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十三話
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この六年間の距離を埋めるように、私たちはたくさん話をした。今まであったことをお互いに話しては笑い合った。
恋心はまだある。未練がましい女だと思われても仕方ないけれど、私は今でも彼女が好きだ。でも、沙織は違うし……それに……
「私ね。結婚するんだ」
その言葉に一瞬で息が出来なくなった。心臓も止まったんじゃないかって思うくらいに痛かった。……きっと、私は傷付いた顔をしていたのだろう。だけども、今はもう大人。そんなことで動揺なんてしない。
笑顔を張り付けて、おめでとうと伝える。そして、結婚式には呼んでねとも伝えた。彼女は嬉しそうにありがとうと言ってくれた。結婚相手は学生時代からの彼氏らしい。
「……あの、彼氏とまだ続いていたのね…意外だわ……」
「ええ。あの頃は取っ替え引っ替えしてたけど、龍馬に出会ってから一途になったのよ?」
そういってない胸を張る沙織。それを見ながら笑みを零し、
「そう……なら、おめでとう。学生時代から……ということは変な男じゃなさそうだし、良かったじゃない」
「ふふーん、そうでしょう?で、杏奈は?好きな人とかいないの?彼氏とかいる?」
「いないわよ。……でも、最近気になっている人ならいるわ」
嘘は……ついていない。好きな人……とゆうか、憧れている人がいる。彼は同じ職場で何を考えているのか分からない不思議系男子だが、仕事が出来るし、何処となく沙織に似ていた人だ。
「………そう」
それ以上の言葉を沙織は言わなかった。ただ、少し寂しげな表情をしただけだ。……私はただそれを見つめる。
「(……このまま、時間が止まればいいのになぁ……)」
そんな叶わない願いを思いながら、私たちは隣でただ手を握っていた。
△▼△▼
時間というものは有限である。特に社会人になってしまえば尚更だ。だから私たちが過ごせる時間もごく僅かになっていく。
「………またね。結婚式、呼ぶね」
「………ええ。またね」
結婚式、というワードに心が痛みながらも、なんとか平然と返した。
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次回、最終回です。よろしくお願いします!
恋心はまだある。未練がましい女だと思われても仕方ないけれど、私は今でも彼女が好きだ。でも、沙織は違うし……それに……
「私ね。結婚するんだ」
その言葉に一瞬で息が出来なくなった。心臓も止まったんじゃないかって思うくらいに痛かった。……きっと、私は傷付いた顔をしていたのだろう。だけども、今はもう大人。そんなことで動揺なんてしない。
笑顔を張り付けて、おめでとうと伝える。そして、結婚式には呼んでねとも伝えた。彼女は嬉しそうにありがとうと言ってくれた。結婚相手は学生時代からの彼氏らしい。
「……あの、彼氏とまだ続いていたのね…意外だわ……」
「ええ。あの頃は取っ替え引っ替えしてたけど、龍馬に出会ってから一途になったのよ?」
そういってない胸を張る沙織。それを見ながら笑みを零し、
「そう……なら、おめでとう。学生時代から……ということは変な男じゃなさそうだし、良かったじゃない」
「ふふーん、そうでしょう?で、杏奈は?好きな人とかいないの?彼氏とかいる?」
「いないわよ。……でも、最近気になっている人ならいるわ」
嘘は……ついていない。好きな人……とゆうか、憧れている人がいる。彼は同じ職場で何を考えているのか分からない不思議系男子だが、仕事が出来るし、何処となく沙織に似ていた人だ。
「………そう」
それ以上の言葉を沙織は言わなかった。ただ、少し寂しげな表情をしただけだ。……私はただそれを見つめる。
「(……このまま、時間が止まればいいのになぁ……)」
そんな叶わない願いを思いながら、私たちは隣でただ手を握っていた。
△▼△▼
時間というものは有限である。特に社会人になってしまえば尚更だ。だから私たちが過ごせる時間もごく僅かになっていく。
「………またね。結婚式、呼ぶね」
「………ええ。またね」
結婚式、というワードに心が痛みながらも、なんとか平然と返した。
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次回、最終回です。よろしくお願いします!
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