【完結】君の隣で息を吸う

かんな

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五話

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あれから数日が経った。沙織は元気に登校している。風邪は完全に治ったみたいだし、良かった。


「おーい。高宮。清水知らないか?」


そんなことを思っていると、先生に声をかけられた。沙織を探しているみたいだ。……確かに、今日は用事があって先に帰ってたっけ。
私は少し考え込んでから答える。


「いえ。知りません」


「そうか……ったく。進路希望調査の紙、清水だけ出してないんだよな……」


はぁっと大きなため息をつきながら先生は〝清水を見つけたら伝えといてくれー〟と言って教室から出て行った。…もう沙織ったら。提出期限明日までなのに。


連絡しようか……と思いながら鞄を持ちながらスマホをいじりながら廊下に出ると、ガタッ!と何かが落ちるような音がした。うちのクラスの隣は……空き教室だ。
私は恐る恐る空き教室の中を覗くと、そこには――。


「んん……」



キス、をしている男女の姿が目に入った。その瞬間に、全身の熱が一気に上昇した感覚がした。その原因はキスしていた、というわけじゃない。キスしている女の顔が見知っていたから。だってそれは……


「(さ、沙織……)」


この前見た男とキスをしている。……そんなの見たくなかった。……私は急いでその場から離れた。


△▼△▼


――どうして、という言葉が埋めつくしていく。沙織はいつも私を優先しているのに。追うもの拒まず去るもの追わずというスタンスのくせに。彼氏の前じゃあんな顔をするの?……なんでこんなにも胸が痛いんだろう。ズキズキして、苦しくて……。


「ああ……そっかぁ……」


今更、気づいてしまって。そして自覚してしまった。


「私――沙織のことが好きだったんだ……」


彼氏より私を優先して優越感に浸っていたのも、好きな人だったから。だから、沙織のあの顔を見た時、すごく嫌だった。


「………こんな気持ち知りたくなかった」


こんな嫌な気持ちが恋なんて、認めたくなかった。これが恋だというのなら、自覚しなければよかった。……沙織とは一生……友達のままでいたかったのに……。


「(最悪……)」


そう思いながら私はトイレに篭った。
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