25 / 69
『マリー・アルメイダの話①』
しおりを挟む
――いつもみんなに〝かわいい〟と言われて、チヤホヤされた。
「……マリー、愛してるよ」
周りにはたくさんの男がいて、私は誰よりも可愛かったし、私を愛してくれる人もたくさんいた。
「マリーは可愛いなぁ。将来美人になるぞぉ」
周りの人たちは皆そう言ってくれた。チヤホヤして、私を甘やかしてくれた。両親からも、祖父母からも、親戚のおじさんたちからも、学校の先生たちからも……そう言われた。そのときに私がわかったことは、かわいいというのは正義ということだ。
私が何をしても許されて、誰も文句を言わない。私の機嫌を取るために、みんなが必死になって媚びへつらう。その光景が面白おかしかった。
そんなある日。私に婚約者ができた。名前はクラウス・フォンタナー。私と同じく、子爵家の息子らしい。クラウスは貴族らしくなく、平民にも優しく接してくれるという評判だった。
そして私にベタ惚れだ。私が何かを言うとすぐに従い、私のためなら何でもすると言ってくれる。そんな彼を見て、私は心の底から笑った。男なんて所詮こんなもん。顔さえ良ければ簡単に落ちるんだ。
愛している、という愛の言葉を囁けば、それだけでこの男は喜んだ。愛に飢えている男は扱いやすく、楽しかった。だから私はクラウスのことを気に入っていた。
私が笑顔を向ければ、クラウスも笑う。その光景はとても滑稽で愉快だった。笑い堪えるのに必死だった。面白いとは思いつつも、そのうち、私はこの人と婚約する。
婚約者だし当たり前だけど、いずれ結婚することになるだろう。それを考えると少しだけ憂鬱になりながらも、王立魔法学園と入学した。でも、学園に入学しても何も変わらなかった。相変わらず私はチヤホヤされていたし、私の周りには常に人が居た。誰もが私を褒め称えてくれた。まるで神のように崇められていた。
そして――そんなある日。私は彼に出会った。彼の名前はレオナルド・オルコット殿下。将来は国王になる人らしく、めちゃくちゃモテモテだった。そして彼を見た瞬間、私は胸がときめいてしまったのだ。
今まで感じたことの無い感情に戸惑うも、すぐに理解できた。これが恋なんだって。
「(これが真実の愛だというの?神様!)」
しかも、彼は国王になる男。玉の輿間違いなしだ。それに容姿端麗でカッコいい。まさに理想の男性だった。
「(絶対に振り向かせて見せるわ……!レオナルド・オルコット!)」
と、私は決意を固めた。
△▼△▼
――この男はめちゃくちゃ簡単だった。ちょっと優しい言葉を掛けてあげるだけで、頬を赤らめて嬉しそうな表情を浮かべる。チョロいと思った。
……次期国王なんだからいつもとは勝手が違うと思っていたけど、結局他の男と同じだった。
「……つまらない……」
相手は次期国王陛下なわけだし、少しぐらい手応えがあるかと期待した自分がバカみたいだった。それほどまでに自分が魅力的だというのならしょうがないけどねー。レオナルド様の婚約者って地味でパッとしないし、女に飢えてたことは確実なわけだし……まあ、そのおかげで簡単に落とせたんだけど。
「カトリーヌ・エルノー……ねぇ」
次期王妃なだけであって家柄もそこそこいいし、成績も悪くない。でも、それ以外がダメすぎる。容姿は普通だし、性格はキツい……というわけではなく、人形みたいな感じだ。
所謂、操り人形っていうやつ?自分で物事を決めることができないタイプの人間だろう。そんなんじゃ、王妃としてやっていけないと思うんだけど。
「……まあ、私には関係ないことだよね……」
あんな女の分析をしたところでどうしようもない。だって……どうせ婚約破棄されるんだから。あの女は私の手で破滅する運命にあるんだから。
「……ふふっ、楽しみ」
早く、見てみたい。自分の手の上で転がされている女の無様な姿を見たいし、絶望している顔を見てみたい。ああ、考えただけでもゾクゾクしてくる。
だから、早く破滅して私の心に彩りをちょうだいよ、カトリーヌ・エルノー……と、私は呟いた。
△▼△▼
あれから、レオナルド様とカトリーヌ・エルノーが婚約破棄した。そして私は玉の輿に乗れたというわけだ。……と、思っていたが。
「(クラウスとカトリーヌ・エルノーが話してる……?)」
クラウスは私と婚約破棄したとき泣き言を言っていたので、何かをしてくるとは思ってはいたが……
「(まさか、こんなにも早く動くなんて)」
カトリーヌ・エルノーと協力するのはまぁ、別に構わないのだけれど。どうせ失敗に終わるだろうし。
「(私が気にすることは一つもないわ。でも……)」
私は扇子を握りしめながら、二人に近づきながら――。
「あらぁ。楽しそうですわね。私も混ぜてくださらない?」
二人の会話に割って入り、ニッコリと微笑みかけた――。
「……マリー、愛してるよ」
