13 / 34
二章 〜婚約者の本性〜
十三話 『複雑な恋模様』
しおりを挟む
あの日から数ヶ月が経った。その間カナも春人もお互い無関心で生活をしていた。
春人が浮気をしていようが無視し、逆に春人もカナの行動には口出しせず、二人は何事もなかったかのように日々を過ごしていた。
初めは目の前で行われていた羞恥プレイも部屋を変えてもらい、カナはやっと安心感を取り戻した。そしてその間に透にもこの前のことを謝罪し、許してもらっていた。透に謝った時、彼は何も言わず、ただ少し悲しげな顔で「そうか」とだけ言った。
どうしてそんな顔をしたのか。そんなのカナには分かっている。分かった上で無視し、知らない振りをしているのだ。
カナは自分が嫌になる。あんなことがあってもまだ自分の気持ちに整理をつけられないなんて。
でも、しょうがないじゃないか。簡単には失恋なんて受け入れられないんだから。十年間も思った相手だ。そんな相手に好きな人がいると言われてもすぐに諦められるはずが無い。
でも、もう忘れないといけない。いつまでも未練を引き摺っていては駄目なんだ。それは分かっている。それは分かっている、のに。
「はぁ……」
ため息を吐きながら、家の扉を開けようとすると、
「あれ?もしかして石田さん?どうしたの?そんなところで」
「え……?」
振り返ると、そこには、男の人が立っていた。思わず身体がビクリと震える。何故、この人私の名前を知っているのだろうと、そう思ったけどうまく思考がまとまらない。そんな葛藤をしていると、男の人は……
「あ!ごめん!俺の名前は氷室和馬」
申し訳なさそうに和馬と名乗ったた少年はそう言った。
「…氷室くん……どうして……私の名前を……それに……」
ここは春人の家だ。あれ以来半分監禁状態でここ春人の家にいる。
「あー、うん。春人に用があって……あ、それと石田さんの名前を知っていたのは春人と春香から聞いたんだよ」
そう言って彼は笑う。笑うけども、その笑みが怖くて。思わず視線を逸らす。視線を逸らしたその先にあったのはーー
「和馬?」
「あ、春人。丁度いいところに。お前に用があって……」
そう言って和馬は春人に近づく。でも、カナはそれが怖くて逃げた。遠くから二人の声が聞こえてくるがそんなことはお構いなく逃げたのだった。
春人が浮気をしていようが無視し、逆に春人もカナの行動には口出しせず、二人は何事もなかったかのように日々を過ごしていた。
初めは目の前で行われていた羞恥プレイも部屋を変えてもらい、カナはやっと安心感を取り戻した。そしてその間に透にもこの前のことを謝罪し、許してもらっていた。透に謝った時、彼は何も言わず、ただ少し悲しげな顔で「そうか」とだけ言った。
どうしてそんな顔をしたのか。そんなのカナには分かっている。分かった上で無視し、知らない振りをしているのだ。
カナは自分が嫌になる。あんなことがあってもまだ自分の気持ちに整理をつけられないなんて。
でも、しょうがないじゃないか。簡単には失恋なんて受け入れられないんだから。十年間も思った相手だ。そんな相手に好きな人がいると言われてもすぐに諦められるはずが無い。
でも、もう忘れないといけない。いつまでも未練を引き摺っていては駄目なんだ。それは分かっている。それは分かっている、のに。
「はぁ……」
ため息を吐きながら、家の扉を開けようとすると、
「あれ?もしかして石田さん?どうしたの?そんなところで」
「え……?」
振り返ると、そこには、男の人が立っていた。思わず身体がビクリと震える。何故、この人私の名前を知っているのだろうと、そう思ったけどうまく思考がまとまらない。そんな葛藤をしていると、男の人は……
「あ!ごめん!俺の名前は氷室和馬」
申し訳なさそうに和馬と名乗ったた少年はそう言った。
「…氷室くん……どうして……私の名前を……それに……」
ここは春人の家だ。あれ以来半分監禁状態でここ春人の家にいる。
「あー、うん。春人に用があって……あ、それと石田さんの名前を知っていたのは春人と春香から聞いたんだよ」
そう言って彼は笑う。笑うけども、その笑みが怖くて。思わず視線を逸らす。視線を逸らしたその先にあったのはーー
「和馬?」
「あ、春人。丁度いいところに。お前に用があって……」
そう言って和馬は春人に近づく。でも、カナはそれが怖くて逃げた。遠くから二人の声が聞こえてくるがそんなことはお構いなく逃げたのだった。
1
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる