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『桜田菜乃花の選択 〜中編〜』
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もう逃れられない。でも、もう覚悟してしまったから。
「……そう」
彼女の声が聞こえてくる。視線は逸らさない。彼女はこちらを見つめたままでいた。……沈黙の時間が流れる。それは一秒にも満たないものかもしれないし、何分も経っているように感じるものだった。
この静寂を破ったのは彼女だった。
彼女は大きく息を吐いて、言葉を発したのだ。
「…ここに来る時点でわかっていたことだけど……」
嬉しさを混じった彼女の言葉。その言葉を聞いて私は逃げたくなる。しかし、そんなことはできない。だってこれは私自身が選んだことだから。だから私は自分の口を開く。
震える声で……精一杯に。
私は、今ここで――この人への想いを伝えるために、言葉を紡ぐ。
「…悩んでいました。……本当にこれでいいのかと。ずっと考えてました。……でも……もう決めたんです。貴方に」
心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。手が震えている。汗が滲んでいる。それでも、最後まで言い切るんだ。これが私の答えなんだから……
私は言う。はっきりと。その人の目を見ながら。
「…そうか、ふふっ、私か……そうか……」
彼女が笑みを浮かべる。嬉しくて仕方がないといった表情だ。その顔を見て私は胸が締め付けられる思いになる。でも、私は……。
「……真白先輩」
彼女の名前を呼ぶと、彼女は笑うのをやめた。真剣な眼差しで私を見る。
そして言った。
「何で私を選んだのか、と聞いてもいい?」
……聞かれるのは当然だろう。私が逆の立場なら絶対に聞く。……だからこそ言わないといけない。私が選んだ理由を。
「……私、三人とも大好きなんです。……こんな性格なので、誰か一人なんて選べなかったんです」
嘘偽りのない本心を口にする。そうだ、私は三人共好きだった。彼女たちのことを嫌いになったことなど一度もない。……だからどちらかを選ぶということができなかった。
それが一番の問題なのだ。……彼女たちは優しいから何も言ってこないけど、きっと傷つけてしまっていると思う。
私が曖昧な態度を取り続けていたせいで、彼女たちを傷つけてしまった。だから……今こそ伝えよう。
「……私は誰か一人を選んでしまうことで、他の二人を傷つけてしまうことが嫌だったんです。自分が中途半端なことをしている自覚もありました。それで悩んでいました。どうすればいいかって……でも、考えれば考えるほどわからなくなっていって……」
言葉を続けるごとに声が小さくなっていく。自分でも何を言っているかわからなくなってきた。頭の中でまとまらない思考がぐるぐる回っているような感覚に陥る。
「落ち着いて。ゆっくり、ね?」
彼女は優しく語りかけてくる。それに背中を押されるようにして私は続きを話すことができた。……私は思っていたことを全て吐き出す。今まで悩んでいたこと全てを彼女にぶつけた。
「………奏先輩、真美ちゃん……そして……真白先輩。誰を選ぶこともできなくて、ずっと悩んでいました。……全員を選ぶことで傷つけてしまうのはわかっていたから」
彼女は黙って私の話を聞いてくれている。……その表情からは何を思っているのかわからない。でも、私は話を続ける。
「でも、そんな考え甘いことは分かっていました。だって誰かを選んだ時で傷つくのは必然です。だから答えが出なくて、ずっとずっと悩んでいました」
声は震え、涙声になっていく。……それでも私は言葉を続ける。
「真白先輩は……優しいですけど小説では厳しいことを言ってくれる。……周りは怖いって言うけど、私はそれが嬉しかったんです」
そう、彼女は厳しい。でもそれは私のことを思って言ってくれていることだ。
だから私は彼女のことを信頼しているし、尊敬もしている。……私が小説で悩んでいる時にいつも的確なアドバイスをくれるのは彼女だったし。
「そして私が悩んでいる時にいつも声をかけてくれるのは真白先輩でした。小説に厳しくて、でも優しい。……それが嬉しかったんです」
彼女は私が悩んでいる時にいつも声をかけてくれる。厳しいことを言いながらも、最後には私の背中を押してくれるのだ。そんな彼女がいてくれたから私はここまで来れたと思っている。
「だから……私は……」
声が震える。感情が高ぶっているせいだろう。上手く言葉が出てこない。それでも、私は言うんだ。自分の気持ちを彼女に伝えるために……。
「優柔不断でどうしようもない私ですけど……私は、真白先輩のことが好きです」
言い切ってしまった。もう後戻りはできない。私は彼女の反応を待つことにしたのだが……彼女は黙ったままだった。
沈黙の時間が流れる。私は彼女の言葉を待つことしかできなかった。心臓がバクバクと鳴っているのがわかるし、手汗がすごいことになっていた。
「……菜乃花ちゃん」
彼女の声が聞こえた。私は恐る恐る顔を上げる。そこには……笑顔を浮かべている彼女がいた。その笑顔を見た瞬間、私の胸が高鳴るのを感じる。
「ありがとう、菜乃花ちゃん、私を選んでくれて」
そう言って彼女は私の手を握った。暖かい手の感触を感じる。彼女の体温が伝わってくるような気がした。
「菜乃花ちゃん、私のことを選んでくれるのとても嬉しいよ」
微笑みながら、彼女は私に向かってそう言った。その笑顔を見ると胸が熱くなるような感覚を覚える。
「だからね。私も、菜乃花ちゃんに伝えたいことがあるの」
彼女はそう言うと、握っていた私の手をさらに強く握った。そして……真剣な眼差しで私を見つめると、ゆっくりと口を開いたのだ。
「私もね、菜乃花ちゃんのことが好きよ。好きすぎてどうにかなってしまいそうなくらいには。私ってね、独占欲が強いし、面倒臭い女なの。だから、他の女の子と仲良くしているところを見ると嫉妬しちゃうし、独り占めしたくなる」
彼女はそう言いながら私を見る。真白先輩らしからぬ不安げな表情だった。
「独り占めしたい、なんて思っちゃうし、私と付き合ったら嫉妬しちゃうかもしれない。それでも菜乃花ちゃんはいいの?」
そう言って彼女は私の目を見る。私は彼女から視線を逸らすことができなかった。彼女の瞳に吸い込まれそうになるような感覚を覚える。……そして気づいた時には頷いていた。
「はい、真白先輩がいいです」
私がそう言うと、彼女は嬉しそうな表情を浮かべると私を抱きしめたのだ。突然のことに驚いたけど、私も彼女を抱きしめることにした。お互いの体温を感じることができて心地よかった。しばらく抱きしめ合った後――。
「キスしましょ」
彼女はそう言うと私の顎に手を当てて、クイッと上にあげた。そしてそのまま顔を近づけてくる。私は目を閉じて……唇に柔らかいものが触れたのを感じたのだ。それは一瞬のことだったけど、私にとってはとても長く感じられた――。
「(幸せすぎて死にそう)」
私――桜田菜乃花は……今、人生で一番幸せかもしれない……と、そんなことを考えていた。……これが私の考えた答え。私が選んだ選択。
間違っていると言われたらそうかもしれない。でも、私は……これが正しいと思っている。
だから後悔なんてしない。周りにどれだけ言われようとも、これが私の選んだ道だから……。
「あ。そうそう…菜乃花ちゃん……」
「え?何ですか?」
真白先輩はニッコリと微笑みながらこう言った。
「……そう」
彼女の声が聞こえてくる。視線は逸らさない。彼女はこちらを見つめたままでいた。……沈黙の時間が流れる。それは一秒にも満たないものかもしれないし、何分も経っているように感じるものだった。
この静寂を破ったのは彼女だった。
彼女は大きく息を吐いて、言葉を発したのだ。
「…ここに来る時点でわかっていたことだけど……」
嬉しさを混じった彼女の言葉。その言葉を聞いて私は逃げたくなる。しかし、そんなことはできない。だってこれは私自身が選んだことだから。だから私は自分の口を開く。
震える声で……精一杯に。
私は、今ここで――この人への想いを伝えるために、言葉を紡ぐ。
「…悩んでいました。……本当にこれでいいのかと。ずっと考えてました。……でも……もう決めたんです。貴方に」
心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。手が震えている。汗が滲んでいる。それでも、最後まで言い切るんだ。これが私の答えなんだから……
私は言う。はっきりと。その人の目を見ながら。
「…そうか、ふふっ、私か……そうか……」
彼女が笑みを浮かべる。嬉しくて仕方がないといった表情だ。その顔を見て私は胸が締め付けられる思いになる。でも、私は……。
「……真白先輩」
彼女の名前を呼ぶと、彼女は笑うのをやめた。真剣な眼差しで私を見る。
そして言った。
「何で私を選んだのか、と聞いてもいい?」
……聞かれるのは当然だろう。私が逆の立場なら絶対に聞く。……だからこそ言わないといけない。私が選んだ理由を。
「……私、三人とも大好きなんです。……こんな性格なので、誰か一人なんて選べなかったんです」
嘘偽りのない本心を口にする。そうだ、私は三人共好きだった。彼女たちのことを嫌いになったことなど一度もない。……だからどちらかを選ぶということができなかった。
それが一番の問題なのだ。……彼女たちは優しいから何も言ってこないけど、きっと傷つけてしまっていると思う。
私が曖昧な態度を取り続けていたせいで、彼女たちを傷つけてしまった。だから……今こそ伝えよう。
「……私は誰か一人を選んでしまうことで、他の二人を傷つけてしまうことが嫌だったんです。自分が中途半端なことをしている自覚もありました。それで悩んでいました。どうすればいいかって……でも、考えれば考えるほどわからなくなっていって……」
言葉を続けるごとに声が小さくなっていく。自分でも何を言っているかわからなくなってきた。頭の中でまとまらない思考がぐるぐる回っているような感覚に陥る。
「落ち着いて。ゆっくり、ね?」
彼女は優しく語りかけてくる。それに背中を押されるようにして私は続きを話すことができた。……私は思っていたことを全て吐き出す。今まで悩んでいたこと全てを彼女にぶつけた。
「………奏先輩、真美ちゃん……そして……真白先輩。誰を選ぶこともできなくて、ずっと悩んでいました。……全員を選ぶことで傷つけてしまうのはわかっていたから」
彼女は黙って私の話を聞いてくれている。……その表情からは何を思っているのかわからない。でも、私は話を続ける。
「でも、そんな考え甘いことは分かっていました。だって誰かを選んだ時で傷つくのは必然です。だから答えが出なくて、ずっとずっと悩んでいました」
声は震え、涙声になっていく。……それでも私は言葉を続ける。
「真白先輩は……優しいですけど小説では厳しいことを言ってくれる。……周りは怖いって言うけど、私はそれが嬉しかったんです」
そう、彼女は厳しい。でもそれは私のことを思って言ってくれていることだ。
だから私は彼女のことを信頼しているし、尊敬もしている。……私が小説で悩んでいる時にいつも的確なアドバイスをくれるのは彼女だったし。
「そして私が悩んでいる時にいつも声をかけてくれるのは真白先輩でした。小説に厳しくて、でも優しい。……それが嬉しかったんです」
彼女は私が悩んでいる時にいつも声をかけてくれる。厳しいことを言いながらも、最後には私の背中を押してくれるのだ。そんな彼女がいてくれたから私はここまで来れたと思っている。
「だから……私は……」
声が震える。感情が高ぶっているせいだろう。上手く言葉が出てこない。それでも、私は言うんだ。自分の気持ちを彼女に伝えるために……。
「優柔不断でどうしようもない私ですけど……私は、真白先輩のことが好きです」
言い切ってしまった。もう後戻りはできない。私は彼女の反応を待つことにしたのだが……彼女は黙ったままだった。
沈黙の時間が流れる。私は彼女の言葉を待つことしかできなかった。心臓がバクバクと鳴っているのがわかるし、手汗がすごいことになっていた。
「……菜乃花ちゃん」
彼女の声が聞こえた。私は恐る恐る顔を上げる。そこには……笑顔を浮かべている彼女がいた。その笑顔を見た瞬間、私の胸が高鳴るのを感じる。
「ありがとう、菜乃花ちゃん、私を選んでくれて」
そう言って彼女は私の手を握った。暖かい手の感触を感じる。彼女の体温が伝わってくるような気がした。
「菜乃花ちゃん、私のことを選んでくれるのとても嬉しいよ」
微笑みながら、彼女は私に向かってそう言った。その笑顔を見ると胸が熱くなるような感覚を覚える。
「だからね。私も、菜乃花ちゃんに伝えたいことがあるの」
彼女はそう言うと、握っていた私の手をさらに強く握った。そして……真剣な眼差しで私を見つめると、ゆっくりと口を開いたのだ。
「私もね、菜乃花ちゃんのことが好きよ。好きすぎてどうにかなってしまいそうなくらいには。私ってね、独占欲が強いし、面倒臭い女なの。だから、他の女の子と仲良くしているところを見ると嫉妬しちゃうし、独り占めしたくなる」
彼女はそう言いながら私を見る。真白先輩らしからぬ不安げな表情だった。
「独り占めしたい、なんて思っちゃうし、私と付き合ったら嫉妬しちゃうかもしれない。それでも菜乃花ちゃんはいいの?」
そう言って彼女は私の目を見る。私は彼女から視線を逸らすことができなかった。彼女の瞳に吸い込まれそうになるような感覚を覚える。……そして気づいた時には頷いていた。
「はい、真白先輩がいいです」
私がそう言うと、彼女は嬉しそうな表情を浮かべると私を抱きしめたのだ。突然のことに驚いたけど、私も彼女を抱きしめることにした。お互いの体温を感じることができて心地よかった。しばらく抱きしめ合った後――。
「キスしましょ」
彼女はそう言うと私の顎に手を当てて、クイッと上にあげた。そしてそのまま顔を近づけてくる。私は目を閉じて……唇に柔らかいものが触れたのを感じたのだ。それは一瞬のことだったけど、私にとってはとても長く感じられた――。
「(幸せすぎて死にそう)」
私――桜田菜乃花は……今、人生で一番幸せかもしれない……と、そんなことを考えていた。……これが私の考えた答え。私が選んだ選択。
間違っていると言われたらそうかもしれない。でも、私は……これが正しいと思っている。
だから後悔なんてしない。周りにどれだけ言われようとも、これが私の選んだ道だから……。
「あ。そうそう…菜乃花ちゃん……」
「え?何ですか?」
真白先輩はニッコリと微笑みながらこう言った。
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