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二章 〜婚約者の本性〜

十二話 『本性』

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「……愛してるよ」


あれから……春人は毎週部屋に違う女を連れ込んでいた。初めはどんな羞恥プレイをしているんだ、とも思った。


だって、春人と女はカナが目の前にいるのに平然とやっていた。初めは出ようと試みた。でも、駄目だった。ドアには鍵がかかっていたし、逃げ場など存在などしない。


なら、そもそもこの部屋に入らなかったらいいのでは、と思うかもしれないが、カナと春人は学校が終わった後は強制的にここに入られる。カナがどれだけ反抗しても使用人は無機質な機械のようにカナをここに放り込んだ。


だというのに、春人の女の件についてはだんまりだ。恐らく、見逃しているのだろう。


「(理不尽だわ)」


何が悲しくて嫌いな男と知らない女のプレイを見なくてはいけないのだろう?


「あんたもさ、抱いて貰えば?……大好きな男がいるんだろ?」


そんなことを思っていると、春人の声が聞こえてくる。そっと後ろを振り返ると、いつのまにかカナの目の前に立っていた。


「……そうね。でも、ここでは絶対にやらない」


「そんな悠長なこと言っていいの?」


馬鹿にしたように春人はそう言ってカナの方を見つめる。女の人は余裕な笑みを浮かべ、にっこりとこっちを見つめていた。


「春人。そんな子に構ってないで私に構ってよ?」


「ああ、ごめん」


そう言って2人はまた手と手を絡みとり…そしてこのまま…堕ちてゆく。2人の世界に。


「…何を見せられてるんだか……」


こんなのを見せられてカナは死んだ魚のような目になっていく。女の喘ぎ声と、春人の声が重なる度にカナは段々諦めがついていき、逃げるように寝室から出ていきトイレへと移動する。


「……もう何なのよ」


この生活が始まって以来透と話すらしていない。その上、この仕打ちにカナはまたため息を吐く。一体自分は前世で何をしでかしたのか、とすら思ってしまう。


「やっぱり世の中って理不尽なことばかり!あんな男と一緒に住ませられるのが一番の屈辱!」


そうは言っても状況は変わらない。こんな屈辱的な生活続けて良いの?お兄ちゃんと話したいという二つの思考がカナの中で巡ってゆく。


「お兄ちゃん……会いたいよぉ……」


と、少女は一人ボロボロと涙を零したのであった。
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