと好きだわ……)」
付き合っているのだから当たり前と言えば当たり前だが……チラッとカナは春人を見る。春人が黒い笑みを浮かべながら、
「あの件は和馬が心配せずとも俺の方から誤解は解いておいたから。安心してくれ。後、春香はいつまで和馬の腕にくっついてるつもりなんだ?離れろよ」
「ええ~……分かったわよぉ」
渋々と言った様子で春香は和馬から離れた。しかし、それでもまだ未練があるのかちらっと和馬を見てすぐに視線を逸らしていた。
「カナ」
「お兄ちゃん!」
愛おしい声が聞こえてくる。あの日以来一度も会えず、電話すらできなかった相手だ。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「うん!もちろん!お兄ちゃんこそ大丈夫?」
「ああ。問題はないよ」
久しぶりに会った透の姿は少し痩せていたように見えた。何かあったのか心配だが聞かない方がいいだろうか?
「ねぇ、お兄ちゃん、私……ね……」
そう言いかけた時だった。
「やぁ、透君。来てくれたんだね」
「あ、はい。本日はお招きいただきありがとうございます」
カナの父親が乱入してきたのだ。思わぬ邪魔者だ。表情は崩れなかったものの、内心はかなりイラついていたし、早くどっかにいけ、と念じていた。
だがその願いも虚しく、カナの父親はまだ話を続ける。
今すぐここから出て行きたい衝動に駆られる。だがそれはできない。
何故なら隣に透があるし、好きな人と少しでも近くに居たいという気持ちがあったからだ。
そんな事を考えながら話を聞いていた時だ。
「カナちゃん!」
「カナちゃん!お招きありがとー!」
「あ、うん。来てもらって嬉しいわ」
現れたのはカナの友達である春香と奈緒だった。2人はいつも通り仲が良く、楽しげな雰囲気だ。思わず透と離れ、二人のそばへと行ってしまった。
でも、しょうがない。カナにとって透と同じく春香と奈緒も大切な人だから。後、父親とも離れたかったという気持ちも少しはある。
「にしてもカナちゃんがあの春人と婚約するだなんて……びっくりしたよ~」
「本当に。カナちゃん、あいつがなんかしたら私に言って!私が懲らしめに行くからさ!」
奈緒と春香が同時に言う。その言葉にカナは若干、複雑な気持ちと懐かしさが混ざったような感情を覚えた。そしてふっと思ったことは――。
「あれ……茜先生いる……」
「あ、本当だー!相変わらず綺麗だよねー!流石大人って感じ」
どうして、ここにいる……と、カナの気持ちは穏やかではなくなった。透を取られたくないという気持ちが強く湧き上がってくる。
カナにとって茜とはただの教師ではない。ライバル的な存在だ。
恐らく……とゆうか間違いなく、茜はカナのことをライバルとは認識していないだろうが……とにかくカナにとって彼女は恋敵なのだ。
例え、本人がそう認識していなくとも。
カナにとってはこのパーティは透との再会の場であると同時に茜と透の接触の場でもある。
「あ、石田さん」
「あ、ひ、氷室くんにす……は、春人くん」
やってきたのは和馬と春人だった。2人っきりの時間が終わったからか春人は不満そうな顔をしているように見える。
「この前はごめんね。俺が驚かせちゃって……」
「い、いえ。私が動揺しすぎたのがいけないんです。こちらこそすみません」
「いや、俺の方が……」
「何々~?何の話??」
2人が会話をしているところに春香が不満そうに和馬の腕に抱きつくようにして割り込んで来た。しかも今回のドレスは胸元が大きく開いていて谷間が見える。
和馬の表情が少しだけ変わったことにカナは気づいた。
「(……うわ……絶対氷室くん春香ちゃんのこと好きだわ……)」
付き合っているのだから当たり前と言えば当たり前だが……チラッとカナは春人を見る。春人が黒い笑みを浮かべながら、
「あの件は和馬が心配せずとも俺の方から誤解は解いておいたから。安心してくれ。後、春香はいつまで和馬の腕にくっついてるつもりなんだ?離れろよ」
「ええ~……分かったわよぉ」
渋々と言った様子で春香は和馬から離れた。しかし、それでもまだ未練があるのかちらっと和馬を見てすぐに視線を逸らしていた。
1
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
いつの間にかの王太子妃候補
しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。
遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。
王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。
「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」
話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。
話せるだけで十分幸せだった。
それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。
あれ?
わたくしが王太子妃候補?
婚約者は?
こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*)
アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。
短編です、ハピエンです(強調)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる