【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした -番外編-

かんな

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『ジールとローズの話③』

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あれからスティブーンとローズ・デイルと別れ、俺らはとある部屋に入っていた。部屋に入った途端、


「(エロい雰囲気が充満している……!)」


そう、エロい雰囲気が漂っているのだ。俺はこんな状況にも関わらず、胸を高鳴らせてしまっていた。
女性は妖艶な笑みを浮かべた後、俺の耳元に口を近づけてきた。吐息が耳にかかり、ゾクゾクするような感覚に襲われる。


「ふふ……かわいい♡それでね、坊や。私といいことしない?」


「いいこと……?」


「ええ♡とっても気持ちいいことよ♡」


美しい笑み。しかしその笑みはどこか淫靡で、見ていると吸い込まれそうになる。クラクラする。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。女性がさらに体を密着させ、耳元から囁きかける。
ゾクゾクッ!! 体が震えるような感覚。頭がボーッとしてくる……
そして耳元で囁いたあと、女性は俺の股間に手を伸ばした瞬間――。


「あのさぁ……エール。俺の友人に色仕掛けはやめてくれないかな?」


呆れた表情で俺たちの間に乱入してきたのは――


「ノリが悪いわよ。クラウス~~」


頬を含まらせ、つまらなそうに唇を尖らせる女性。しかし、俺からしたら急な展開でなにがなにやら……
困惑する俺をクラウスはため息を吐き、


「ジールもジールだぜ。なんでこんなやつに食いつくんだよ……」


呆れた口調のクラウスに俺は、何も言えずにただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


「……ま、いいじゃない。それだけ私の色気が凄かったってことなんだから♪」


「はあ……そういうことにしといてやるよ」


ちょっと待ってくれ。俺を置いて話を進めないでくれ。
俺は困惑していたが、だが、この2人の会話に割って入る勇気なんてものはなく。ただ、2人の会話に耳を傾けていたが……


「ま、いいや。俺はジールに話したいことがあるから、エールはもういいから」


「えー、もっと坊やと遊びたいんだけど?」


ブーブーと不満を漏らしているエールと言われた女性に、再びため息を吐くクラウス。そして、俺に視線を向ける。
俺はクラウスがなにを言いたいのかわからず、ただ立ち尽くしていた。


「話をしよう。ジール」


真剣な瞳。その目は俺を捉えて離さなかった。一体、何を言われるのだろう。俺はクラウスの目を見ることができなかった。
心臓の鼓動が早まる。手に汗がじんわりと滲んでいく。俺はゴクリと唾を飲み込んだ後に……


「ああ……」


覚悟を決めた。何を言われるかは全くわからないが……。


「ま、いいわ。私は退散するわ」


そう言ってエールさんは去っていく。その去り際、エールさんは意味深な笑みを浮かべた。俺はそれが気になったが、今はクラウスと話をする方が大事だ。
俺とクラウスは2人きりになる。
部屋に沈黙が流れる。だが、その沈黙も長くは続かなかった。何故なら……


「あのさ。ジール。話があるんだ。言ってもいいか?俺の本音を」


クラウスは真剣な表情で俺を見つめた。そして俺は覚悟を決めたように静かに頷いた。


「そうか……ジール、俺さー、結婚するわ。あいつと」


「……そうか……って……はぁ?!?!?」


俺はクラウスが何を言ったのかよくわからなかった。いや、理解するのを拒んだと言った方が正しいか。


「今……なんて……?」


「だ・か・ら!俺、結婚することになったわ!」


笑顔でそう言ってくるクラウス。俺は今、どんな表情をしているのかわからなかったが……


「相手は……カトリーヌ嬢だろう?」

冷静を装い、そう問いかける。クラウスは頷く。その表情は恥ずかしそうな、しかし、嬉しそうな表情をしていた。


「そうか……おめでとう。……でも、何でこんなことを?普通に言えばよかったじゃないか?」


あんな色気プンプンの人に俺を誘惑してまで言うことか? 俺が問いかけると、クラウスは不満そうに、


「エールには普通にジールを呼び出すように頼んだの!俺は仕事で忙しかったから!そしたら勝手にあんなことになって……」


クラウスは思い出したのか、イライラしたように頭をかいた。そして一息吐くと、


「ま、話はそれだけ。あとは久しぶりに話そうぜ、親友」


ニヤリ、と笑みを浮かべたクラウスに俺は呆気に取られたけども……


「ああ……」 


そう呟いて俺は微笑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんか、『ジールとクラウスの話』みたいになっていますが、次回はローズ視線の話をします
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