この手が取るものは……

かんな

文字の大きさ
上 下
3 / 21

三話 『営業』

しおりを挟む
今日は金曜日で、そして営業の仕事をしていた。私は普段は事務の仕事しかしていないけど、今日は営業部が人手が足りないということで駆り出されていたのだ。


相棒はまさかの佐藤先輩。佐藤先輩の相手なんて沢山いるはずなのに……と、思っていたらどうやら争奪戦すぎて上司が争いが収まるまで、私が佐藤先輩と組んで仕事をするようにと決めたらしい。


まぁ、私は別に意識はしないし、いつも通り仕事ができるからいいんだけども……


「何であんな奴が……!」


「桜田さんずるいー!」


などという声が聞こえてくる。嫉妬の視線を向けられるのは嫌だが、上司命令だから仕方がないし、そこはみんな大人。すぐに自分の仕事に集中し始めた。


そこら辺は真面目な人たちばかりだし。そこだけ見れば本当にいい職場だなと思う。……ただ、一部を除いては。


まぁ、そこについては割愛するとして……私達は無事に取引を終え、帰る準備をしていたときだ。


「せっかくだし、一緒に食べにいかねーか?昼だし」


突然の誘いだったが、別に不自然なことではない。だって昼の時間なわけだし。だが、敵を増やすのは目に見えている。
私としては行きたくないのだが……断るのは失礼にあたるし。てゆうか、こんなイケメンからの誘い断る女とかいないわ。


だから仕方がないので、私ははい、と首を縦に振りながら私たちはファミレスへと向かった。


△▼△▼


場所はファミレス。何処にでもある普通のファミレスだ。するとそこには――。


「いらっしゃいませ」


店員の声を聞きながら、私たちは席に座りメニュー表を見る。佐藤先輩はハンバーグ定食を頼むようだ。ちなみに、私はオムライスセットにした。
注文してしばらく待つ間、仕事のことを話すので、会話は気まずくはなかった。だけどやっぱり周りの目線が痛かった。


だが、これも仕事。割り切ろう。そう思い、気にしないようにした。…そして


「お待たせしました。ハンバーグ定食とオムライスです」


……聞き覚えるのある声がして思わず顔を見るとそこには……


「(あれ?拓海くん?なんでここに)」


目の前には拓海くんがいた。私を見て驚いていたが、すぐ営業に戻っていく。


「ん?桜田、どうした?」


「あ、いえ。なんでもないですよ」


そう言いながらも私はオムライスを食べた。


△▼△▼


会計を済ませ、店を出る。何でこんな時間に拓海くんがいるのか分からなかったけども、よくよく考えてみたら、今日は土曜日だった。最近、仕事をしているせいか曜日感覚がなくなってきているみたいだ。


まぁ、この時期は忙しいし……と、思いながらため息を吐いていると、


「おーい、桜田?大丈夫か?」


心配そうな顔をする佐藤先輩。どうやらかなり疲れているように見えたらしい。
確かにちょっと寝不足気味ではあるけども、そこまで心配するほどではない。


「えぇ、大丈夫ですよ」


「そっか。ならよかった、今日は、これで仕事終わりだし送るよ」


「え?悪いですよ」


「遠慮すんなって」
  

佐藤先輩は微笑んだ。……いや、まぁ、先輩のことだし悪気はゼロなんだろうけど。
断るのもあれだし、ここは大人しく送ってもらうことにした。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

薔薇と少年

白亜凛
キャラ文芸
 路地裏のレストランバー『執事のシャルール』に、非日常の夜が訪れた。  夕べ、店の近くで男が刺されたという。  警察官が示すふたつのキーワードは、薔薇と少年。  常連客のなかにはその条件にマッチする少年も、夕べ薔薇を手にしていた女性もいる。  ふたりの常連客は事件と関係があるのだろうか。  アルバイトのアキラとバーのマスターの亮一のふたりは、心を揺らしながら店を開ける。  事件の全容が見えた時、日付が変わり、別の秘密が顔を出した。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

処理中です...