15 / 34
二章 〜婚約者の本性〜
十五話 『愚痴話』
しおりを挟む
あの、衝撃的な告白から三日が経った。
前まではうざったくて女好きだと思っていた春人が男が好きな上に、相手が彼女持ちだと言うことを知って同情してしまった。
しかも相手は双子の姉だ。近くでイチャイチャしているのを見ているのは辛いだろう。身内のイチャイチャとか1番見たくないのに。
「(……そう思うと何かかわいいかも)」
春人の意外な一面を見てカナはほんわかとした気持ちになっていたし、あれもこれも全部和馬という男を忘れるためにしていることだと思うと愛しささえ覚えてきた。
「……性格悪いわ、あんた」
まぁ、そのことを本人に伝えたらこう言われてしまったわけだが。カナ自身も性格が悪いことは自覚しているが、春人には言われたくはない。
「あんたも性格が悪いからお互い様よ。……それよりもさ、今回のパーティー春香ちゃんも来るらしいじゃない!」
今までこういったパーティーには不参加だった春香が何故か今回のパーティーに参加することになったのだ。噂では父親が参加させないようにしていたとか。
「ああ、そうさ。親父は過保護だからな。春香にだけ特別扱いさ」
「……特別扱い……?春香ちゃんにだけ高いものを買ってくるとか?それとも……」
「それもあるけど……まぁ、春香が羨ましいと思った時期は少しだけあるけど、電話を断られたぐらいでヘリコプターで学校に乗り込んでくるような馬鹿な父親に特別扱い……というか、執着されたくはないから逆に今は春香には感謝してるよ。父親の部分だけは。和馬とはささっと別れろって思ってるけど」
「……へ、ヘリコプターって…春香ちゃんブチギレだったんじゃないの?」
「ああ、ブチギレてた。あの日以来、部下が親父抑えてるらしいけど」
「……うわ……っ。引くわ……」
春人と春香の父親――ハンサムでカッコいい、と思っていたのにこんなところでイメージが崩れてしまうなんて……。
「俺も引いた。だからあの時は心の底から安心したよ。ああ、執着されなくて良かったーってね!」
「……そ、そう……」
確かにカナも思ってしまいそうだ。ヘリコプターで学校に乗り込んできて娘に会いに来るとか怖い以外の何者でもないし、恥ずかしさしかないだろう。
「にしてもさー、お前はいいの?透だっけ?そいつに恋心抱いてるんだろ?透って奴はうちの担任の茜先生に恋心を向けてるみたいって言ってたけど」
「え?ええ、そうね。私は絶対に振り向かせてみせるわ!だって十年間も片思いしてたのよ?今更諦められるわけがないじゃない!」
「……ふーん。俺は十年間じゃなくて三年前だから年季が違うな」
「…三年前なんだ。つまり、中二から……?」
「うん。まあ、そんな感じかな。いやー、懐かしいなぁ」
恋をして、恋人になって結婚して、そして家族になる。男同士だと子供ができないが、それでも一生一緒にいるのならそれが一番幸せだと思う。
それに子供ができなくても幸せな家庭を築く方法はいくらでもあるはずだ。
「でも、あんたが好きな人は……彼女がいる上に双子の姉。……辛かったでしょうね?」
「そうだな。だからささっと別れてくれなきゃ俺はいつまでも春香と……」
「………」
気持ちはカナにもわかる。ボロが出てくるぐらいなら。離れて嫌っているふりをする方がずっと楽だし、傷つかない方法かもしれない。
「そうね。私も茜先生のこと嫌いだから。……先生としては尊敬してるけど」
「ふーん。ま、恋敵なんだから当然だよな。……あ、そろそろ寝るか。明日、パーティとかいう面倒くさいことしねーといけねーし。しかも春香と和馬まで来るし……」
「どんまい。でも、春香ちゃんのこと溺愛してる父親がいるんだから氷室君、近づけないんじゃ?」
「……言われてみればそうかもしれねーな」
……春人はそう言つつ、自分の部屋へと帰っていった。
前まではうざったくて女好きだと思っていた春人が男が好きな上に、相手が彼女持ちだと言うことを知って同情してしまった。
しかも相手は双子の姉だ。近くでイチャイチャしているのを見ているのは辛いだろう。身内のイチャイチャとか1番見たくないのに。
「(……そう思うと何かかわいいかも)」
春人の意外な一面を見てカナはほんわかとした気持ちになっていたし、あれもこれも全部和馬という男を忘れるためにしていることだと思うと愛しささえ覚えてきた。
「……性格悪いわ、あんた」
まぁ、そのことを本人に伝えたらこう言われてしまったわけだが。カナ自身も性格が悪いことは自覚しているが、春人には言われたくはない。
「あんたも性格が悪いからお互い様よ。……それよりもさ、今回のパーティー春香ちゃんも来るらしいじゃない!」
今までこういったパーティーには不参加だった春香が何故か今回のパーティーに参加することになったのだ。噂では父親が参加させないようにしていたとか。
「ああ、そうさ。親父は過保護だからな。春香にだけ特別扱いさ」
「……特別扱い……?春香ちゃんにだけ高いものを買ってくるとか?それとも……」
「それもあるけど……まぁ、春香が羨ましいと思った時期は少しだけあるけど、電話を断られたぐらいでヘリコプターで学校に乗り込んでくるような馬鹿な父親に特別扱い……というか、執着されたくはないから逆に今は春香には感謝してるよ。父親の部分だけは。和馬とはささっと別れろって思ってるけど」
「……へ、ヘリコプターって…春香ちゃんブチギレだったんじゃないの?」
「ああ、ブチギレてた。あの日以来、部下が親父抑えてるらしいけど」
「……うわ……っ。引くわ……」
春人と春香の父親――ハンサムでカッコいい、と思っていたのにこんなところでイメージが崩れてしまうなんて……。
「俺も引いた。だからあの時は心の底から安心したよ。ああ、執着されなくて良かったーってね!」
「……そ、そう……」
確かにカナも思ってしまいそうだ。ヘリコプターで学校に乗り込んできて娘に会いに来るとか怖い以外の何者でもないし、恥ずかしさしかないだろう。
「にしてもさー、お前はいいの?透だっけ?そいつに恋心抱いてるんだろ?透って奴はうちの担任の茜先生に恋心を向けてるみたいって言ってたけど」
「え?ええ、そうね。私は絶対に振り向かせてみせるわ!だって十年間も片思いしてたのよ?今更諦められるわけがないじゃない!」
「……ふーん。俺は十年間じゃなくて三年前だから年季が違うな」
「…三年前なんだ。つまり、中二から……?」
「うん。まあ、そんな感じかな。いやー、懐かしいなぁ」
恋をして、恋人になって結婚して、そして家族になる。男同士だと子供ができないが、それでも一生一緒にいるのならそれが一番幸せだと思う。
それに子供ができなくても幸せな家庭を築く方法はいくらでもあるはずだ。
「でも、あんたが好きな人は……彼女がいる上に双子の姉。……辛かったでしょうね?」
「そうだな。だからささっと別れてくれなきゃ俺はいつまでも春香と……」
「………」
気持ちはカナにもわかる。ボロが出てくるぐらいなら。離れて嫌っているふりをする方がずっと楽だし、傷つかない方法かもしれない。
「そうね。私も茜先生のこと嫌いだから。……先生としては尊敬してるけど」
「ふーん。ま、恋敵なんだから当然だよな。……あ、そろそろ寝るか。明日、パーティとかいう面倒くさいことしねーといけねーし。しかも春香と和馬まで来るし……」
「どんまい。でも、春香ちゃんのこと溺愛してる父親がいるんだから氷室君、近づけないんじゃ?」
「……言われてみればそうかもしれねーな」
……春人はそう言つつ、自分の部屋へと帰っていった。
2
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
悠久のクシナダヒメ 「日本最古の異世界物語」 第一部
Hiroko
ファンタジー
異世界に行けると噂の踏切。
僕と友人の美津子が行きついた世界は、八岐大蛇(やまたのおろち)が退治されずに生き残る、奈良時代の日本だった。
現在と過去、現実と神話の世界が入り混じる和の異世界へ。
流行りの異世界物を私も書いてみよう!
と言うことで書き始めましたが、どうしようかなあ。
まだ書き始めたばかりで、この先どうなるかわかりません。
私が書くと、どうしてもホラーっぽくなっちゃうんですよね。
なんとかなりませんか?
題名とかいろいろ模索中です。
なかなかしっくりした題名を思いつきません。
気分次第でやめちゃうかもです。
その時はごめんなさい。
更新、不定期です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる