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四話 『感情』
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送ってもらいながら、私たちは他愛のない会話を繰り返す。相変わらず、仕事の話ばかりだったけども。
佐藤先輩と話すときは必ず仕事の話になる。仕事仲間だから当たり前、と言われたらそれはそうなのだが。
「ありがとうな。桜田」
ニコニコしながらそう言う佐藤先輩。……何が〝ありがとう〟なのだろう?疑問に思いながらも、首を傾げると、
「いやー……だって俺と普通に話してくれるの桜田だけだし。本当にありがたいよ」
……普通に……というのはまぁ……あれだろう。佐藤先輩ってモテモテだし、女子社員にも男子社員にも好かれているし、キャーキャー言われているから、普通の会話なんて出来ないのだろう。
ファンクラブがあるぐらい人気あるし。確かに佐藤先輩は格好いい部類に入ると思う。背も高い方だと思うし、性格もいいし、気配り上手で優しいし、面倒見も良いし。
顔も悪くないしね。……ファンクラブが出来る程人気があるんだから当然か。私は入っていない。興味もないし。それに……
「よく分からないけどさ、みんな俺が何かを言うと視線を逸らすんだよな……なんでだろ?」
それは佐藤先輩がイケメンだからですよ!とは言えない。……本人はイケメンという自覚ないし……これが無自覚なのが凄いなぁ……とは思うけれど。
「だから桜田と話していると楽なんだよね」
……きっと佐藤先輩に悪気は一切ないのだろう。ただ純粋に私と話していて楽しいと思ってくれているだけなのだ。だけども……
「そうですか。ありがとうございます。ですが、そんなこと他の人に言ったら駄目ですよ」
そう、本当に言ってはいけない。もし他の人が聞いたら勘違いするかもしれない。余計な敵を増やすのは良くないことだ。
「えっ?どうして?」
「どうしてもです。あ……ここで大丈夫です。佐藤先輩、ありがとうございます」
私がそう言うと、佐藤先輩は戸惑っていたけど、脇に車を止めて、ドアを開けてくれた。
「本当にここでいいの?」
「はい。送ってくださりありがとうございました」
私はぺこりと頭を下げると、急いで車を降りた。そして、佐藤先輩が車のエンジンをかけたのを確認してから、私はその場を去った。
△▼△▼
家に帰る途中に、人影が見えた。誰かいるのかと思い、そちらの方へ目を向けてみると、そこには――。
「拓海くん?こんなところでどうしたの?」
私の家の前でしゃがみ込んでいる拓海くんの姿があったのだ。声をかけると、彼は慌てていた様子だ。……?一体、どうしたんだろうか? すると、拓海くんはギュッと目を瞑りながら、
「あ、あの!今日のお昼、僕のバイト先に……その男の人と一緒にいましたけどあれって…彼氏ですか……?」
……拓海くんは震えていた。今にも泣きそうな顔をしている。……何でこんな顔をするのだろう?分からない……分からないけど……
「いえ、違うわ。彼は仕事仲間で、彼氏じゃないわよ」
私がそう答えると、拓海くんはバッと顔を上げる。どうして、こんなに驚いているんだろう?分からない。
「そ、そうですか!安心しました!では、僕はこれで!」
拓海くんは嬉しそうに微笑むと、すぐに立ち上がって、走り去った。………何だったんだ?一体……
「(………私のことが好きなの?)」
そんなわけがないのに。拓海くんが私のことが好きなんて……あるわけがないだろう。それに、もし私のことが好きだとしてもそんなの一時的な迷いであり、一時的な感情だろう。
「(……はぁ)」
心の中でため息を吐きながら、家の中に入った。
佐藤先輩と話すときは必ず仕事の話になる。仕事仲間だから当たり前、と言われたらそれはそうなのだが。
「ありがとうな。桜田」
ニコニコしながらそう言う佐藤先輩。……何が〝ありがとう〟なのだろう?疑問に思いながらも、首を傾げると、
「いやー……だって俺と普通に話してくれるの桜田だけだし。本当にありがたいよ」
……普通に……というのはまぁ……あれだろう。佐藤先輩ってモテモテだし、女子社員にも男子社員にも好かれているし、キャーキャー言われているから、普通の会話なんて出来ないのだろう。
ファンクラブがあるぐらい人気あるし。確かに佐藤先輩は格好いい部類に入ると思う。背も高い方だと思うし、性格もいいし、気配り上手で優しいし、面倒見も良いし。
顔も悪くないしね。……ファンクラブが出来る程人気があるんだから当然か。私は入っていない。興味もないし。それに……
「よく分からないけどさ、みんな俺が何かを言うと視線を逸らすんだよな……なんでだろ?」
それは佐藤先輩がイケメンだからですよ!とは言えない。……本人はイケメンという自覚ないし……これが無自覚なのが凄いなぁ……とは思うけれど。
「だから桜田と話していると楽なんだよね」
……きっと佐藤先輩に悪気は一切ないのだろう。ただ純粋に私と話していて楽しいと思ってくれているだけなのだ。だけども……
「そうですか。ありがとうございます。ですが、そんなこと他の人に言ったら駄目ですよ」
そう、本当に言ってはいけない。もし他の人が聞いたら勘違いするかもしれない。余計な敵を増やすのは良くないことだ。
「えっ?どうして?」
「どうしてもです。あ……ここで大丈夫です。佐藤先輩、ありがとうございます」
私がそう言うと、佐藤先輩は戸惑っていたけど、脇に車を止めて、ドアを開けてくれた。
「本当にここでいいの?」
「はい。送ってくださりありがとうございました」
私はぺこりと頭を下げると、急いで車を降りた。そして、佐藤先輩が車のエンジンをかけたのを確認してから、私はその場を去った。
△▼△▼
家に帰る途中に、人影が見えた。誰かいるのかと思い、そちらの方へ目を向けてみると、そこには――。
「拓海くん?こんなところでどうしたの?」
私の家の前でしゃがみ込んでいる拓海くんの姿があったのだ。声をかけると、彼は慌てていた様子だ。……?一体、どうしたんだろうか? すると、拓海くんはギュッと目を瞑りながら、
「あ、あの!今日のお昼、僕のバイト先に……その男の人と一緒にいましたけどあれって…彼氏ですか……?」
……拓海くんは震えていた。今にも泣きそうな顔をしている。……何でこんな顔をするのだろう?分からない……分からないけど……
「いえ、違うわ。彼は仕事仲間で、彼氏じゃないわよ」
私がそう答えると、拓海くんはバッと顔を上げる。どうして、こんなに驚いているんだろう?分からない。
「そ、そうですか!安心しました!では、僕はこれで!」
拓海くんは嬉しそうに微笑むと、すぐに立ち上がって、走り去った。………何だったんだ?一体……
「(………私のことが好きなの?)」
そんなわけがないのに。拓海くんが私のことが好きなんて……あるわけがないだろう。それに、もし私のことが好きだとしてもそんなの一時的な迷いであり、一時的な感情だろう。
「(……はぁ)」
心の中でため息を吐きながら、家の中に入った。
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