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番外編
『貴方に告白を②』拓海視点
しおりを挟む土曜日が好きだ。
なぜなら華恋さんが会社が無くて、僕には学校がないから。故に、今日こそが告白のしどき!だとそう思ったのだけど……。
「ご、ごめんね。拓海くん。お姉ちゃん今日仕事なんだ……」
申し訳なさそうに、菜乃花さんが言ってくるが、僕の頭は真っ白だった。華恋さんが……仕事?嘘だろ?だって今日は土曜日……。
「休日出勤というやつだよ……」
と、菜乃花さんはそう言った。……そうか。華恋さんは社会人だから、休日出勤があるんだ。……何で、そんなこと、考えなかったのだろう。
やはり、こういうのは……僕が子供だからか。
僕と華恋さんとの年齢差は七歳差で僕はまだ高校生。一方の華恋さんは大人の女性なのに。
「……そうですか。なら、しょうがないですよね……」
がっかり、とまではいかないけど、やはり残念だった、はずなのに……。
「(何で何処かほっとしているんだ?僕……)」
告白したかったはずなのに。華恋さんに、自分の想いを伝えて。それから、付き合いたかったはずなのに。
何でか……心の片隅で、告白しないで良かったと思っている自分がいるような気がする。
そんなことを思っていると、ピロン!と、僕のスマホに一通のメッセージが届いた。
「あれ……?先輩……?」
メッセージの内容はバイトの先輩からだ。内容は……〝拓海、今日バイトに来れるか?〟という内容だった。今日はシフトを入れていないはずなのに…
ちなみに、このバイトは期間限定のバイトである。部活に入っているので短期間バイトなのだが……まさかこの期間で変わってほしいとか言われるとは思ってなかった。
「ふーん……今日、先輩来れないのか……」
体調を崩したらしく、シフトを変えて欲しいとのことだ。……華恋さんは休日出勤だし、別に行っても支障はない。
それに、今は何も考えたくない。仕事をしていた方が気が楽だ。
そんなわけで、僕は〝いいですよー〟と先輩にLINEで返事をして、バイト先に向かった。
△▼△▼
「ごめんね、神崎くん。今日、バイトの日じゃないのに……」
「大丈夫ですよ。店長」
バイト先に着くと、店長が僕に謝ってきたので僕はそう返した。別に、店長が悪いわけではないのだから、謝らなくても良いのに……と、思いながらも、僕はバイトの制服に着替える。バイトは好きだ。接客も嫌いじゃないし。
「いらしゃいませ~」
そうこうしているうちに、お客さんが来た。僕はレジの前に立って、お客さんにいらっしゃいませ~と挨拶をして、そのお客さんの接客をしていく内に、
「神崎くん、休憩して良いよ。レジは私がするから」
「あ、はい。ありがとうございます」
交代制で、休憩時間になる。僕はお礼を言って休憩室に向かってまかないを食べた。
△▼△▼
僕は休憩室でまかないを食べてからスマホをいじっていた。話し相手はいないし、誰も来ないし。まかないは……美味しいけども、食べ知った味だし、新鮮な気分にはならないし。
「そろそろ休憩終わりよー。神崎くん」
と、スマホをいじっていると、バイト先の先輩の声がした。僕はスマホの電源を落としてポケットにしまってから休憩室から出る。
「はーい。わかりましたー」
そして、僕はバイトに戻るのと同時に、先輩に〝この料理、8番テーブに持っていってー!〟と、言われたので、僕はそれを持って8番テーブルに運ぶ。
「お待たせしました。ハンバーグ定食とオムライスです」
マニュアル通り、僕はお客さんにそう言って料理をテーブルに置いたのと同時に客の女性の顔が見えた。その人の顔を僕は知っている。だってその人は……華恋さんだった。
僕は思わず華恋さんの顔をガン見してしまったが、すぐ切り替える。
だって今はバイト中だから。僕は何事もなかったかのように、あのテーブルから離れ、他のお客さんの接客をし始めた。
だって、そうでもしないと――。
「(……集中できない……)」
あの人は誰だろうか。男の人と……仲よさそうに。僕には見せない笑顔をしていたから、彼氏かな? 華恋さんは休日出勤だったはずなのに、何でここに……?いや、今はお昼だし休憩中か……。
でも、隣の男の人は誰なのか。仲良さそうだし、友達……?それとも彼氏とか……? わからない。僕には全く見当がつかない。……もしかして華恋さんの恋人なのかな?だとしたら……嫌だ。
モヤモヤする……。
僕はそのモヤモヤを、バイトをすることで紛らわした
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