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『ジョン・オルコットの話⑤』
しおりを挟む――時が止まる感覚がした。ピタッと、俺の思考回路が活動を止めた。
……国王候補?俺が……?は?なんだって……?
「……元々、ジョン様も国王候補だったので……しかし、レオナルド様が有力でジョン様が国王になるのはほぼ無いと囁かれたのですが……レオナルド様が外されたので、必然的にジョン様が国王候補の有力者に…」
混乱した俺の頭に、マークは淡々と説明するように話す。
俺はそれを聞いている余裕なんてない。それどころじゃない。頭の中が真っ白だ。
……俺が国王候補の有力者になった?……は?
俺は、国王になる気なんて全く無いのに?国王は兄になるのが相応しいのに?
「――失礼ながら、ジョン様は国王になれる器では無いと思います……と、遠回しに言ったのですが、旦那様曰く、ジョン様しか国王になれる候補がいないと……」
言いにくそうに、そう言ったマーク。その言葉に俺は呆然するしかなかった。
俺は国王になりたいなんて微塵も思った事がない。なのに、俺が国王になる可能性がある?それってつまり……!
「俺にこの国の責任を背負わすつもりなの?あの……父親が?」
…あの父親が俺に?あの合理的で効率を求める父親が?……意味が分からない。
だって効率を求めるのなら。俺を国王になんてさせないはずだ。
俺はこの国のことを何にも知らない。俺はこの国の王に相応しいだなんて微塵も思っていない。相応しいのは兄みたいな人だとそう思ったし、それについては一切疑っていなかった。
だというのに、父親は俺に国王になれというのか? 俺がこの国の王になれば、この国は滅茶苦茶になる。政治だってよく分からないし、父も兄も俺より遥かに頭が良い。
……そんな俺が国王になったら、この国は終わる。
なのに……それを分かってて俺を国王候補に?あの父親が?
俺が呆然していると……
「ジョン様」
コンコン、と扉をノックする音が聞こえてくる。その声に心臓が跳ねる。この声は父親ではなく……
「せ、セドリック……」
父親の専属執事であるセドリックが、扉の外から話しかけてきた。俺は恐る恐る、セドリックに返事をすると、
「……失礼します。ジョン様。……マークから話は聞きましたか?」
淡々とそう言ったセドリック。俺はどう言えばいいのか分からずに……
その沈黙を肯定と受け取ったのか、セドリックはため息を零しながら、
「なら、マークが言った通り貴方が……ジョン様が国王候補の有力者になりました。…………おめでとうございます」
――相変わらず、何を考えているのかわからない無表情でセドリックは淡々とそう言った。
俺はそのセドリックの言葉に、何も返すことができず、ただ………
「……………うん」
と、だけ言った。
その俺の言葉にセドリックは何も返さず、そのまま俺の部屋に入り、
「………。ジョン様。少し、説明がしたいのです。……説明してもよろしいでしょうか?」
セドリックは淡々とそう言いながら、俺を見据える。……俺はそのセドリックの無表情に、只事ではないと感じた。なので、少し怖かったが、俺はこくりと頷く。
すると、セドリックは淡々とした口調で話始めた。
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