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十二話
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「久しぶりね」
「………久しぶりね」
――久しぶりに見た沙織は、相変わらずの美人だった。この六年間、あんまり考えないようにしていた。だって考えたら辛いから。でもやっぱり考えてしまうのだ。
どうしようもないほどに、私は沙織に恋してしまったんだ。
「………あのね、私この六年間、ずっと考えていたの」
不意に沙織が言った。何を、と聞く前に沙織が続けた。
「私ね、杏奈が隣にいないとダメみたい。あなたがいないと何もかもがつまらない。今まで当たり前だと思っていたことが、全然違うものに見えてくるのよ」
「………え?」
思わぬ言葉に戸惑う。
私がいなくても、普通に生活していけるんじゃないのか? 私の疑問を察したように沙織は首を振った。
そして少しだけ寂しげな顔で、言葉を紡ぐ。
その声音はまるで、迷子の子供のようだった。
「私……あんたのこと、好きだわ。話しやすいし一緒にいて楽しかったし。今の職場も嫌いじゃないけど、杏奈と一緒にいた方が楽しいの」
そう言って微笑む沙織。……あぁ、もう本当にズルいなぁ。そんなこと言われたらさ……。
私は思わず俯く。
何て言えばいいか分からなかったから。
嬉しくて泣きそうになるなんて初めて知った。
胸の奥が熱くて痛い。
私は小さく息を吸って吐いてを繰り返して、
「…私も沙織とクラスがバラバラになってから、ずっと考えてたよ。離れていたときに友達は出来たし、それなりに充実しているなって思ってたんだけど……やっぱり沙織が一番話しやすかったよ」
この六年間で友達は出来たし、そこそこ楽しかった。けれど一番の親友は沙織なんだ。
私の言葉を聞いた沙織は一瞬驚いた顔をして、
「私たち同じこと思ってたんだ……」
そう呟いて同時に笑みを浮かべた。何だか可笑しかった。私たちは二人でクスリと笑う。
しばらく笑いあった後、沙織は……
「私たちさぁ……また友達に戻らない?……ダメかな?」
遠慮がちに聞いてきた沙織。不安げな瞳が揺れている。その言葉に対し、
「…私、沙織と友達辞めたつもりはないよ……?そりゃ、疎遠してたし連絡もしなかったけど………」
少しだけショックだ。私は沙織のこと友達だと思っていたのに、沙織の中では違ったんだろうか。
私の答えを聞いて沙織はびっくりしたような顔をした後、すぐに……
「…私と杏奈はまだ友達でいたの?」
「………そのつもりだったわよ」
拗ねたふりをすると、沙織は慌てた様子で何度も謝ってきた。……ちょっと意地悪をしたかっただけだなのに、そんな必死にならなくていいのに。何だか、それが可笑しくて吹き出してしまう。それを見た沙織もつられて笑った。……何年ぶりだろう。こんな風に笑ったのは。
「あはは……可笑しい……!ふふっ……うん。友達……になろう!」
そう言って差し出された手を私は握り返す。
久しぶりに握った手は暖かくて柔らかくて安心する手だった。……きっとこれから先、沙織とは沢山喧嘩をすると思う。でも最後には仲直りをして笑い合える気がした。
だって私たちは親友だから――。
「………久しぶりね」
――久しぶりに見た沙織は、相変わらずの美人だった。この六年間、あんまり考えないようにしていた。だって考えたら辛いから。でもやっぱり考えてしまうのだ。
どうしようもないほどに、私は沙織に恋してしまったんだ。
「………あのね、私この六年間、ずっと考えていたの」
不意に沙織が言った。何を、と聞く前に沙織が続けた。
「私ね、杏奈が隣にいないとダメみたい。あなたがいないと何もかもがつまらない。今まで当たり前だと思っていたことが、全然違うものに見えてくるのよ」
「………え?」
思わぬ言葉に戸惑う。
私がいなくても、普通に生活していけるんじゃないのか? 私の疑問を察したように沙織は首を振った。
そして少しだけ寂しげな顔で、言葉を紡ぐ。
その声音はまるで、迷子の子供のようだった。
「私……あんたのこと、好きだわ。話しやすいし一緒にいて楽しかったし。今の職場も嫌いじゃないけど、杏奈と一緒にいた方が楽しいの」
そう言って微笑む沙織。……あぁ、もう本当にズルいなぁ。そんなこと言われたらさ……。
私は思わず俯く。
何て言えばいいか分からなかったから。
嬉しくて泣きそうになるなんて初めて知った。
胸の奥が熱くて痛い。
私は小さく息を吸って吐いてを繰り返して、
「…私も沙織とクラスがバラバラになってから、ずっと考えてたよ。離れていたときに友達は出来たし、それなりに充実しているなって思ってたんだけど……やっぱり沙織が一番話しやすかったよ」
この六年間で友達は出来たし、そこそこ楽しかった。けれど一番の親友は沙織なんだ。
私の言葉を聞いた沙織は一瞬驚いた顔をして、
「私たち同じこと思ってたんだ……」
そう呟いて同時に笑みを浮かべた。何だか可笑しかった。私たちは二人でクスリと笑う。
しばらく笑いあった後、沙織は……
「私たちさぁ……また友達に戻らない?……ダメかな?」
遠慮がちに聞いてきた沙織。不安げな瞳が揺れている。その言葉に対し、
「…私、沙織と友達辞めたつもりはないよ……?そりゃ、疎遠してたし連絡もしなかったけど………」
少しだけショックだ。私は沙織のこと友達だと思っていたのに、沙織の中では違ったんだろうか。
私の答えを聞いて沙織はびっくりしたような顔をした後、すぐに……
「…私と杏奈はまだ友達でいたの?」
「………そのつもりだったわよ」
拗ねたふりをすると、沙織は慌てた様子で何度も謝ってきた。……ちょっと意地悪をしたかっただけだなのに、そんな必死にならなくていいのに。何だか、それが可笑しくて吹き出してしまう。それを見た沙織もつられて笑った。……何年ぶりだろう。こんな風に笑ったのは。
「あはは……可笑しい……!ふふっ……うん。友達……になろう!」
そう言って差し出された手を私は握り返す。
久しぶりに握った手は暖かくて柔らかくて安心する手だった。……きっとこれから先、沙織とは沢山喧嘩をすると思う。でも最後には仲直りをして笑い合える気がした。
だって私たちは親友だから――。
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