21 / 69
『ローズ・デイルの話⑦』
しおりを挟む
バチバチと対抗していく。そんな火花が舞い散りながら、団員は静かにこの戦いを見ている。勝負の内容はシンプルに剣の打ち合い。魔法を使ってはいけない。それだけだ。
「では、初め!」
団員の声と共に私は剣を振り上げ、ジール様に向かって走り出した。そして――
木と木のぶつかり合う音が響く。私は剣を振り、ジール様はそれを受け止めた。
……ジール様……強くなってる……?正直、予想以上だった。少なくとも私が学生の時より……明らかに強くなっている。剣が弾かれそうになる。だけど……負けられない! それに、私は修行している身。ここで負けたら意味がないのだ。私は力を込めて押し返す。すると、少しだけだが、ジール様は後ろに下がった。
でも、まだまだ余裕だ。それくらいの差はあるだろうと思っていたのだが……ジール様もニヤリと笑っている。私と同じ気持ちなのかもしれない。
それから激しい攻防が続く。何度も剣をぶつけ合い、その度に木霊する音が鳴る。
「(ぐ……このままじゃジリ貧だ…!)」
このままじゃ負ける。そう思った時、私の脳裏にある光景が浮かんだ。それは、私が師匠に勝った時の事だ。その時、私は何を考えていたのか……思い出した瞬間、私は一気に駆け出す。そして、ジール・カンタレラに斬りかかった。
実際、斬りかかるわけではないのだが、その勢いで私はジール様に攻撃しようとする。しかし、ジール様はそれを読んでいたのか、すぐに避けてしまった。
ジール・カンタレラは攻撃力はそんなに高くないが、その分回避能力に特化しているし………!
だからって、諦めるわけにはいかない。
その後も何度か攻撃を仕掛けるが、全て避けられてしまう。だが、ジール・カンタレラの方にも限界があるはずだ。だって、あれだけ激しく動いているんだから……故に隙を突くしかない。
そして、ついにその時が来た。ジール様の動きが鈍くなったのだ。
私はその隙を見逃さず、一気に距離を詰めて攻撃を繰り出して、そして――。
「そこまで!勝者!ローズ・デイル!」
私の勝利が決まった。
△▼△▼
私の勝利が決まった。それは嬉しいこと。……そう、とても嬉しいことなんだ。なのに……どうしてこんなに胸が痛いんだろうか……勝って嬉しいはずなのに、嬉しくないのは……何故?
別にズルをしたわけじゃない。ただ単に全力を出しただけ。その結果がこれなのだ。つまり、実力で勝ったということ。なら、なんの問題もないのに。でも、心の奥底では納得していない自分がいる。
どうしてだろう……?彼が手加減していたのか?いや、そんなことはない。もし、そうじゃなかったら彼に失礼だし。それはそうとして――。
「……団長!俺ら間違っていました!今までサボっていた罰として、今すぐ特訓してきます!」
そう言って団員の一人はどこかへ走り去っていった。それを皮切りに他の団員も慌てて特訓を始めていた。……あの戦い以来、みんな変わっていた。それも、いい方向に。
ジール・カンタレラが皆を変えたんだ。私一人ではとてもここまで変われなかった。団長として、みんなを引っ張っていかなければいけないのに……私は何も出来なかった。
私が勝ったはずなのに。……負けた気分だ。やはり、私はまだまだ未熟者なのだろう。嬉しさより、悔しさの方が勝ってしまった。ダメじゃないか。私は団長として、皆を引っ張っていかなきゃいけないのに。
……だというのに。ジール・カンタレラという存在は、私の心を揺さぶっていく。悔しいはずなのに、何故か嬉しい。そんな矛盾した気持ちが揺れ動く。そして、私の胸を締め付ける。
彼のことを考えると、何故か苦しくなる。自分の弱さを実感してしまうから……
故に、私は自分を誤魔化し続ける。そうでもしなければ、私は私じゃなくなってしまうから。
「ローズー」
声が聞こえてきた。思わず振り向くと、そこにはスティブーンが立っていた。彼は私に近づくと、ニコッと笑いながら、
「今日の俺はちょっと違うぜ?」
突然来て何を言っているんだ……こいつ……ふざけた感じは健在みたいだ。まぁ、どうでもいいけど。
私は彼の戯言を無視しながら、
「………で?何か用?」
「なんだよー。冷たいなぁ」
「用がないならさっさと帰ってよ」
本当に用がないのなら帰って欲しい。こっちは疲れているというのに。だが、私の思いとは裏腹に、スティブーンは話を続けながら、
「用ならあるよ」
「あるの?用があるのなら、早く言ってよ」
「そんなに急かすなよ。ローズはせっかちなんだから」
「うるさいわね……こっちは疲れてるんだから、さっさと終わらせたいの」
そう言うと、スティブーンはニヤリと笑いながらスティブーンはこう言った。
「王子からの伝言を預かってきたんだぜ!」
「王子からの伝言?それなら早く言って。王子に何を言われたの?」
私がそう言うと、スティブーンはドヤ顔でこう言った。
「そうそう!王子がパーティ開くから来いってさ!お前も来るだろ?」
………なんというか……王子といい、スティブーンといい……私の周りには自分勝手な人間が多すぎる気がしてきた。そして同時にこんなことを考えていた自分もバカバカしくなる。
「………いいわ。行くわよ」
「おっ。普段はパーティなんて……って言ってるローズが珍しいなぁ!」
「うるさいわね。行くって言ってんだから、少しは黙ってなさいよ」
「へいへーい」
だから私は思うんだ。今ぐらい……好きなように生きようと。
「では、初め!」
団員の声と共に私は剣を振り上げ、ジール様に向かって走り出した。そして――
木と木のぶつかり合う音が響く。私は剣を振り、ジール様はそれを受け止めた。
……ジール様……強くなってる……?正直、予想以上だった。少なくとも私が学生の時より……明らかに強くなっている。剣が弾かれそうになる。だけど……負けられない! それに、私は修行している身。ここで負けたら意味がないのだ。私は力を込めて押し返す。すると、少しだけだが、ジール様は後ろに下がった。
でも、まだまだ余裕だ。それくらいの差はあるだろうと思っていたのだが……ジール様もニヤリと笑っている。私と同じ気持ちなのかもしれない。
それから激しい攻防が続く。何度も剣をぶつけ合い、その度に木霊する音が鳴る。
「(ぐ……このままじゃジリ貧だ…!)」
このままじゃ負ける。そう思った時、私の脳裏にある光景が浮かんだ。それは、私が師匠に勝った時の事だ。その時、私は何を考えていたのか……思い出した瞬間、私は一気に駆け出す。そして、ジール・カンタレラに斬りかかった。
実際、斬りかかるわけではないのだが、その勢いで私はジール様に攻撃しようとする。しかし、ジール様はそれを読んでいたのか、すぐに避けてしまった。
ジール・カンタレラは攻撃力はそんなに高くないが、その分回避能力に特化しているし………!
だからって、諦めるわけにはいかない。
その後も何度か攻撃を仕掛けるが、全て避けられてしまう。だが、ジール・カンタレラの方にも限界があるはずだ。だって、あれだけ激しく動いているんだから……故に隙を突くしかない。
そして、ついにその時が来た。ジール様の動きが鈍くなったのだ。
私はその隙を見逃さず、一気に距離を詰めて攻撃を繰り出して、そして――。
「そこまで!勝者!ローズ・デイル!」
私の勝利が決まった。
△▼△▼
私の勝利が決まった。それは嬉しいこと。……そう、とても嬉しいことなんだ。なのに……どうしてこんなに胸が痛いんだろうか……勝って嬉しいはずなのに、嬉しくないのは……何故?
別にズルをしたわけじゃない。ただ単に全力を出しただけ。その結果がこれなのだ。つまり、実力で勝ったということ。なら、なんの問題もないのに。でも、心の奥底では納得していない自分がいる。
どうしてだろう……?彼が手加減していたのか?いや、そんなことはない。もし、そうじゃなかったら彼に失礼だし。それはそうとして――。
「……団長!俺ら間違っていました!今までサボっていた罰として、今すぐ特訓してきます!」
そう言って団員の一人はどこかへ走り去っていった。それを皮切りに他の団員も慌てて特訓を始めていた。……あの戦い以来、みんな変わっていた。それも、いい方向に。
ジール・カンタレラが皆を変えたんだ。私一人ではとてもここまで変われなかった。団長として、みんなを引っ張っていかなければいけないのに……私は何も出来なかった。
私が勝ったはずなのに。……負けた気分だ。やはり、私はまだまだ未熟者なのだろう。嬉しさより、悔しさの方が勝ってしまった。ダメじゃないか。私は団長として、皆を引っ張っていかなきゃいけないのに。
……だというのに。ジール・カンタレラという存在は、私の心を揺さぶっていく。悔しいはずなのに、何故か嬉しい。そんな矛盾した気持ちが揺れ動く。そして、私の胸を締め付ける。
彼のことを考えると、何故か苦しくなる。自分の弱さを実感してしまうから……
故に、私は自分を誤魔化し続ける。そうでもしなければ、私は私じゃなくなってしまうから。
「ローズー」
声が聞こえてきた。思わず振り向くと、そこにはスティブーンが立っていた。彼は私に近づくと、ニコッと笑いながら、
「今日の俺はちょっと違うぜ?」
突然来て何を言っているんだ……こいつ……ふざけた感じは健在みたいだ。まぁ、どうでもいいけど。
私は彼の戯言を無視しながら、
「………で?何か用?」
「なんだよー。冷たいなぁ」
「用がないならさっさと帰ってよ」
本当に用がないのなら帰って欲しい。こっちは疲れているというのに。だが、私の思いとは裏腹に、スティブーンは話を続けながら、
「用ならあるよ」
「あるの?用があるのなら、早く言ってよ」
「そんなに急かすなよ。ローズはせっかちなんだから」
「うるさいわね……こっちは疲れてるんだから、さっさと終わらせたいの」
そう言うと、スティブーンはニヤリと笑いながらスティブーンはこう言った。
「王子からの伝言を預かってきたんだぜ!」
「王子からの伝言?それなら早く言って。王子に何を言われたの?」
私がそう言うと、スティブーンはドヤ顔でこう言った。
「そうそう!王子がパーティ開くから来いってさ!お前も来るだろ?」
………なんというか……王子といい、スティブーンといい……私の周りには自分勝手な人間が多すぎる気がしてきた。そして同時にこんなことを考えていた自分もバカバカしくなる。
「………いいわ。行くわよ」
「おっ。普段はパーティなんて……って言ってるローズが珍しいなぁ!」
「うるさいわね。行くって言ってんだから、少しは黙ってなさいよ」
「へいへーい」
だから私は思うんだ。今ぐらい……好きなように生きようと。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
303
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる