君は誰の手に?

かんな

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『ダメ出し』

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あの後、遊園地に行った後はいろんな所に行った。映画や買い物をしたりと、普通のお出かけや、小説の話などをして私達のゴールデンウィークが終わった。


とても楽しかったし、幸せだったけど、罪悪感はあった。早く、答えを出したい。三人の青春――高校生活を私が取り上げるわけにはいかないから。


三人は優しいから。何も言わないで待ってくれている。その優しさに甘えちゃいけないってわかっているのに。


優柔不断で何もかもが中途半端な自分が嫌いだ。でも、どうしようもないんだ。自分のことなのにわからない。どうしていいのかわからない。ただ、苦しいだけ。


だけど、小説を書いているときだけは忘れられる。複雑な恋も、人間関係も、全て忘れて物語の世界に浸れる。


現実逃避していると言われればそれまでだが、そうするしかないのだ。だって私は弱い人間だから。


それに――。


「………菜乃花ちゃん。これ……」


小説を書いているときだけはみんな愛の言葉を囁いて来ないし、対等な友達として接してくれる。それが心地良い。この時間がずっと続けばいいのにと思うほどに。


だけど――。


「…え……?…あ、あの……何処か面白くない部分が……?」


こういう時の真白先輩は怖い。"小説"に良くも悪くも真剣な真白先輩。だから、少しでも悪い部分があれば容赦なく指摘してくる。


はっきり言ってくれるのはありがたいことだし、改善点を見つけてくれることは嬉しいんだけど、やっぱり怖いものは怖い。


「面白くないっていうより……」


真白先輩の眉間にシワが寄る。ヤバいっ……!本気で怒ってらっしゃる!そんなに面白くなかったかなぁ……?


「途中までは面白かったわ。主人公の描写とか、ヒロインの心理描写も良いと思ったわ。ヒロインが主人公を好きになる理由は分かるし。でも、途中で主人公の幼馴染が出てくる辺りから急に文章がおかしくなった気がしたの」


……私が今書いたのは"駆け上がる君へ"という恋愛小説だ。主人公の雄太がヒロインである小鳥を好きになる話だ。


小鳥は陸上部のマネージャーで、彼女目当てで陸上部に入った雄太だったが、あまりの練習のキツさに退部する人も続出し、雄太自身も辞めようと思っていたところだった。


しかし、部長の説得で退部するのを辞めて、そこから陸上の楽しさを知っていく……という話だったのだが、確かに主人公の幼馴染はいらなかったかもしれない。

私の個人的な好みとしてはいるべきなのだが、ストーリー的には全く必要ではない。寝取り展開を書きたいという欲が出てしまった結果がこれだよ……。


「寝取り展開は別にいいと思うけど。でも、心変わりが唐突過ぎる気がするのよね。それまで散々主人公に気があるみたいなこと言っておいていきなり態度を変えて来たし」


……確かに後半はほぼ深夜テンションで書いたし、勢いに任せた感じがあるけど……!今読み返したら後半の展開グチャグチャやん……よくこれ真白先輩に読ませようと思えたな私……。


「まあ……後半の展開は全部書き換えたらいい感じになると思うわ」


「そ、そうですよね……!頑張ります……!」


結局、この後は小説を書き直したり、プロットを作ったりして部活動は終わった。
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