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番外編
『貴方に告白を①』拓海視点
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――好きだった。あの人のことが大好きで大好きでたまらなかった。
いつから好きだったのか、それは分からない。最初はただの憧れだったと思う。近所のお姉さん、そんな印象。
……でも、彼女と話していくうちに、どんどん惹かれていったんだ。彼女が笑うと僕も嬉しくなったし、彼女の笑顔をもっとみたいと思った。
その笑顔はどんな花よりも綺麗で輝いていて、僕の心を捉えて離さなかった。
優しく、ときに厳しい。そんな彼女は僕をいつでも包み込んでくれて、笑顔にさせてくれた。
いつの間にか、憧れは好意に変わっていたんだ。
この想いを彼女に伝えたいと思った。でも、出来なかった。
これに関しては、僕がヘタレというだけ。情けないことにね。
勇気を出して告白しようと決心したこともあったけど……結局言えなかった。
だってさ? もしフラれたらどうするんだよ。今までの関係が崩れるかもしれない。それが怖くて仕方なかったんだ。
しかし、
「お姉ちゃん、職場の人に告白されたんだって」
華恋さんの妹である菜乃花さんにそう伝えられた。言いづらそうに、そういった菜乃花さんだったが、僕は驚き過ぎて反応できなかった。……え? それ本当ですか? と聞き返すことも出来ず、僕はただ呆然としていた。
「あのね、こんなこと、私が言うべきじゃないとは思うんだけど……でも、拓海くんも、早く告白しないと、取られちゃうよ?」
菜乃花さんはそう言ってくれた。その言葉には優しさと心配が入り混じっているように感じられた。それは、わかっている。でも、今の僕には……
「ごめんなさい……」
そう言って走り去っていくことしか出来なかった。
△▼△▼
家に帰った僕は、部屋に入りベッドに飛び込んだ。そして、枕に顔を埋めながら考える。
菜乃花さんの言ったことは正しい。このままでは、本当に取られてしまうだろう。だからといって、告白していいものなのか……。そもそも、告白することで彼女に迷惑をかけてしまうんじゃないか? それに、振られる可能性も……
「めんどくさい……なぁ」
考えれば考えるほど思考がネガティブになってくる。ああもう! なんでこんなにうじうじしてるんだよ!! 自分の気持ちなんだろ!? はっきりしろよ!
「ヘタレ」
自虐的に呟きながら自分を責め立てる。しかし、いくら責めたところで変わるわけもなく、むしろ自分が嫌になるだけだった。
「華恋さん……」
好きだ、愛している。その一言さえ伝えられない自分に腹が立ち、歯噛みしながら拳を強く握った。……でも、伝えなくてはいけないのだ。ずっと後悔したまま過ごすなんて絶対に嫌だ。例え嫌われても構わない。想いを伝えることで前に進むことが出来るなら、それで良いじゃないか。
そうだ、それでいいんだ。
覚悟を決めた僕は勢いよく立ち上がる。
「…………告白、しよう」
――僕の短所は単純だということだが、今はそれがありがたかった。
いつから好きだったのか、それは分からない。最初はただの憧れだったと思う。近所のお姉さん、そんな印象。
……でも、彼女と話していくうちに、どんどん惹かれていったんだ。彼女が笑うと僕も嬉しくなったし、彼女の笑顔をもっとみたいと思った。
その笑顔はどんな花よりも綺麗で輝いていて、僕の心を捉えて離さなかった。
優しく、ときに厳しい。そんな彼女は僕をいつでも包み込んでくれて、笑顔にさせてくれた。
いつの間にか、憧れは好意に変わっていたんだ。
この想いを彼女に伝えたいと思った。でも、出来なかった。
これに関しては、僕がヘタレというだけ。情けないことにね。
勇気を出して告白しようと決心したこともあったけど……結局言えなかった。
だってさ? もしフラれたらどうするんだよ。今までの関係が崩れるかもしれない。それが怖くて仕方なかったんだ。
しかし、
「お姉ちゃん、職場の人に告白されたんだって」
華恋さんの妹である菜乃花さんにそう伝えられた。言いづらそうに、そういった菜乃花さんだったが、僕は驚き過ぎて反応できなかった。……え? それ本当ですか? と聞き返すことも出来ず、僕はただ呆然としていた。
「あのね、こんなこと、私が言うべきじゃないとは思うんだけど……でも、拓海くんも、早く告白しないと、取られちゃうよ?」
菜乃花さんはそう言ってくれた。その言葉には優しさと心配が入り混じっているように感じられた。それは、わかっている。でも、今の僕には……
「ごめんなさい……」
そう言って走り去っていくことしか出来なかった。
△▼△▼
家に帰った僕は、部屋に入りベッドに飛び込んだ。そして、枕に顔を埋めながら考える。
菜乃花さんの言ったことは正しい。このままでは、本当に取られてしまうだろう。だからといって、告白していいものなのか……。そもそも、告白することで彼女に迷惑をかけてしまうんじゃないか? それに、振られる可能性も……
「めんどくさい……なぁ」
考えれば考えるほど思考がネガティブになってくる。ああもう! なんでこんなにうじうじしてるんだよ!! 自分の気持ちなんだろ!? はっきりしろよ!
「ヘタレ」
自虐的に呟きながら自分を責め立てる。しかし、いくら責めたところで変わるわけもなく、むしろ自分が嫌になるだけだった。
「華恋さん……」
好きだ、愛している。その一言さえ伝えられない自分に腹が立ち、歯噛みしながら拳を強く握った。……でも、伝えなくてはいけないのだ。ずっと後悔したまま過ごすなんて絶対に嫌だ。例え嫌われても構わない。想いを伝えることで前に進むことが出来るなら、それで良いじゃないか。
そうだ、それでいいんだ。
覚悟を決めた僕は勢いよく立ち上がる。
「…………告白、しよう」
――僕の短所は単純だということだが、今はそれがありがたかった。
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