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一章 〜全ての始まり〜
八話 『婚約パーティ』
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キスを拒否され、透に逃げられたあの日から1週間が経過していた。
あれ以来、カナは透と会えずにいた。あの日のことを謝りたくても、避けられていて会うことすら出来ない状況なのだ。
そしてそんなことをモタモタとやっているうちに婚約パーティの当日が来てしまった。
この日の昼過ぎに、都内のホテルで婚約パーティーが行われることになっているのだが、透はこのパーティーには参加しないらしく、その時間を狙って会いに行くという選択肢もなくなってしまったのだ。
故に、カナとしては何の意味もないパーティに出席して、何の価値もない相手との会話をするしかないわけだ。
正直なところ、こんな無意味な時間を過ごさなければならないことが腹立たしい。と思った直後、見覚えのある声が聞こえてきた。
「春人くん!私と踊って~!」
「春人くん!是非君の頭脳を活かしてうちの大学に入らないかい?」
「……春人?」
聞き覚えのありすぎる名前に反応して顔を上げるとそこには鈴木春人がいた。
「(……ど、どうしてここに……?)」
そう思いながら周りを見渡すと、他の参加者にも声を掛けられているようで、相当な人気者であることが伺える。
確かに見た目は悪くないし、頭も良いし性格も穏やかで優しい。
人気にならない要素がなく、こんな人現実にいるんだな……っとここ一ヶ月の出来事を振り返っていると、
「と、カナ。そろそろ来なさい」
父親に呼び止められた。……カナは心の中で中指を立てながらも笑顔を崩さぬまま父親に近づいてゆく。
「(ああ、気持ち悪い!優しい父親を演じているのが!)」
優しい笑顔を浮かべ、周りの人間に愛想を振り撒き、誰に対しても平等に接するその姿は普段の父親とはかけ離れたものだ。
本当は誰よりも冷酷で残忍な性格をしているくせに、それをおくびにも出さないようにしている父親が大嫌いだった。
そして周りも父親の本当の姿を知らないまま騙されているのだから救いようがない。
「……カナ、お前、話聞いてるか?」
いつの間にか思考の海に落ちてしまっていたようだ。慌てて意識を取り戻し、返答する。
「ええ、お父様。私がお父様の話を聞き流す筈がないでしょう?」
心でもないことを言いつつ、早くこの時間が終わって欲しいと思っていると、父親が口を開く。
「そうか……それより、カナ…この人が…お前の婚約者になる人だ」
婚約者、という言葉を聞いて一気に気分が悪くなるがなんとか我慢して目の前の人物の顔を見る。
そこにいたのは、背が高く、黒髪で爽やかなイケメンな男だ。そしてそれは――
「え?す、鈴木くん……?」
カナの婚約者は学校で隣の席である同級生、鈴木春人だった。
△▼△▼
頭の整理が追いつかない。何故彼が自分の婚約者なのか。頭の中でグルグルと考えていると、
「春人、カナちゃん、美人さんだろ?これならお前も……」
「……お父様は黙ってください」
微笑みながら言う春人。口は笑っているが、目は笑っていないように見える。
すると、春人はこちらを見て言った。
「と、まぁ……とりあえず……よろしく、ね?」
「う、うん……よ、よろしくお願いします……」
あまりの展開に頭がついていかず、ぎこちない返事しかできないカナだったが、これからの生活を考えると憂鬱な気持ちになった。
あれ以来、カナは透と会えずにいた。あの日のことを謝りたくても、避けられていて会うことすら出来ない状況なのだ。
そしてそんなことをモタモタとやっているうちに婚約パーティの当日が来てしまった。
この日の昼過ぎに、都内のホテルで婚約パーティーが行われることになっているのだが、透はこのパーティーには参加しないらしく、その時間を狙って会いに行くという選択肢もなくなってしまったのだ。
故に、カナとしては何の意味もないパーティに出席して、何の価値もない相手との会話をするしかないわけだ。
正直なところ、こんな無意味な時間を過ごさなければならないことが腹立たしい。と思った直後、見覚えのある声が聞こえてきた。
「春人くん!私と踊って~!」
「春人くん!是非君の頭脳を活かしてうちの大学に入らないかい?」
「……春人?」
聞き覚えのありすぎる名前に反応して顔を上げるとそこには鈴木春人がいた。
「(……ど、どうしてここに……?)」
そう思いながら周りを見渡すと、他の参加者にも声を掛けられているようで、相当な人気者であることが伺える。
確かに見た目は悪くないし、頭も良いし性格も穏やかで優しい。
人気にならない要素がなく、こんな人現実にいるんだな……っとここ一ヶ月の出来事を振り返っていると、
「と、カナ。そろそろ来なさい」
父親に呼び止められた。……カナは心の中で中指を立てながらも笑顔を崩さぬまま父親に近づいてゆく。
「(ああ、気持ち悪い!優しい父親を演じているのが!)」
優しい笑顔を浮かべ、周りの人間に愛想を振り撒き、誰に対しても平等に接するその姿は普段の父親とはかけ離れたものだ。
本当は誰よりも冷酷で残忍な性格をしているくせに、それをおくびにも出さないようにしている父親が大嫌いだった。
そして周りも父親の本当の姿を知らないまま騙されているのだから救いようがない。
「……カナ、お前、話聞いてるか?」
いつの間にか思考の海に落ちてしまっていたようだ。慌てて意識を取り戻し、返答する。
「ええ、お父様。私がお父様の話を聞き流す筈がないでしょう?」
心でもないことを言いつつ、早くこの時間が終わって欲しいと思っていると、父親が口を開く。
「そうか……それより、カナ…この人が…お前の婚約者になる人だ」
婚約者、という言葉を聞いて一気に気分が悪くなるがなんとか我慢して目の前の人物の顔を見る。
そこにいたのは、背が高く、黒髪で爽やかなイケメンな男だ。そしてそれは――
「え?す、鈴木くん……?」
カナの婚約者は学校で隣の席である同級生、鈴木春人だった。
△▼△▼
頭の整理が追いつかない。何故彼が自分の婚約者なのか。頭の中でグルグルと考えていると、
「春人、カナちゃん、美人さんだろ?これならお前も……」
「……お父様は黙ってください」
微笑みながら言う春人。口は笑っているが、目は笑っていないように見える。
すると、春人はこちらを見て言った。
「と、まぁ……とりあえず……よろしく、ね?」
「う、うん……よ、よろしくお願いします……」
あまりの展開に頭がついていかず、ぎこちない返事しかできないカナだったが、これからの生活を考えると憂鬱な気持ちになった。
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