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十五話 『作戦』
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――ここで一つ。白鳥美咲のことについて話をしよう。
白鳥美咲の成績はあまり良くない。ギリギリ赤点を回避しているというレベルだ。
だというのに、頭の回転は早く、洞察力や観察力が優れている。それなのにどうして成績がギリギリなのかと言うと……答えは簡単。勉強する気が無いからだ。
美咲が本気になれば学年トップなんて余裕で取れるだろう。
そのため、やる気が全く無いためテスト前に一夜漬けをして乗り切っているのだ。そのせいでいつも赤点スレスレである。……しかし、彼女は人気者だ。明るい性格、容姿端麗な見た目から男子からの人気が高いし。それにこの前男装コンテストで優勝していた。
……確かにあのときの美咲はカッコよく、優勝も納得できるものだった。しかし……だからといって――。
「華恋!帰ろうぜ」
……これはないでしょう?!と、私は心の中で叫んだ。
△▼△▼
事の始まりは私が美咲に相談したときのことだ。
「……なら、こうしましょう。相手から諦めざる負えない状況を作り出すのよ」
そう言って美咲が私に言った作戦というのが……会社に美咲が乗り込んでくるというものだった。……初めて聞いたとき、思わず耳を疑ったものだ。
そして美咲を止めることは出来なかった。だってそれを却下する前に美咲がマシンガントークを始めてしまったんだもの……。結局、止めることが出来なかったし、本当にするとは思ってなかったし
「華恋先輩のこと呼んでいるわ……!」
「すごくイケメンだわ……先輩、紹介してくれないかな……」
会社の女の子たちがコソコソと話し始めた。……予想通りの反応だけども!
「華恋先輩の彼氏ですか?あれ!」
美奈ちゃんと環ちゃんが私の所に来た。
二人とも興奮気味で目を輝かせている。
うぅ………!
「……ええ。か、彼氏よ」
二人の勢いに押されて、つい言ってしまった。
もう後には引けない……!だってこれは佐藤先輩に諦めてもらうための手段なわけだし!
「やっぱり……!美男美女カップルだわ~~!」
美男美女……?!そんなことないと思うけど……男装した美咲はともかく、私はただの地味女だと思うんだけど。
「じ、じゃあ……私は帰るわね。お疲れ様、美奈ちゃん、環ちゃん」
「はい!また明日です!華恋先輩!!」
「さようなら~」
二人は笑顔で手を振って見送ってくれた。
「………ふーん」
面白くなさそうな声をしている佐藤先輩には気づかずに……
△▼△▼
「み、美咲。本当に来たのね……!」
「当たり前じゃない。それに男装するの楽しくなってきちゃったし」
美咲は男物のスーツを着ていた。その姿はとても似合っていてカッコいい。普段とのギャップも相まって余計にカッコよく見える。女だと分かっている私もドキドキしてしまうほどだ。
「あの佐藤とかいう男もあれだけの騒ぎになったら嫌でも話を聞くだろうし諦めてくれるといいわよねぇ」
美咲がそう言った直後、
「シャキとしなさいよ!」
声が聞こえてきてくる。女の子のようだ。隣には、拓海くんがいた。落ち込んでいる。
「……いい機会ね」
「え……?な、何を……」
グイ、と私の肩を抱き寄せ、美咲は不敵な笑みを浮かべている。
「(ま、まさか……こいつ……!)」
嫌な予感がして美咲を見ると、美咲は面白そうな顔でウインクをしてくる。
……これは、止められない……。
私は諦めて美咲の作戦に付き合うことにしたのだった。
白鳥美咲の成績はあまり良くない。ギリギリ赤点を回避しているというレベルだ。
だというのに、頭の回転は早く、洞察力や観察力が優れている。それなのにどうして成績がギリギリなのかと言うと……答えは簡単。勉強する気が無いからだ。
美咲が本気になれば学年トップなんて余裕で取れるだろう。
そのため、やる気が全く無いためテスト前に一夜漬けをして乗り切っているのだ。そのせいでいつも赤点スレスレである。……しかし、彼女は人気者だ。明るい性格、容姿端麗な見た目から男子からの人気が高いし。それにこの前男装コンテストで優勝していた。
……確かにあのときの美咲はカッコよく、優勝も納得できるものだった。しかし……だからといって――。
「華恋!帰ろうぜ」
……これはないでしょう?!と、私は心の中で叫んだ。
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事の始まりは私が美咲に相談したときのことだ。
「……なら、こうしましょう。相手から諦めざる負えない状況を作り出すのよ」
そう言って美咲が私に言った作戦というのが……会社に美咲が乗り込んでくるというものだった。……初めて聞いたとき、思わず耳を疑ったものだ。
そして美咲を止めることは出来なかった。だってそれを却下する前に美咲がマシンガントークを始めてしまったんだもの……。結局、止めることが出来なかったし、本当にするとは思ってなかったし
「華恋先輩のこと呼んでいるわ……!」
「すごくイケメンだわ……先輩、紹介してくれないかな……」
会社の女の子たちがコソコソと話し始めた。……予想通りの反応だけども!
「華恋先輩の彼氏ですか?あれ!」
美奈ちゃんと環ちゃんが私の所に来た。
二人とも興奮気味で目を輝かせている。
うぅ………!
「……ええ。か、彼氏よ」
二人の勢いに押されて、つい言ってしまった。
もう後には引けない……!だってこれは佐藤先輩に諦めてもらうための手段なわけだし!
「やっぱり……!美男美女カップルだわ~~!」
美男美女……?!そんなことないと思うけど……男装した美咲はともかく、私はただの地味女だと思うんだけど。
「じ、じゃあ……私は帰るわね。お疲れ様、美奈ちゃん、環ちゃん」
「はい!また明日です!華恋先輩!!」
「さようなら~」
二人は笑顔で手を振って見送ってくれた。
「………ふーん」
面白くなさそうな声をしている佐藤先輩には気づかずに……
△▼△▼
「み、美咲。本当に来たのね……!」
「当たり前じゃない。それに男装するの楽しくなってきちゃったし」
美咲は男物のスーツを着ていた。その姿はとても似合っていてカッコいい。普段とのギャップも相まって余計にカッコよく見える。女だと分かっている私もドキドキしてしまうほどだ。
「あの佐藤とかいう男もあれだけの騒ぎになったら嫌でも話を聞くだろうし諦めてくれるといいわよねぇ」
美咲がそう言った直後、
「シャキとしなさいよ!」
声が聞こえてきてくる。女の子のようだ。隣には、拓海くんがいた。落ち込んでいる。
「……いい機会ね」
「え……?な、何を……」
グイ、と私の肩を抱き寄せ、美咲は不敵な笑みを浮かべている。
「(ま、まさか……こいつ……!)」
嫌な予感がして美咲を見ると、美咲は面白そうな顔でウインクをしてくる。
……これは、止められない……。
私は諦めて美咲の作戦に付き合うことにしたのだった。
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