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番外編
『松岡瞳の返事 〜中編〜』
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「ごめんなさい」
放課後になり、私は宮沢くんを屋上へと呼び出した。そしてすぐに頭を下げて謝罪の言葉を口にした。宮沢くんの顔を見たくないので、ずっと下を向いていたのだが、彼は何も言わなかった。
「そう……まぁ、仕方ないよね。わかってたよ。その返事は最初からね」
しばらくすると、彼の方から口を開いたが、それは意外な言葉だった。私としてはもっと強く言われると思っていたのだけれど……。
「そうですか?でも、どうして?」
思わず顔を上げて訊いてしまった。そんな私の反応に少し驚いたのか、一瞬目を大きく見開いたように見えたけど、またいつものように笑みを浮かべていた。
「だって、洋介のことがまだ好きなの丸わかりだしね。気づいてないと思った?俺だけじゃないと思うなあ。クラスのみんな……洋介と笹川以外は全員気づいてるよ」
……は!?そ、そうなの!?全然知らなかったんだけど!恥ずかしすぎない?これじゃ私がバカみたいじゃん!! 思わぬ事実を知ってしまったことにショックを受けていると、宮沢くんはさらに話を続けた。
「だからそんな返事を聞いても俺は諦めないよ。絶対に振り向かせてみせるから覚悟しておけよ」
そう言うと彼はニッコリ笑って去って行った。
「………いや、諦めろよ!」
私の叫びは彼には届かなかった。
△▼△▼
あれから宮沢くんは宣言通り、毎日私に話しかけてくるようになった。朝は挨拶をされ、昼休みも一緒にご飯を食べようと誘われる。
そして放課後になると、彼は必ず一緒に帰ろうと誘ってくるのだ。
最初は断っていたのだが、毎日のように誘われると断るのも疲れたし、彼の気持ちも知っていながら断り続けるのも悪い気がしてきた。そんなこともあり、今日は宮沢くんのお願いを叶えてやることにしたのだが……。
「それで、今日もウザいのよ!宮沢くんったら、いつも誘ってきて!挨拶はともかく、帰りを誘う必要はないと思うんだけど!しかも、毎日だよ?信じられないと思わない!?」
「うんうん、そうだねー」
優香は興味なさそうに、お菓子を食べつつ気のない返事をしていた。だけど、私はそれでも続く。こういうのは言いたかったことが言えるまで、とにかく吐き出さないといけないのだ。私は誰かに話を聞いて欲しいだけ。優香が聞いていようが聞いていまいが、関係ないのだ。
「本当に毎日なんだもん!なんで毎日話しかけてくるんだろう?しかも帰りをねだられるなんて、もう意味不明でしょ!?」
「もうー。瞳ったら、さっきから悠介くんの愚痴ばっかりだよー。もうその話はやめてよー」
優香は私の文句に嫌気がさしたのか、少し不満げだった……かと思ったら、お菓子を食べていた手を止めてこう言った。
「悠介くんの話をしているときの瞳って、とっても楽しそうよ?好きなんでしょ?」
「な、何言ってるの。優香ったら、急に変なこと言わないでよ!」
私の言葉を聞いてもなお、優香はニコニコ笑っている。そんな様子を見て、私は動揺して視線を泳がせた。なんだか、見透かされているようで……いや、もしかしたら私が自分で気づいていないだけで既に彼のことが好きなのかもしれない。そんなことを言われてドキッとしてしまったのだ。
いやいやいやいや!そんな訳がない!私が宮沢くんを好きになるなんて、天変地異が起きたってありえない!と、思っていた。だって宮沢くんはチャラ男だよ?イケメンだから、周りの女子たちから人気だし……私のことなんて……眼中にないはずだし……
「瞳~聞いてるのー?」
ボーッとそんなことを考えていたら優香が頬を膨らませていた。怒っている顔も可愛いとか、流石我が親友だ。私はそんな優香に微笑みかけた。すると彼女は頬をプクッとさせたまま、私にこう言った。
「認めちゃいなよー。好きなんでしょ?悠介くんのこと。瞳、最近よく悠介くんのことばっかり話してるし」
……認めない!認めたくないし、絶対違うし! 私は必死に否定するものの、親友はそう簡単に信じてくれない。
いや、私が否定すればするほど、怪しく思えるのかどんどんと追求してくるようになった。……ああもう!どうすればいいのよ~!!結局、この後も認めることはしなかった。
放課後になり、私は宮沢くんを屋上へと呼び出した。そしてすぐに頭を下げて謝罪の言葉を口にした。宮沢くんの顔を見たくないので、ずっと下を向いていたのだが、彼は何も言わなかった。
「そう……まぁ、仕方ないよね。わかってたよ。その返事は最初からね」
しばらくすると、彼の方から口を開いたが、それは意外な言葉だった。私としてはもっと強く言われると思っていたのだけれど……。
「そうですか?でも、どうして?」
思わず顔を上げて訊いてしまった。そんな私の反応に少し驚いたのか、一瞬目を大きく見開いたように見えたけど、またいつものように笑みを浮かべていた。
「だって、洋介のことがまだ好きなの丸わかりだしね。気づいてないと思った?俺だけじゃないと思うなあ。クラスのみんな……洋介と笹川以外は全員気づいてるよ」
……は!?そ、そうなの!?全然知らなかったんだけど!恥ずかしすぎない?これじゃ私がバカみたいじゃん!! 思わぬ事実を知ってしまったことにショックを受けていると、宮沢くんはさらに話を続けた。
「だからそんな返事を聞いても俺は諦めないよ。絶対に振り向かせてみせるから覚悟しておけよ」
そう言うと彼はニッコリ笑って去って行った。
「………いや、諦めろよ!」
私の叫びは彼には届かなかった。
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あれから宮沢くんは宣言通り、毎日私に話しかけてくるようになった。朝は挨拶をされ、昼休みも一緒にご飯を食べようと誘われる。
そして放課後になると、彼は必ず一緒に帰ろうと誘ってくるのだ。
最初は断っていたのだが、毎日のように誘われると断るのも疲れたし、彼の気持ちも知っていながら断り続けるのも悪い気がしてきた。そんなこともあり、今日は宮沢くんのお願いを叶えてやることにしたのだが……。
「それで、今日もウザいのよ!宮沢くんったら、いつも誘ってきて!挨拶はともかく、帰りを誘う必要はないと思うんだけど!しかも、毎日だよ?信じられないと思わない!?」
「うんうん、そうだねー」
優香は興味なさそうに、お菓子を食べつつ気のない返事をしていた。だけど、私はそれでも続く。こういうのは言いたかったことが言えるまで、とにかく吐き出さないといけないのだ。私は誰かに話を聞いて欲しいだけ。優香が聞いていようが聞いていまいが、関係ないのだ。
「本当に毎日なんだもん!なんで毎日話しかけてくるんだろう?しかも帰りをねだられるなんて、もう意味不明でしょ!?」
「もうー。瞳ったら、さっきから悠介くんの愚痴ばっかりだよー。もうその話はやめてよー」
優香は私の文句に嫌気がさしたのか、少し不満げだった……かと思ったら、お菓子を食べていた手を止めてこう言った。
「悠介くんの話をしているときの瞳って、とっても楽しそうよ?好きなんでしょ?」
「な、何言ってるの。優香ったら、急に変なこと言わないでよ!」
私の言葉を聞いてもなお、優香はニコニコ笑っている。そんな様子を見て、私は動揺して視線を泳がせた。なんだか、見透かされているようで……いや、もしかしたら私が自分で気づいていないだけで既に彼のことが好きなのかもしれない。そんなことを言われてドキッとしてしまったのだ。
いやいやいやいや!そんな訳がない!私が宮沢くんを好きになるなんて、天変地異が起きたってありえない!と、思っていた。だって宮沢くんはチャラ男だよ?イケメンだから、周りの女子たちから人気だし……私のことなんて……眼中にないはずだし……
「瞳~聞いてるのー?」
ボーッとそんなことを考えていたら優香が頬を膨らませていた。怒っている顔も可愛いとか、流石我が親友だ。私はそんな優香に微笑みかけた。すると彼女は頬をプクッとさせたまま、私にこう言った。
「認めちゃいなよー。好きなんでしょ?悠介くんのこと。瞳、最近よく悠介くんのことばっかり話してるし」
……認めない!認めたくないし、絶対違うし! 私は必死に否定するものの、親友はそう簡単に信じてくれない。
いや、私が否定すればするほど、怪しく思えるのかどんどんと追求してくるようになった。……ああもう!どうすればいいのよ~!!結局、この後も認めることはしなかった。
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