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〜青春編〜
二十七話 『覚悟の話』
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それから数ヶ月が経った。笹川さんの思いを気付いたあの日から、俺は彼女に対してどう接すればいいのか分からなくなっていた。
付き合っているのに、キスもしたのに……その先の関係に進むことができないでいたのだ。Aに行ったのなら次はBだけど……俺と笹川さんはこのままの関係でもいいんじゃないかって思い始めていた。
俺たちは中学生だし。受験生だから。まだ早い気がするし……。そんな言い訳を自分にして逃げていたんだと思う。
そして――、
「で?キスしたんだ?笹川さんと?」
今日も今日とで図書委員の仕事中。
いつものように雑談している中、松岡に『どこまで進んだの?』なんて聞かれたから正直に答えたらこのザマだ。
「ふーん……前までどう付き合ったらいいか分からないとか言ってたくせに、随分積極的になったのね」
……何か松岡って……笹川さんのことを話すと不機嫌になるんだよなぁ。何でだろ……?
聞いてみようかと思ったけど、なんか怖くて聞けなかった。
「笹川さんとキスして?それで満足できたわけ?」
松岡の言葉に思わず言葉を失う。だってキスしたあの日からずっと考えていたことだからだ。もっと触れてみたい、抱きしめたいって思うようになったけれど……それをしたらもう後戻りできないような気がしていた。
「あんた、抱くつもりだったの?笹川さんのこと……」
「だ、抱く!?いや!?何言ってるんだよ!違うよ!」
慌てて否定すると、松岡は大きなため息をつく。
「え?違うの?抱かないの?」
「だ、第一……俺らは中学生なんだぞ?そういうことはまだ早すぎるっていうかさ……」
そう言うと、また大きなため息をつかれて、
「笹川さんのこと本気で好きじゃないんじゃないの?」
「そ、それは……好きだよ」
確かに最初は勢いだったかもしれないけど、今はちゃんとした『好き』という気持ちがある。恋をしている自覚はあるし。
「好きなら……抱きたいと思わないわけ?」
「……っ!!」
そりゃあ……もちろん思ったことはあるさ。でも、やっぱりダメだと思うんだ。今の関係を壊したくないし、それに……もし、もしもだよ?一線を越えてしまったら、今まで通りに接することができる自信がない。
いつかする日が来るとしても、もう少しだけ時間が欲しい。受験が終わったあとまで待ってほしい。それまで我慢できるかどうかわからないけど……。
黙り込んでいると、松岡は再び大きくため息をついた。
「早く抱いてよね」
「抱いてよね……って仮に抱いたとしても松岡には関係ないじゃん」
「……そ、そうだけど……」
顔を赤くしながら俯いている松岡。何を言いたかったのかよくわからない。首を傾げていると、
「確かに関係ないんだけど……!でも、私は……その……」
赤い顔のままチラリと見てくる。意味がわからないまま見つめ返すと、彼女はさらに頬を赤らめながら言った。
「私は――」
「洋介~~!笹川連れてきたぞ~~!」
そんな裕介の声が聞こえてきてハッとする。図書室の入り口を見るとそこには笹川さんと裕介がいた。
「あ、松岡……先何か言いかけたけど何言おうとしてたの?」
「な、なんでもないわよ!」
そう言って松岡は鞄を持ってその場から逃げるように去っていった。
一体なんだったのだろうか……?まぁいいかと思いつつ席を立つと、
「あ……松岡の奴……しょうがねーやつだなぁ~」
そう言いながら裕介は『ちょっと追ってくるわ~』と言って松岡を追いかけていった。残された俺と笹川さんは、
「……か、帰るか」
「う、うん……」
2人並んで下駄箱に向かうのであった。
△▼△▼
二人きりの下校道。いつものように他愛もない話をしながら歩いていると、突然笹川さんが立ち止まった。
どうしたのかと思って振り返ると、彼女は少し恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
『あの……さっきの話だけど……』
先の話……って何?と思っていると、笹川さんはゆっくりと口を開いた。
「あ、あの……私、初めてだから……優しくしてほしいなって思ってて……だ、大丈夫かな……?」
真っ赤になりながらも一生懸命伝えてくれた笹川さん。何の話をしているのか理解した。
「さ、先の話聞いてたんだ……お、俺はまだする気はないから安心して……?」
まだ早いと思うし……せめて高校に入ってからしたいって思う。
だから俺は彼女に微笑んで告げる。
すると、笹川さんもホッとした様子で笑みを――。
「………そっか」
見せるかと思いきや、何故か不満げに呟いた。そしてそのまま歩き出すものだから慌てて追いかけた。
何でそんなに不満げなのか分からず戸惑っていると、笹川さんはちらりとこちらを見てボソリと言った。
「襲ってくれないんだ…」
悲しそうに言う笹川さんにドキリとした。
え……?今なんて……?襲われたいってこと……?い、いやまさかな……と、聞こえないフリをしていた。
付き合っているのに、キスもしたのに……その先の関係に進むことができないでいたのだ。Aに行ったのなら次はBだけど……俺と笹川さんはこのままの関係でもいいんじゃないかって思い始めていた。
俺たちは中学生だし。受験生だから。まだ早い気がするし……。そんな言い訳を自分にして逃げていたんだと思う。
そして――、
「で?キスしたんだ?笹川さんと?」
今日も今日とで図書委員の仕事中。
いつものように雑談している中、松岡に『どこまで進んだの?』なんて聞かれたから正直に答えたらこのザマだ。
「ふーん……前までどう付き合ったらいいか分からないとか言ってたくせに、随分積極的になったのね」
……何か松岡って……笹川さんのことを話すと不機嫌になるんだよなぁ。何でだろ……?
聞いてみようかと思ったけど、なんか怖くて聞けなかった。
「笹川さんとキスして?それで満足できたわけ?」
松岡の言葉に思わず言葉を失う。だってキスしたあの日からずっと考えていたことだからだ。もっと触れてみたい、抱きしめたいって思うようになったけれど……それをしたらもう後戻りできないような気がしていた。
「あんた、抱くつもりだったの?笹川さんのこと……」
「だ、抱く!?いや!?何言ってるんだよ!違うよ!」
慌てて否定すると、松岡は大きなため息をつく。
「え?違うの?抱かないの?」
「だ、第一……俺らは中学生なんだぞ?そういうことはまだ早すぎるっていうかさ……」
そう言うと、また大きなため息をつかれて、
「笹川さんのこと本気で好きじゃないんじゃないの?」
「そ、それは……好きだよ」
確かに最初は勢いだったかもしれないけど、今はちゃんとした『好き』という気持ちがある。恋をしている自覚はあるし。
「好きなら……抱きたいと思わないわけ?」
「……っ!!」
そりゃあ……もちろん思ったことはあるさ。でも、やっぱりダメだと思うんだ。今の関係を壊したくないし、それに……もし、もしもだよ?一線を越えてしまったら、今まで通りに接することができる自信がない。
いつかする日が来るとしても、もう少しだけ時間が欲しい。受験が終わったあとまで待ってほしい。それまで我慢できるかどうかわからないけど……。
黙り込んでいると、松岡は再び大きくため息をついた。
「早く抱いてよね」
「抱いてよね……って仮に抱いたとしても松岡には関係ないじゃん」
「……そ、そうだけど……」
顔を赤くしながら俯いている松岡。何を言いたかったのかよくわからない。首を傾げていると、
「確かに関係ないんだけど……!でも、私は……その……」
赤い顔のままチラリと見てくる。意味がわからないまま見つめ返すと、彼女はさらに頬を赤らめながら言った。
「私は――」
「洋介~~!笹川連れてきたぞ~~!」
そんな裕介の声が聞こえてきてハッとする。図書室の入り口を見るとそこには笹川さんと裕介がいた。
「あ、松岡……先何か言いかけたけど何言おうとしてたの?」
「な、なんでもないわよ!」
そう言って松岡は鞄を持ってその場から逃げるように去っていった。
一体なんだったのだろうか……?まぁいいかと思いつつ席を立つと、
「あ……松岡の奴……しょうがねーやつだなぁ~」
そう言いながら裕介は『ちょっと追ってくるわ~』と言って松岡を追いかけていった。残された俺と笹川さんは、
「……か、帰るか」
「う、うん……」
2人並んで下駄箱に向かうのであった。
△▼△▼
二人きりの下校道。いつものように他愛もない話をしながら歩いていると、突然笹川さんが立ち止まった。
どうしたのかと思って振り返ると、彼女は少し恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
『あの……さっきの話だけど……』
先の話……って何?と思っていると、笹川さんはゆっくりと口を開いた。
「あ、あの……私、初めてだから……優しくしてほしいなって思ってて……だ、大丈夫かな……?」
真っ赤になりながらも一生懸命伝えてくれた笹川さん。何の話をしているのか理解した。
「さ、先の話聞いてたんだ……お、俺はまだする気はないから安心して……?」
まだ早いと思うし……せめて高校に入ってからしたいって思う。
だから俺は彼女に微笑んで告げる。
すると、笹川さんもホッとした様子で笑みを――。
「………そっか」
見せるかと思いきや、何故か不満げに呟いた。そしてそのまま歩き出すものだから慌てて追いかけた。
何でそんなに不満げなのか分からず戸惑っていると、笹川さんはちらりとこちらを見てボソリと言った。
「襲ってくれないんだ…」
悲しそうに言う笹川さんにドキリとした。
え……?今なんて……?襲われたいってこと……?い、いやまさかな……と、聞こえないフリをしていた。
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