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『マーク・ザッカーの独り言③』
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「初めまして。マークさん!私はエリー・エキソンと申します。よろしくお願いします」
そう言って、彼女は私に微笑んだ。私はその微笑みに一瞥し、私はこう言った。
「ご丁寧にありがとうございます。私の名前はマーク・ザッカー。ジョン様の専属執事です。こちらこそよろしくお願いします」
私はそう言って、頭を下げた。エリー様はそんな私に「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ!」と言ってくれたが、そういうわけにもいかないだろう。……一応、レオナルド様の婚約者なわけだし。
エリー・エキソン。銀色の長い髪に、空のような青い瞳、透き通るような白い肌に、誰もが見惚れる美貌。……そんな女性が、私の目の前に立っている。
「……ジョン様はこちらです。ご案内いたします」
「はい!」
エリー様は元気よく返事をした後、私の後ろをついてきた。私はそんなエリー様を横目に見ながら、
「(……本当、レオナルド様は早いな……カトリーヌ様にマリー様……そしてエリー様……)」
カトリーヌ様は親の決めたことだからともかく、マリー様はレオナルド様の自ら決めた婚約者なのに二ヶ月ぐらいで婚約破棄……そしてエリー様に乗り換えている。
手が早い、とそれだけで片付けていい問題ではないだろう。現に、レオナルド様は国王候補から外されたわけだし、マリー様と婚約破棄したのは間違いでは、と私は思う。
……まぁ、レオナルド様はエリー様のことをベタ惚れしているし、多分、レオナルド様はチョロいから、こんな短時間で婚約者をコロコロ変えるのは、おそらくそういうことなのだろう。
「マーク……」
そう思っていると、レオナルド様が私に声をかけた。私は立ち止まり、レオナルド様の方を振り返る。
「レオナルド様……この度は婚約おめでとうございます」
正直、おめでたいことではないと思っているが、一応、そう言っておいた。すると、レオナルド様は疲れたようにため息をつきながら……
「皮肉か?それは」
「いえ、本心です」
皮肉のつもりは毛頭なかったのだが……皮肉と受け取られてしまったらしい。……まぁ、私の普段の発言を考えたら、そう思われても仕方ないか。
そう思っていると、
「レオナルド様っ!」
甘ったるい声。……エリー様の声だ。エリー様は嬉しそうに微笑みながら、レオナルド様に抱きついた。先の丁寧さがあふれていた声とは違い、砂糖菓子のように甘い、可愛らしい声だった。
先とは全く違う愛おしい人に向ける声を聞いて、私はすぐにエリー様がレオナルド様のことを好きなのだと悟った。
この声は本気の恋をしている人の声だ。エリー様の様子に、私はそう悟った。
△▼△▼
――恋愛に興味がなかった。
人を本気で好きになったことも、誰かを本気で愛したこともなかった。……今だって、愛さえよく分からない。
私は幼い頃から両親に厳しく育てられてきた。故に、娯楽なんてものはなく、ただ毎日勉強と習い事の繰り返しだった。そんな私に恋や愛なんてものは分からなかった。
でも、ジョン様やレオナルド様を見ていると、少しだけ羨ましく思った。
ジョン様も恋をして変わったし、レオナルド様もエリー様を婚約者にしてから変わったし。
やはり、恋や愛というものは、人をいい方向に動かすものなのだろう。
……私は恋をしたことがないからよく分からないが。
「マーク?どうかしたか?ぼーっとして」
「え?あぁ……少し考え事を……」
ジョン様が私を心配してくれた。私はジョン様にそう返事をすると、ジョン様の隣を歩いた。
「(……多分、私は恋は出来ないな……)」
でも、それでいい。…ジョン様が幸せになってくれれば、それでいいから。
……私はそう思いながら、ジョン様の隣を歩いた。
そう言って、彼女は私に微笑んだ。私はその微笑みに一瞥し、私はこう言った。
「ご丁寧にありがとうございます。私の名前はマーク・ザッカー。ジョン様の専属執事です。こちらこそよろしくお願いします」
私はそう言って、頭を下げた。エリー様はそんな私に「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ!」と言ってくれたが、そういうわけにもいかないだろう。……一応、レオナルド様の婚約者なわけだし。
エリー・エキソン。銀色の長い髪に、空のような青い瞳、透き通るような白い肌に、誰もが見惚れる美貌。……そんな女性が、私の目の前に立っている。
「……ジョン様はこちらです。ご案内いたします」
「はい!」
エリー様は元気よく返事をした後、私の後ろをついてきた。私はそんなエリー様を横目に見ながら、
「(……本当、レオナルド様は早いな……カトリーヌ様にマリー様……そしてエリー様……)」
カトリーヌ様は親の決めたことだからともかく、マリー様はレオナルド様の自ら決めた婚約者なのに二ヶ月ぐらいで婚約破棄……そしてエリー様に乗り換えている。
手が早い、とそれだけで片付けていい問題ではないだろう。現に、レオナルド様は国王候補から外されたわけだし、マリー様と婚約破棄したのは間違いでは、と私は思う。
……まぁ、レオナルド様はエリー様のことをベタ惚れしているし、多分、レオナルド様はチョロいから、こんな短時間で婚約者をコロコロ変えるのは、おそらくそういうことなのだろう。
「マーク……」
そう思っていると、レオナルド様が私に声をかけた。私は立ち止まり、レオナルド様の方を振り返る。
「レオナルド様……この度は婚約おめでとうございます」
正直、おめでたいことではないと思っているが、一応、そう言っておいた。すると、レオナルド様は疲れたようにため息をつきながら……
「皮肉か?それは」
「いえ、本心です」
皮肉のつもりは毛頭なかったのだが……皮肉と受け取られてしまったらしい。……まぁ、私の普段の発言を考えたら、そう思われても仕方ないか。
そう思っていると、
「レオナルド様っ!」
甘ったるい声。……エリー様の声だ。エリー様は嬉しそうに微笑みながら、レオナルド様に抱きついた。先の丁寧さがあふれていた声とは違い、砂糖菓子のように甘い、可愛らしい声だった。
先とは全く違う愛おしい人に向ける声を聞いて、私はすぐにエリー様がレオナルド様のことを好きなのだと悟った。
この声は本気の恋をしている人の声だ。エリー様の様子に、私はそう悟った。
△▼△▼
――恋愛に興味がなかった。
人を本気で好きになったことも、誰かを本気で愛したこともなかった。……今だって、愛さえよく分からない。
私は幼い頃から両親に厳しく育てられてきた。故に、娯楽なんてものはなく、ただ毎日勉強と習い事の繰り返しだった。そんな私に恋や愛なんてものは分からなかった。
でも、ジョン様やレオナルド様を見ていると、少しだけ羨ましく思った。
ジョン様も恋をして変わったし、レオナルド様もエリー様を婚約者にしてから変わったし。
やはり、恋や愛というものは、人をいい方向に動かすものなのだろう。
……私は恋をしたことがないからよく分からないが。
「マーク?どうかしたか?ぼーっとして」
「え?あぁ……少し考え事を……」
ジョン様が私を心配してくれた。私はジョン様にそう返事をすると、ジョン様の隣を歩いた。
「(……多分、私は恋は出来ないな……)」
でも、それでいい。…ジョン様が幸せになってくれれば、それでいいから。
……私はそう思いながら、ジョン様の隣を歩いた。
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