【完結】君に伝えたいこと

かんな

文字の大きさ
上 下
63 / 65
番外編

『中村洋介のこと 〜中編〜』

しおりを挟む
ケーキにたくさんのプレゼントが、テーブルの上に並べられていた。


「これが俺らのプレゼントだ」


そう言って祐介は何故か得意げに胸を張っている。その様子に思わず笑みをこぼしながら、俺はお礼を言うと早速プレゼントを手に取った。


まず手に取ったのは綺麗なラッピングが施された箱だった。誰だろうかと思いながらリボンを解くと、中から出てきたのは黒い手袋だ。これは……


「これは俺と瞳のプレゼントだ。これから寒くなるし丁度いいと思ってさ」


「……祐介がこんな洒落た物を選ぶわけねーから松岡が選んだのか?」


「……そうね。祐介、センスが悪すぎて選ぶの大変だったわよ」


案の定、この手袋は松岡が選んだようだ。センスが良いし、サイズもピッタリだし。


「うん、松岡……ありがとう」


そう言って微笑みかけると、松岡は照れくさそうな表情を浮かべて顔を背けながら、


「べっ別にアンタの為じゃないんだからね!祐介がめちゃくちゃ悩んで選んでいたから仕方なく……」


と言い訳を始めた。相変わらず素直じゃない奴だなぁと思う。ツンデレのテンプレみたいなこと言ってるし。そんな彼女の言葉を聞いて、俺は苦笑いするしかなかった。


周りも微笑ましい光景に微笑んでいるし。そして次のプレゼントに手を伸ばす。次は小さめで可愛らしい袋に入ったものだった。これまた誰か分からず、とりあえず開けてみると……。


「腕時計?いいのか?これ高いやつじゃ……」


中には腕時計が入っていた。腕時計なんてよく分からないが腕時計って大体高いよな?


「それ私からのプレゼントだよ~。私の誕プレはこれ以上のもの要求するから覚悟しておきなさいよね!」


羽沢かよ……この腕時計……なら、この腕時計安い可能性が……


「もう。優香ったらその腕時計100均でしょ?」


「もう!!言っちゃダメだって!!」


100均の腕時計かよ……でもまあ羽沢らしいと言えばらしいかな。プレゼントを貰うだけありがたいことだし。だから俺は――


「うん。ありがとうなー。羽沢」


お礼を言いながらまたプレゼントを開ける。今度は小さい袋。何が入っているのだろうかと思っていると……。
取り出してみると思ったより小さくて軽い。一体何だろうと思いつつ、中身を確認するとそれは、


「トランプか。これは……」


「俺らからのプレゼントだぜ!これで皆で遊べるだろ?」


バンッ!と扉を開けながら入ってきたのは――。


「あ、あれ?悟につとむに友照…お前らもいたのか?」


びっくりした。まさかここにあいつらが入ってくるとは思わなかったからだ。俺の言葉に三人は笑いながら、


「いや~、実は驚かせようと思って隠れていたんだよ」


「そうそう!それで開けるタイミングを無くしてさー……だから今開けたって感じ」


えへへ、と三人が笑う。どうやらサプライズを仕掛けていたらしい。思わず笑ってしまう。


「お前らもプレゼントありがとう。凄く嬉しいよ」  


「しかも、このトランプ、俺らの手作りなんだぜ?頑張ったんだよー」


「マジか。それは凄いな……」


三人の手作りか。確かによく見たら手作り感満載だな。まあ、こういうのは気持ちが大事だし。


「……うん。ありがとうな。つとむに悟に友照」


改めてお礼を言うと、三人は嬉しそうに微笑んだのと同時に、次のプレゼントを開ける。今度のプレゼントも小さい袋に入っていた。

一体何が入っているのだろうか。
そして袋を破いて中身を取り出すと……そこには……


「スノードーム……?」


中にはガラスでできたドーム型の容器の中に綺麗な雪の結晶が浮かんでいる。とても美しくて綺麗だった。


『それ私が作ったんです!』


「……え?みのりが作ったのか?これ」


スノードームって手作りでできるものなのか?凄いな……!俺はみのりの頭を優しく撫でながら、 お礼の言葉を言う。するとみのりは嬉しそうに微笑んでいた。


「お前らー。いちゃつくなー」


「独り身にはきついわぁ」


そんな声を聴いて周りを見ると、ニヤけ顔の三人。俺は恥ずかしくなり、皆から顔を背けた――。


「うるさいな!いちゃついてねぇよ!」


俺が声を上げると皆笑い出す。くそぉ……完全に遊ばれた。その後も三人が作ったトランプで遊んだり、ゲームで楽しんだ――。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

一か月ちょっとの願い

full moon
ライト文芸
【第8位獲得】心温まる、涙の物語。 大切な人が居なくなる前に、ちゃんと愛してください。 〈あらすじ〉 今まで、かかあ天下そのものだった妻との関係がある時を境に変わった。家具や食器の場所を夫に教えて、いかにも、もう家を出ますと言わんばかり。夫を捨てて新しい良い人のもとへと行ってしまうのか。 人の温かさを感じるミステリー小説です。 これはバッドエンドか、ハッピーエンドか。皆さんはどう思いますか。 <一言> 世にも奇妙な物語の脚本を書きたい。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

よくできた"妻"でして

真鳥カノ
ライト文芸
ある日突然、妻が亡くなった。 単身赴任先で妻の訃報を聞いた主人公は、帰り着いた我が家で、妻の重大な秘密と遭遇する。 久しぶりに我が家に戻った主人公を待ち受けていたものとは……!? ※こちらの作品はエブリスタにも掲載しております。

もう一度『初めまして』から始めよう

シェリンカ
ライト文芸
『黄昏刻の夢うてな』ep.0 WAKANA 母の再婚を機に、長年会っていなかった父と暮らすと決めた和奏(わかな) しかし芸術家で田舎暮らしの父は、かなり変わった人物で…… 新しい生活に不安を覚えていたところ、とある『不思議な場所』の話を聞く 興味本位に向かった場所で、『椿(つばき)』という同い年の少女と出会い、ようやくその土地での暮らしに慣れ始めるが、実は彼女は…… ごく平凡を自負する少女――和奏が、自分自身と家族を見つめ直す、少し不思議な成長物語

僕の目の前の魔法少女がつかまえられません!

兵藤晴佳
ライト文芸
「ああ、君、魔法使いだったんだっけ?」というのが結構当たり前になっている日本で、その割合が他所より多い所に引っ越してきた佐々四十三(さっさ しとみ)17歳。  ところ変われば品も水も変わるもので、魔法使いたちとの付き合い方もちょっと違う。  不思議な力を持っているけど、デリケートにできていて、しかも妙にプライドが高い人々は、独自の文化と学校生活を持っていた。  魔法高校と普通高校の間には、見えない溝がある。それを埋めようと努力する人々もいるというのに、表に出てこない人々の心ない行動は、危機のレベルをどんどん上げていく……。 (『小説家になろう』様『魔法少女が学園探偵の相棒になります!』、『カクヨム』様の同名小説との重複掲載です)

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

ファミコンが来た日

白鷺雨月
ライト文芸
ファミコンが来たから、吉田和人《よしだかずと》は友永有希子に出会えた。それは三十年以上前の思い出であった。偶然再会した二人は離れていた時間を埋めるような生活を送る。

処理中です...