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『レオナルド・オルコットの話③』
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彼女の名前は、エリー・レキソンというらしい。俺よりも2つ年下で、今は17歳だという。
俺とエリーは、初めて会った場所でお茶をする約束をし、その日から何度も逢瀬を重ねた。
エリーもエリーで満更じゃなさそうに、俺に微笑みかけてくれる。それが嬉しくて、俺はますます彼女にのめり込んだ。
もはや、マリー・アルメイダのことなんて忘れていた。
もっと、もっと、話していたい。もっと、一緒に居たい。そんな想いが強くなっていくのを感じている。これが恋というものだというのなら、マリー・アルメイダのときに感じたこの胸のときめきは一体何だったのか……きっと気のせいなのだろう。
だって今、こんなにも満たされている。あの時のことを思い出すだけで吐き気がする程に。
そして、今日もまた彼女と会う日……になっていたこと。
「レオナルド・オルコット様、今、時間ありますか?」
ニッコリと微笑むのは、クラウス・フォンタナー。マリー・アルメイダの前の婚約者だ。
この男は顔立ちは地味に整ってる方だが俺には叶わないし、何と言うか……貴族らしさがない。
だからと言って平民というわけでもないのだが、それでもこいつには貴族の風格や威厳といったものがあまりないのだ。
「……少しだけならあるけど」
「では、お話がございます。こちらへどうぞ」
そう言ってクラウス・フォンタナーは、俺についてこい、と言わんばかりに歩き出す。
正直、こんな奴に指図される筋合いはないので無視してもいいのだが、一応、エリーとの待ち合わせの時間までは余裕があるのでついて行くことにしよう。それに……こいつは、俺にマリー・アルメイダを奪われた身。
せめてものの慈悲として、話くらいは聞いてやっても良いかもしれない。
そんなことを考えながら歩いているうちに、俺は応接室のような場所に通された。
そこには――。
――マリーとカトリーヌ・エルノーがいた。
△▼△▼
――何この、修羅場みたいな状況……。
どうして、ここに二人が居るんだろう?気まず……しかし、マリー・アルメイダは一応婚約者だし……
「カトリーヌ・エルノーにクラウス・フォンタナー………何の用だ?」
と、とりあえずここは冷静を装うことにした。いや、だって……この状況で焦ったりするとかマジありえないじゃん? それにしても、クラウス・フォンタナー……まさか俺らに復讐する気なのか?だとしたらかなり面倒臭いことになるが……
まあ良い。いざとなったら力ずくでも何とかなるだろう。最悪、マリー・アルメイダに全ての罪を押し付けよう。そう思ってマリー・アルメイダを見ると、彼女はとても悲しげな顔をしていた。まるで裏切られたかのような目をしている。
――本当にこの女は演技が上手い、ということを改めて思い知らされた。最近、気づいたのだがマリー・アルメイダは惚れているふりをしているだけであって、本心では全くに情など抱いていないのだ。
そのことに気付いたのは、エリーのお陰だ。エリーが本気で俺を惚れていてくれたお陰でマリー・アルメイダの本性に気づけたわけだし。
そう考えていると、
「さぁ、始めよう!」
と、クラウス・ファンタナーが声高に宣言した。
△▼△▼
――結果として。マリー・アルメイダと俺は婚約破棄をした。というか、された。
カトリーヌ・エルノーとクラウス・ファンタナーがマリー・アルメイダの悪事を暴露したのだ。
ジール・カンタレラと浮気をして、俺を捨てようと画策したことと言われて、別にショックは受けなかった。これは痩せ我慢ではなく、本当にどうでもよかった。
だから俺は被害者になれると気づいて、内心、大喜びした。だって、俺はノーリスクでマリー・アルメイダという女を婚約破棄できたのだ。これほど、嬉しいことはないだろう? しかし……
「レオナルド殿下言いましたよね!?この婚約者と別れて私と結婚してくれるって!それなのに、この浮気女とまだ付き合っているなんて!」
エリーが唐突に乱入してきた。
なぜ、エリーがここにいるのか……なんて聞くまでもなく、クラウス・ファンタナーの仕業だと思っていたのだが……しかし、クラウス・ファンタナーも驚いた様な顔をしていた。
要するにエリーが来るのは予想外だったらしく、完全なる偶然ということ。それはそれで凄いと思うが……
「もう!殿下は私と結婚するの!この女と婚約なんてありえない!」
エリーが叫ぶようにそう言った。そして、その言葉を聞いたクラウス・ファンタナーが笑いながら顔を上げられないところを見るときっと大爆笑していのだろう。
俺だって逆に笑いそうになっちまったよ。いや、もう笑うしかねぇだろ。
エリーが俺のこと好きなのはわかってたけど、まさかここまでとは思わなかった。
「ねぇ、レオナルド殿下。愛していますわ」
うっとりと、熱っぽい目でエリーが見つめてくる。それは魅力に溢れているはずなのだが、俺は寒気しか感じなかった。
その上、慰謝料でカトリーヌ・エルノーに大金を払う羽目になったし……最悪だ。
更に国王になることも出来なくなってしまった。だけど、そんなものどうでもよかった。今はただ、マリー・アルメイダと別れられただけで満足だし。それに……
