この手が取るものは……

かんな

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七話 『相談』

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ボーッとして頭が回らない。佐藤先輩は私のことを好き?なんで?どうして……という言葉だけが頭を駆け巡り私は早退してしまった。


体調不良ということで、会社を早退して帰宅した私はまだボーッとしている。だってあまりにも急展開すぎるし……何なら、まだドッキリの可能性だってあり得るよね。


しかし、それはすぐに思い直す。佐藤先輩は冗談であんなことを言う人ではない。それは今までの彼と接してきたことで分かっている。
だから……つまり、本当ってことで……私は佐藤先輩に告白されたってこと……? 考えれば考えるほど頭が混乱する。


「ただいまー」


妹の声が聞こえてくる。妹は今は華の大学生であり、彼女もいる。それ故に恋愛に関しては私より先輩だ。妹に聞けば何かわかるだろうか……?


「……あれ?お姉ちゃん……?帰ってたの?」


「う、うん……ちょっと早退して……」


妹は私の様子がおかしいことに気づいたのか心配そうな顔を浮かべている。流石妹だ。察しがいい。
そして、私の隣に腰掛けると、優しく背中をさすってくれた。ああ……落ち着く……やっぱり妹がいると安心できるなぁ……


「どうしたのお姉ちゃん。なんかあったの?話聞くよ?」


そう言って微笑む菜乃花。私が姉なのに今だけは菜乃花がお姉さんみたいに見える。だからなのだろう……


「じ、実はね……」


――思わず話してしまった。


△▼△▼


「ええー!?イケメンの先輩に告白された!?その先輩、めちゃくちゃ見る目あるね!」


興奮気味にそう言った菜乃花。もう……何の冗談よ……私に告白すると見る目があるとか……そんなわけないじゃない……


「……でも、私何も言えなかった。返事すらも……できないまま帰っちゃった……」


相手に、失礼なことをしていると思う。だけど、今の私には無理だった。


「………別にいいんだよ。お姉ちゃん。返事はすぐじゃなくてもさ。大事なのは、返事をすることなんだから」


そう強くいう菜乃花。………菜乃花が言うと説得力が違うわ……何せ、三人の告白を受けたんだもの……しかも、告白を同時に受けたという凄い体験をしてるんだもの……


「私は、お姉ちゃんが納得する答えを選べば良いと思う。後悔しないようにさ。私はどんな選択してもお姉ちゃんの味方だよ?」


………菜乃花は優しい。いつもこうやって私を助けてくれる。昔からずっと変わらない優しさ。それがとても嬉しい。
そうだよね……!


「………ありがとう、菜乃花。元気出たよ」


「ううん、これはお姉ちゃんの受け売りだから」


えへへと笑う妹を見て、心が洗われるようだった。……しかし、受け売り?私の?私、何か言ったっけ……?


「あ、電話だ……ごめんね、お姉ちゃん」


そう言って部屋を出ていく妹の後ろ姿を見送ると、私は再び思考の海に身を投げた。…菜乃花はそう言ってくれたものの、やはり悩んでしまう。
――佐藤先輩。カッコよくて頭が良くて運動神経抜群で人望があって、とにかくモテる。それに性格もいい。欠点なんて見つからないくらい完璧である。


普通なら考えることもなく、〝はい〟と答える。なのに私は告白されてからずっと考えている。デメリットとメリットを。デメリットとメリットなんて考えることなく、本当なら〝はい〟と返事するべきだ。それなのに、私は悩んでいる。


「………はぁ」


と、私はため息を吐いた。
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