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『カトリーヌ・フォンタナーとクラウス・フォンタナーの話③』
しおりを挟む――その微笑みを見たい、と思ったのはいつからの話なのだろう。
「クラウス……」
愛おしそうに見つめるのは、俺の妻であるカトリーヌ。この、優しい微笑みをずっと見つめていたい。
……そう、いつからか俺はこのカトリーヌの笑顔が好きになった。初対面は無表情で、何を考えているのかわからない女だった。だが、今は違う。彼女は俺の前では笑うようになったし、その微笑みがとても可愛いのだ。
無表情だった彼女が、俺に笑いかけてくれるようになったのはいつからだろうか? ……これに関しては本当に覚えていない。だが、気付いたら彼女は俺の前で笑ってくれるようになった。そして、俺はそんなカトリーヌの微笑みが大好きになっていたのだ。
……だから夜の営みの時、彼女が俺を求めてくれると嬉しいし、もっと求めて欲しいとも思う。
俺はカトリーヌが好きだ。彼女のことが愛おしく。彼女の笑顔をずっと見ていたいと、そう思う。
そして、彼女もまた同じ気持ちでいると知った時は嬉しかった。夫婦になって分かったことだが、カトリーヌはツンデレだ。中々デレてくれないが……そこがまた可愛いのだ。
これを言うとカトリーヌは照れてツンツンしだすので言わないが、そんなところも愛おしい。
俺はカトリーヌの笑顔を守りたいし、ずっとそばに居たい。
だから――……
この笑顔を守るためなら俺は何だってしよう。
この笑顔を曇らせないためなら、俺はなんだってしよう。
この笑顔を――……守りたいと思うから。
「……好きだ。カトリーヌ」
俺はそう言って、カトリーヌを抱きしめると、カトリーヌも微笑み、俺を抱きしめ返す。――この瞬間が、俺は好きだから。この微笑みを守りたい。
だから俺は、カトリーヌを守る。たとえ、魔王が相手でも……だ。
なぜなら、カトリーヌは俺の愛しい妻だからだ。それが俺の……俺達夫婦の幸せだから。
きっと、魔王がこの幸せを壊すと言うのなら俺はそれを守るだろう。魔王であろうとも戦うだろう。この笑顔を守るためならなんだってするさ。
俺はカトリーヌを愛しているからだ。
依存、しているのかもしれない。否、好きなら依存していても問題はないだろう。そう、これは全部カトリーヌが悪い。彼女が可愛すぎるのがいけないんだ……と、心の中でとんでもない責任転嫁をする。
責任転嫁、と言われても仕方がない程カトリーヌは可愛いし。これが学生時代の俺が見ていたらきっと鼻で笑うような行為をしていると自分でも感じる。だが、仕方ないのだ。今のカトリーヌが可愛すぎるから。
「……クラウス、愛しているわ」
そう言って擦り寄ってくるカトリーヌは可愛すぎる。いつも可愛いのだが、今日は更に可愛く見えるのはきっと久しぶりに二人で過ごしているからだろう。
……そう、俺達は今日は珍しく久々に二人揃っての休日だ。いつもカトリーヌは子育てで忙しいし、俺は俺で仕事がある。
故に、久しぶりの夫婦の時間を堪能すべく、今日は朝から二人でのんびりと過ごしている。
……最初は一緒に過ごすと言っても何をすればいいのか、正直わからなかった。誘っても断られたし、断られたらそれ以上何も言えず。結局は俺は何もしないでただカトリーヌの傍にいるだけの休日を過ごしてしまった。
それはそれで良い休日を過ごせたと思う。だが、やはり味気ないと思うのは俺が性欲が強いからなのだろうか?だから、俺は今こうしてカトリーヌにこれでもかというほど愛を囁いている。――なんて、そんなことは口が裂けても言えないが。
だが、愛する妻が傍に居れば自然と手は伸びるもので……俺の手はいつの間にかカトリーヌの髪を撫でていた。ふわふわとした感触の髪は撫でているだけでも心地が良いし、彼女の髪の匂いが俺の鼻孔をくすぐる。それがまた幸せで……ついつい手が勝手に動いてしまうのだ。
俺の撫でる手にうっとりとした表情をするカトリーヌは可愛いなと思う。
子供がいてもこのラブラブ具合というのは恥ずかしい限りだが、しょうがない。俺はカトリーヌが大好きだし、カトリーヌも俺が大好きだ。これは紛れもない事実だから。
この事実がある限り、俺達はきっとずっと幸せで居られるだろう。
そんなことを思いながら俺は今日もカトリーヌの頭を撫でたのだった。
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