周りにはたくさんの男がいて、私は誰よりも可愛かったし、私を愛してくれる人もたくさんいた。
「マリーは可愛いなぁ。将来美人になるぞぉ」
周りの人たちは皆そう言ってくれた。チヤホヤして、私を甘やかしてくれた。両親からも、祖父母からも、親戚のおじさんたちからも、学校の先生たちからも……そう言われた。そのときに私がわかったことは、かわいいというのは正義ということだ。
私が何をしても許されて、誰も文句を言わない。私の機嫌を取るために、みんなが必死になって媚びへつらう。その光景が面白おかしかった。
そんなある日。私に婚約者ができた。名前はクラウス・フォンタナー。私と同じく、子爵家の息子らしい。クラウスは貴族らしくなく、平民にも優しく接してくれるという評判だった。
そして私にベタ惚れだ。私が何かを言うとすぐに従い、私のためなら何でもすると言ってくれる。そんな彼を見て、私は心の底から笑った。男なんて所詮こんなもん。顔さえ良ければ簡単に落ちるんだ。
愛している、という愛の言葉を囁けば、それだけでこの男は喜んだ。愛に飢えている男は扱いやすく、楽しかった。だから私はクラウスのことを気に入っていた。
私が笑顔を向ければ、クラウスも笑う。その光景はとても滑稽で愉快だった。笑い堪えるのに必死だった。面白いとは思いつつも、そのうち、私はこの人と婚約する。
婚約者だし当たり前だけど、いずれ結婚することになるだろう。それを考えると少しだけ憂鬱になりながらも、王立魔法学園と入学した。でも、学園に入学しても何も変わらなかった。相変わらず私はチヤホヤされていたし、私の周りには常に人が居た。誰もが私を褒め称えてくれた。まるで神のように崇められていた。
そして――そんなある日。私は彼に出会った。彼の名前はレオナルド・オルコット殿下。将来は国王になる人らしく、めちゃくちゃモテモテだった。そして彼を見た瞬間、私は胸がときめいてしまったのだ。
今まで感じたことの無い感情に戸惑うも、すぐに理解できた。これが恋なんだって。
「(これが真実の愛だというの?神様!)」
しかも、彼は国王になる男。玉の輿間違いなしだ。それに容姿端麗でカッコいい。まさに理想の男性だった。
「(絶対に振り向かせて見せるわ……!レオナルド・オルコット!)」
と、私は決意を固めた。
△▼△▼
――この男はめちゃくちゃ簡単だった。ちょっと優しい言葉を掛けてあげるだけで、頬を赤らめて嬉しそうな表情を浮かべる。チョロいと思った。
……次期国王なんだからいつもとは勝手が違うと思っていたけど、結局他の男と同じだった。
「……つまらない……」
相手は次期国王陛下なわけだし、少しぐらい手応えがあるかと期待した自分がバカみたいだった。それほどまでに自分が魅力的だというのならしょうがないけどねー。レオナルド様の婚約者って地味でパッとしないし、女に飢えてたことは確実なわけだし……まあ、そのおかげで簡単に落とせたんだけど。
「カトリーヌ・エルノー……ねぇ」
次期王妃なだけであって家柄もそこそこいいし、成績も悪くない。でも、それ以外がダメすぎる。容姿は普通だし、性格はキツい……というわけではなく、人形みたいな感じだ。
所謂、操り人形っていうやつ?自分で物事を決めることができないタイプの人間だろう。そんなんじゃ、王妃としてやっていけないと思うんだけど。
「……まあ、私には関係ないことだよね……」
あんな女の分析をしたところでどうしようもない。だって……どうせ婚約破棄されるんだから。あの女は私の手で破滅する運命にあるんだから。
「……ふふっ、楽しみ」
早く、見てみたい。自分の手の上で転がされている女の無様な姿を見たいし、絶望している顔を見てみたい。ああ、考えただけでもゾクゾクしてくる。
だから、早く破滅して私の心に彩りをちょうだいよ、カトリーヌ・エルノー……と、私は呟いた。
△▼△▼
あれから、レオナルド様とカトリーヌ・エルノーが婚約破棄した。そして私は玉の輿に乗れたというわけだ。……と、思っていたが。
「(クラウスとカトリーヌ・エルノーが話してる……?)」
クラウスは私と婚約破棄したとき泣き言を言っていたので、何かをしてくるとは思ってはいたが……
「(まさか、こんなにも早く動くなんて)」
カトリーヌ・エルノーと協力するのはまぁ、別に構わないのだけれど。どうせ失敗に終わるだろうし。
「(私が気にすることは一つもないわ。でも……)」
私は扇子を握りしめながら、二人に近づきながら――。
「あらぁ。楽しそうですわね。私も混ぜてくださらない?」
二人の会話に割って入り、ニッコリと微笑みかけた――。
12
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。
本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる