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二章 〜婚約者の本性〜
十四話 『複雑な三角関係』
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「そろそろ、機嫌直してくれよ」
「………いやよ」
ギロリと睨みつけて、カナは春人を追い出そうとする。しかし、春人はきっぱりとこう言った。
「和馬はいい奴だよ」
それにカナは驚きを隠せられなかった。何せ――
「……あんたがこんなこと言うなんて珍しいわね」
三ヶ月程一緒に住んではいるが、ここまで春人がキッパリとそう言い切ったのは多分初めてだ。
そんなカナに春人は苦笑しながら答える。
「…ああ、俺もそう思う。でも、こんなこと和馬以外なら言わない」
「……大切な人ってこと?」
何気なく、言った言葉なのに何故か春人の顔が赤く染まる。何故顔が赤く染まったのか。それはわからない。
だけど、春人が動揺しているということはわかった。
「………うん、大切な奴。春香なんかに渡したくないぐらいには」
「え……?」
冗談で言っているわけではないというのは表情が物語っていた。つまり、だ。
「(……こいつ、氷室くんのことが好きってこと?)」
別に同性愛を否定するつもりはないし、カナもそういうのには理解はある方だと思う。
ただ、まさか春人がそうだとは思ってなくて驚いただけなのだ。だから、なのだろうか。
「好きなの?その……恋愛的な意味で」
思わずそんなことを聞いてしまったのは。
「……うん、そうだよ。だから俺はあいつの隣にいたいし守りたいと思うんだ」
「………ふーん。別にいいけどさ。私、男同士とか偏見はないから」
「男同士、というか和馬じゃなきゃ嫌なんだ」
恥ずかしげもなく言い切る春人をみてカナは心底驚いていた。今までそんな素振りを見せなかったからだ。知らなかった。
鈴木春人という人間は女を取っ替え引っ替えして遊んでいるという噂……というかそんな現場を毎回のように目撃していたのだ。
それがまさか同性を好きになる人間だとは夢にも思わなかった。
「一途……ではないかもな。まぁ、今は和馬が好きなだけでこれからどうなるかわかんねぇし」
「へぇ……」
そうは言ってもそう言った春人の顔は赤く、どう見たって相手にベタ惚れと言った感じだ。
そんな春人の一面に驚きつつ、フッとカナは疑問に思ったことを春人に向かってこう言った。
「そういや、先春香ちゃんの名前出たけど……あの二人付き合ってるの?」
春香というのは春人の双子の姉のことだ。最初は似ていると思っていたが今では全く似ていない……とそう思っている。主な原因は性格なんだけど。
「ああ。そうさ。だから大嫌いなんだよ。春香は」
吐き捨てるように言う春人にカナは何とも言えない気持ちになったが、恋とはそう言うものだと身をもって実感しているので何も言えなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「(……何で俺、こんな奴に自分の恋愛事情ペラペラと喋っちまってんだろう)」
普段なら絶対に話さないことだ。しかも異性になんて。
だが、不思議とカナには話してしまっていた。
どうしてなのか自分にもわからない。ただ、誰かに言いたい気分だったのかもしれない。
何故自分はこの少女に打ち明けたのか。もしかしたら明日学校で言いふらし、自分を笑いものにするかもしれないのに。
「ま、このことは誰にも言わないから安心しなさい。鈴木春人。相手が男でしかも彼女持ちだなんてもはや失恋みたいなものだけど、安心しなさい」
どこに安心する要素があるのだろうか。そもそも、失恋みたいものというのは自分自身が分かっているし、別に気にしていない。
しかし、何故かカナの言葉はストンと心に入ってきた。……少しだけ嬉しかったのだ。こんな自分の話を真剣に聞いてくれたことが。
いつも、他人からはこんな話をしたことがない。またあの時みたいに――。
『気持ち悪りぃ。男が好きとか頭大丈夫か?お前』
『オカマじゃん。春人!受けるわー!』
黒歴史を思い出して頭が痛くなる。もう二度とあんな思いはごめんだ。
そう言われるんじゃないかと思うと怖くて、話すことができなかった。
でも、カナは違う。そんなことを言わないし、軽蔑の目を向けることもない。
「……まぁ、ありがとうな」
素直にお礼を言った自分に驚く。どうも和馬関連のことは妙に素直になれる。これも恋の力というものだろうか。