「ああ…俺も愛しているよ」
隣にエリーがいる。それだけで俺は幸福なのだから――。
俺とエリーは、初めて会った場所でお茶をする約束をし、その日から何度も逢瀬を重ねた。
エリーもエリーで満更じゃなさそうに、俺に微笑みかけてくれる。それが嬉しくて、俺はますます彼女にのめり込んだ。
もはや、マリー・アルメイダのことなんて忘れていた。
もっと、もっと、話していたい。もっと、一緒に居たい。そんな想いが強くなっていくのを感じている。これが恋というものだというのなら、マリー・アルメイダのときに感じたこの胸のときめきは一体何だったのか……きっと気のせいなのだろう。
だって今、こんなにも満たされている。あの時のことを思い出すだけで吐き気がする程に。
そして、今日もまた彼女と会う日……になっていたこと。
「レオナルド・オルコット様、今、時間ありますか?」
ニッコリと微笑むのは、クラウス・フォンタナー。マリー・アルメイダの前の婚約者だ。
この男は顔立ちは地味に整ってる方だが俺には叶わないし、何と言うか……貴族らしさがない。
だからと言って平民というわけでもないのだが、それでもこいつには貴族の風格や威厳といったものがあまりないのだ。
「……少しだけならあるけど」
「では、お話がございます。こちらへどうぞ」
そう言ってクラウス・フォンタナーは、俺についてこい、と言わんばかりに歩き出す。
正直、こんな奴に指図される筋合いはないので無視してもいいのだが、一応、エリーとの待ち合わせの時間までは余裕があるのでついて行くことにしよう。それに……こいつは、俺にマリー・アルメイダを奪われた身。
せめてものの慈悲として、話くらいは聞いてやっても良いかもしれない。
そんなことを考えながら歩いているうちに、俺は応接室のような場所に通された。
そこには――。
――マリーとカトリーヌ・エルノーがいた。
△▼△▼
――何この、修羅場みたいな状況……。
どうして、ここに二人が居るんだろう?気まず……しかし、マリー・アルメイダは一応婚約者だし……
「カトリーヌ・エルノーにクラウス・フォンタナー………何の用だ?」
と、とりあえずここは冷静を装うことにした。いや、だって……この状況で焦ったりするとかマジありえないじゃん? それにしても、クラウス・フォンタナー……まさか俺らに復讐する気なのか?だとしたらかなり面倒臭いことになるが……
まあ良い。いざとなったら力ずくでも何とかなるだろう。最悪、マリー・アルメイダに全ての罪を押し付けよう。そう思ってマリー・アルメイダを見ると、彼女はとても悲しげな顔をしていた。まるで裏切られたかのような目をしている。
――本当にこの女は演技が上手い、ということを改めて思い知らされた。最近、気づいたのだがマリー・アルメイダは惚れているふりをしているだけであって、本心では全くに情など抱いていないのだ。
そのことに気付いたのは、エリーのお陰だ。エリーが本気で俺を惚れていてくれたお陰でマリー・アルメイダの本性に気づけたわけだし。
そう考えていると、
「さぁ、始めよう!」
と、クラウス・ファンタナーが声高に宣言した。
△▼△▼
――結果として。マリー・アルメイダと俺は婚約破棄をした。というか、された。
カトリーヌ・エルノーとクラウス・ファンタナーがマリー・アルメイダの悪事を暴露したのだ。
ジール・カンタレラと浮気をして、俺を捨てようと画策したことと言われて、別にショックは受けなかった。これは痩せ我慢ではなく、本当にどうでもよかった。
だから俺は被害者になれると気づいて、内心、大喜びした。だって、俺はノーリスクでマリー・アルメイダという女を婚約破棄できたのだ。これほど、嬉しいことはないだろう? しかし……
「レオナルド殿下言いましたよね!?この婚約者と別れて私と結婚してくれるって!それなのに、この浮気女とまだ付き合っているなんて!」
エリーが唐突に乱入してきた。
なぜ、エリーがここにいるのか……なんて聞くまでもなく、クラウス・ファンタナーの仕業だと思っていたのだが……しかし、クラウス・ファンタナーも驚いた様な顔をしていた。
要するにエリーが来るのは予想外だったらしく、完全なる偶然ということ。それはそれで凄いと思うが……
「もう!殿下は私と結婚するの!この女と婚約なんてありえない!」
エリーが叫ぶようにそう言った。そして、その言葉を聞いたクラウス・ファンタナーが笑いながら顔を上げられないところを見るときっと大爆笑していのだろう。
俺だって逆に笑いそうになっちまったよ。いや、もう笑うしかねぇだろ。
エリーが俺のこと好きなのはわかってたけど、まさかここまでとは思わなかった。
「ねぇ、レオナルド殿下。愛していますわ」
うっとりと、熱っぽい目でエリーが見つめてくる。それは魅力に溢れているはずなのだが、俺は寒気しか感じなかった。
その上、慰謝料でカトリーヌ・エルノーに大金を払う羽目になったし……最悪だ。
更に国王になることも出来なくなってしまった。だけど、そんなものどうでもよかった。今はただ、マリー・アルメイダと別れられただけで満足だし。それに……
「ああ…俺も愛しているよ」
隣にエリーがいる。それだけで俺は幸福なのだから――。
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