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〜青春編〜
三十二話 『返事』
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あの後、どうやって家に帰ってきたかも分からないほど動揺している。まさかこんな事になるとは思ってもいなかったし……だから――。
「みのりちゃんだけじゃなくて、瞳ちゃんにも告白されたって……うちの弟はどんだけモテモテなの!?」
思わず、姉ちゃんに相談してしまったのだ。普段ならこんなこと絶対にしないのだが、あまりにも衝撃的過ぎて誰かに聞いて欲しかったという気持ちがあったのかもしれない。
「顔は悪くないし背も高い。…運動神経はいいけど勉強は出来ないし、性格は……まぁ、面倒見が良くて優しい……は?うちの弟モテる要素しかないじゃん」
「モテる要素……?何言ってるんだよ……てゆうか、裕介の方がモテてるし」
俺がそう言うと、姉ちゃんは大きなため息をついた。そして頬杖を突きながら呆れたようにこちらを見て、
「二人の女の子に告白されてる時点でそれはモテモテでしょ!私なんて二人の男に告白されたことないんだけど!」
と、言った。いや、そんな事言われても……困るんだけど……
「で?どうすんの?あんたみのりちゃんと付き合ってるんでしょ?まさか……二股とかする気?」
「ふ、二股なんてふしだらな事はしないよ!」
二股なんて最低なことをするわけがない。でも、何て断ればいいのか分からなかったから相談したんだ……。
すると姉ちゃんは少し考える素振りをして、口を開いた。
「まぁ、なら普通に断るしか無いんじゃない?『ごめんなさい』ってさ」
姉ちゃんにしては無難な答えだったが、それが一番良いと思った。
△▼△▼
――なんであんなこと言ったのだろ……
私は今、自分の部屋にあるベッドの上で横になりながら後悔していた。あの時は勢いで言ってしまったけれど。
「笹川さんと付き合ってるのに…」
好意を抱いても意味がないのに。それに彼は私のことを好きになってくれるはずもないのに。
どうしてあの場で告白なんてしてしまったのだろう。しかも、連れ出しまでして。……きっと迷惑だったよね。
――だって彼、すごく驚いていたもの。
私が何を言っているのか理解出来なかったような顔をしていて……。
だから逃げた。こんなことになるのならあの時、弟の誘いなんて断るべきだった。…そしたら、彼に会わなかったはずだから。そしたら――、
「こんな、未練がましいこと言わなかったのに……」
……もう、忘れよう。彼のことは諦めないと。彼が幸せになれる道があるならばそれを応援しよう。……それくらいしか出来ることはないから……なんて思ってたのに。
昨日の出来事を思い出してしまい、また自分のやらかした事に頭を抱えたくなる衝動を抑えていると、部屋の扉の向こう側から声をかけられた。
その声の主は――
「姉ちゃん、大丈夫?具合悪いの?」
――弟である友照の声だった。
いつもより元気のない声で心配してくれていた。……弟に気付かれるほど落ち込んでいたらしい。
本当に情けないと思う。小学生である弟にまで心配されるなんて……姉の威厳が全く無いではないか。
「大丈夫よ。友照。ちょっと考え事をしていただけだから」
「本当?」
訝しげに聞いてくる友照に本当のことだと答えると納得してくれないようで……やっぱり嘘だとバレてしまったみたいだ。
「……まぁ、姉ちゃんがそこまで言うのなら良いのだけれども」
「ありがとうね。友照」
お礼を言うと友照は恥ずかしかったのか、「別に」と言ってリビングに戻っていったようだ。……可愛い奴め。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。友照にも余計な心配をかけてしまっているし。
「………行きたくないけど、学校行くか……」
重い身体を起こしながら呟くと、私は制服へと着替えて、学校に行くと――、
「(い、いる……!)」
中村くんが出待ちをしていたかのように校門の前で立っていた。……いや、私を待っているとは限らない。たまたまここに居るだけかもしれないじゃないか! 自分に言い聞かせるように心の中で叫んでいると、
「おはよう。あのさ……」
中村くんの方から話しかけてきた。……これ絶対に断れるパターンだ……いや、当たり前なんだけど…
「ご、ごめんね。中村くん!わ、私用事があるから!」
そう言って私は走り去った。
「みのりちゃんだけじゃなくて、瞳ちゃんにも告白されたって……うちの弟はどんだけモテモテなの!?」
思わず、姉ちゃんに相談してしまったのだ。普段ならこんなこと絶対にしないのだが、あまりにも衝撃的過ぎて誰かに聞いて欲しかったという気持ちがあったのかもしれない。
「顔は悪くないし背も高い。…運動神経はいいけど勉強は出来ないし、性格は……まぁ、面倒見が良くて優しい……は?うちの弟モテる要素しかないじゃん」
「モテる要素……?何言ってるんだよ……てゆうか、裕介の方がモテてるし」
俺がそう言うと、姉ちゃんは大きなため息をついた。そして頬杖を突きながら呆れたようにこちらを見て、
「二人の女の子に告白されてる時点でそれはモテモテでしょ!私なんて二人の男に告白されたことないんだけど!」
と、言った。いや、そんな事言われても……困るんだけど……
「で?どうすんの?あんたみのりちゃんと付き合ってるんでしょ?まさか……二股とかする気?」
「ふ、二股なんてふしだらな事はしないよ!」
二股なんて最低なことをするわけがない。でも、何て断ればいいのか分からなかったから相談したんだ……。
すると姉ちゃんは少し考える素振りをして、口を開いた。
「まぁ、なら普通に断るしか無いんじゃない?『ごめんなさい』ってさ」
姉ちゃんにしては無難な答えだったが、それが一番良いと思った。
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――なんであんなこと言ったのだろ……
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好意を抱いても意味がないのに。それに彼は私のことを好きになってくれるはずもないのに。
どうしてあの場で告白なんてしてしまったのだろう。しかも、連れ出しまでして。……きっと迷惑だったよね。
――だって彼、すごく驚いていたもの。
私が何を言っているのか理解出来なかったような顔をしていて……。
だから逃げた。こんなことになるのならあの時、弟の誘いなんて断るべきだった。…そしたら、彼に会わなかったはずだから。そしたら――、
「こんな、未練がましいこと言わなかったのに……」
……もう、忘れよう。彼のことは諦めないと。彼が幸せになれる道があるならばそれを応援しよう。……それくらいしか出来ることはないから……なんて思ってたのに。
昨日の出来事を思い出してしまい、また自分のやらかした事に頭を抱えたくなる衝動を抑えていると、部屋の扉の向こう側から声をかけられた。
その声の主は――
「姉ちゃん、大丈夫?具合悪いの?」
――弟である友照の声だった。
いつもより元気のない声で心配してくれていた。……弟に気付かれるほど落ち込んでいたらしい。
本当に情けないと思う。小学生である弟にまで心配されるなんて……姉の威厳が全く無いではないか。
「大丈夫よ。友照。ちょっと考え事をしていただけだから」
「本当?」
訝しげに聞いてくる友照に本当のことだと答えると納得してくれないようで……やっぱり嘘だとバレてしまったみたいだ。
「……まぁ、姉ちゃんがそこまで言うのなら良いのだけれども」
「ありがとうね。友照」
お礼を言うと友照は恥ずかしかったのか、「別に」と言ってリビングに戻っていったようだ。……可愛い奴め。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。友照にも余計な心配をかけてしまっているし。
「………行きたくないけど、学校行くか……」
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「おはよう。あのさ……」
中村くんの方から話しかけてきた。……これ絶対に断れるパターンだ……いや、当たり前なんだけど…
「ご、ごめんね。中村くん!わ、私用事があるから!」
そう言って私は走り去った。
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