「え!?あ、うん。ど、どういたしまして……」
驚くカナを見ながら春人はため息を吐いた。
「………いやよ」
ギロリと睨みつけて、カナは春人を追い出そうとする。しかし、春人はきっぱりとこう言った。
「和馬はいい奴だよ」
それにカナは驚きを隠せられなかった。何せ――
「……あんたがこんなこと言うなんて珍しいわね」
三ヶ月程一緒に住んではいるが、ここまで春人がキッパリとそう言い切ったのは多分初めてだ。
そんなカナに春人は苦笑しながら答える。
「…ああ、俺もそう思う。でも、こんなこと和馬以外なら言わない」
「……大切な人ってこと?」
何気なく、言った言葉なのに何故か春人の顔が赤く染まる。何故顔が赤く染まったのか。それはわからない。
だけど、春人が動揺しているということはわかった。
「………うん、大切な奴。春香なんかに渡したくないぐらいには」
「え……?」
冗談で言っているわけではないというのは表情が物語っていた。つまり、だ。
「(……こいつ、氷室くんのことが好きってこと?)」
別に同性愛を否定するつもりはないし、カナもそういうのには理解はある方だと思う。
ただ、まさか春人がそうだとは思ってなくて驚いただけなのだ。だから、なのだろうか。
「好きなの?その……恋愛的な意味で」
思わずそんなことを聞いてしまったのは。
「……うん、そうだよ。だから俺はあいつの隣にいたいし守りたいと思うんだ」
「………ふーん。別にいいけどさ。私、男同士とか偏見はないから」
「男同士、というか和馬じゃなきゃ嫌なんだ」
恥ずかしげもなく言い切る春人をみてカナは心底驚いていた。今までそんな素振りを見せなかったからだ。知らなかった。
鈴木春人という人間は女を取っ替え引っ替えして遊んでいるという噂……というかそんな現場を毎回のように目撃していたのだ。
それがまさか同性を好きになる人間だとは夢にも思わなかった。
「一途……ではないかもな。まぁ、今は和馬が好きなだけでこれからどうなるかわかんねぇし」
「へぇ……」
そうは言ってもそう言った春人の顔は赤く、どう見たって相手にベタ惚れと言った感じだ。
そんな春人の一面に驚きつつ、フッとカナは疑問に思ったことを春人に向かってこう言った。
「そういや、先春香ちゃんの名前出たけど……あの二人付き合ってるの?」
春香というのは春人の双子の姉のことだ。最初は似ていると思っていたが今では全く似ていない……とそう思っている。主な原因は性格なんだけど。
「ああ。そうさ。だから大嫌いなんだよ。春香は」
吐き捨てるように言う春人にカナは何とも言えない気持ちになったが、恋とはそう言うものだと身をもって実感しているので何も言えなかった。
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「(……何で俺、こんな奴に自分の恋愛事情ペラペラと喋っちまってんだろう)」
普段なら絶対に話さないことだ。しかも異性になんて。
だが、不思議とカナには話してしまっていた。
どうしてなのか自分にもわからない。ただ、誰かに言いたい気分だったのかもしれない。
何故自分はこの少女に打ち明けたのか。もしかしたら明日学校で言いふらし、自分を笑いものにするかもしれないのに。
「ま、このことは誰にも言わないから安心しなさい。鈴木春人。相手が男でしかも彼女持ちだなんてもはや失恋みたいなものだけど、安心しなさい」
どこに安心する要素があるのだろうか。そもそも、失恋みたいものというのは自分自身が分かっているし、別に気にしていない。
しかし、何故かカナの言葉はストンと心に入ってきた。……少しだけ嬉しかったのだ。こんな自分の話を真剣に聞いてくれたことが。
いつも、他人からはこんな話をしたことがない。またあの時みたいに――。
『気持ち悪りぃ。男が好きとか頭大丈夫か?お前』
『オカマじゃん。春人!受けるわー!』
黒歴史を思い出して頭が痛くなる。もう二度とあんな思いはごめんだ。
そう言われるんじゃないかと思うと怖くて、話すことができなかった。
でも、カナは違う。そんなことを言わないし、軽蔑の目を向けることもない。
「……まぁ、ありがとうな」
素直にお礼を言った自分に驚く。どうも和馬関連のことは妙に素直になれる。これも恋の力というものだろうか。
「え!?あ、うん。ど、どういたしまして……」
驚くカナを見ながら春人はため息を吐いた。
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